「映画史に残る死闘! ルール無用の「サングラス・デスマッチ」!」ゼイリブ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
映画史に残る死闘! ルール無用の「サングラス・デスマッチ」!
不思議なサングラスにより本当の世界を認識することができるようになった、日雇い労働者ネイダの闘いを描くSF・スリラー。
監督/音楽/脚本を手掛けたのは『ハロウィン』シリーズや『遊星からの物体X』の、ホラー映画界の巨匠ジョン・カーペンター。
30年以上前の作品でありながら、今なお一部の層から熱烈な支持を集めるThe・カルト映画。
強烈な物質中心主義とマスメディアへの批判的メッセージは、今でも全く古びていない。
むしろインターネットでの情報操作や多国籍企業による富の集中が問題視されている現在において、この映画のメッセージはより鋭さを増しているのかも知れない。
偏見を持って物事を見ることを「色眼鏡で見る」というが、本作ではその逆で、サングラスをかけることで真実が見えるというのは面白い。
アメリカでも偏見のことを色眼鏡というのかしらん?
サングラスをかけると映像がモノクロになるという演出はクール!
エイリアンのチープな見た目も相まって、昭和特撮を観ているような気分になってくる。
サングラスをかけて企業の看板や雑誌をみると…
いや、このインパクトは絶大。最高にクール!!
「従え」
「眠ったままでいろ」
「結婚して出産しろ」
「考えるな」
「消費しろ」…
ここまで正直に、世界の真実をぶちまける作品がかつてあったのだろうか?
紙幣に描かれていた文字「THIS IS YOUR GOD」のインパクトはやばい。
『ファイト・クラブ』より10年も前に、このような作品が作られていたとは…。
この作品の時代背景は以下の通り。
70年代のスタグフレーション(不況とインフレ)を改善するため、連邦準備制度理事会議長ポール・ボルカーが強烈な金融引き締め政策を行い、失業率がやばいことになった。
第40代アメリカ合衆国大統領レーガン(任期は1981〜1989年)の経済政策「レーガノミクス」により、次第に失業率は改善していったが、富裕層の減税などをおこなった結果、悲惨な格差社会が生み出されてしまった。
ジョン・カーペンターはインタビューでレーガン大統領について「俳優上がりで人気はあったが頭は空っぽ」と発言しており、彼の社会に対する批判的な思想が爆発した結果、このような作品が生まれたのだろう。
イデオロギーの変革という説教くさいテーマ性の作品だが、全体に流れるB級ホラー感がシリアスなテーマ性を中和してくれており、エンタメ作品として楽しめる一作となっている。
映画の出来は低予算なのが丸わかりのチープな感じ。お世辞にもよく出来た作品とは言い難い。
何というか、時間の配分がおかしくないか?
主人公のネイダがサングラスを手に入れるまで、時間がかかりすぎ!
そのくせ、レジスタンスの壊滅からクライマックスまではすごく駆け足…
エイリアンだとわかるや否や、虐殺を始める主人公。もうちょっと落ち着け!
一応ヒロインのホリーに匿ってもらうのだが、不意を突かれて頭をかち割られる。そりゃそうなるよ。
このシーンがあまりに迫真すぎてめちゃくちゃ笑いました🤣
そしてこの映画最大の見所!
今なおファンの間で語られる伝説の「サングラス・デスマッチ」🕶
大の男2人が、サングラスを掛けるか掛けないかで5分以上くんずほぐれつの大乱闘を繰り広げる。
このシーンのテンポ感が面白すぎる🤣
こんなグダグダファイト観たことない!
シリアスな笑いというのはこのことをいうのか、と一人納得していました。
主人公のネイダを演じているのがロディ・パイパーという当時人気だったレスラーなのでこういうシーンを入れたのだろうが、今見ると最高のギャグシーンとして異彩を放っている。
ネイダと死闘を繰り広げる友人、フランクは人生のルールとして余計なことには首を突っ込まず、レールに沿って生きていくことを信条としている男なので、ネイダの言う真実が見えるサングラスなんて絶対に掛けたくない。
この辺りは非常に丁寧に描写されていたので、無理矢理目を覚まさせようとするネイダと対立するのはわかるのだが、やはり時間の配分がおかしいのは間違いない。
手放しで褒められる作品ではないが、インパクトは絶大だしなんだかんだで結構面白い。
好きか嫌いかで言えば間違いなく好きな作品。
クライマックスでネイダが放った「Fuck you」ポーズは最高にカッコ良かった!
人間ならば、一度は見ておくべき映画。