戦慄の絆

解説

 カナダ、トロント。双子の兄エリオットと弟ビバリーは婦人科医として名声を築いていた。そんな彼らの医院に女優のクレアが訪れる。兄の勧めでクレアのもとを訪ねたビバリーは彼女から誘惑される。クレアの存在は次第に双子のバランスを崩していくことに。薬物にのめり込むようになったビバリーは奇行に走り、ついにはエリオットも……。実話をもとに書かれた小説を映画化。ジェレミー・アイアンズが双子の二役を見事に演じわけている。

1988年製作/115分/カナダ・アメリカ合作
原題または英題:Dead Ringers

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映画レビュー

3.5【”一卵性双生児の、アイデンティティの崩壊”デヴィッド・クローネンバーグ監督Meetジェレミー・アイアンズのサイコスリラーの逸品。】

2023年8月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

ー 英国紳士を演じる俳優としては、コリン・ファース、ビル・ナイを抑えつつ個人的にはジェレミー・アイアンズである。
 個人的には「奇蹟がくれた数式」「人生はシネマティック」など多数あるが、若き日のジェレミー・アイアンズが出演した映画は初鑑賞であった。
 だが、今作は英国紳士を演じる前のジェレミー・アイアンズが描かれている。-

◆感想<Caution!内容に触れています。)

ー 最近、D・クローネンバーグ監督の作品を観ているのであるが、それまで私が抱いていた変態性溢れる作風だけではなく、可なり深い人間性の闇や哀しみを描いた作品に魅入られている。-

・主人公の双子の一卵性双生児の医師の、外交的なエリオットと、内向的なビヴァリーを一人二役で演じたジェレミー・アイアンズの演技が巧みな合成技術と融合し、印象的である。

・二人は女優で、生殖器が通常とは違うクレアという女優である女性患者との出会いが、均衡を保ってきた2人の微妙なバランスを崩していく。

<今作の魅力は、相変わらずの女性の生殖器を診察するメタリック感ある医療器の姿と、兄と弟で性格が違う兄弟の姿を、D・クローネンバーグ監督らしいゴシック的なシーンを含めて描いた作品である。
 ナカナカ面白い映画であると思う。
 そろそろ、D・クローネンバーグ監督の作品に対する印象を変えるべきだな、と思った作品でもある。>

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NOBU

4.0分離

2023年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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kossy

3.0変態映画

2021年2月28日
iPhoneアプリから投稿

エロが昂じて内臓側にめくれ返るクロネバ随一の変態映画。
孕む恐怖を見えぬ子宮内に展開したザ・フライ。
本作ではこの世こそ子宮だと見立てたか。
エリートの失恋破滅映画と見ても手堅い演出。
驚異の二役Jアイアンズは凡打ダイハード3から低迷。復調を。

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きねまっきい

5.01なるものへの回帰

2021年2月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

かつてプラトンは「人は元来、両性具有の球体であり、それが引き裂かれて男女となった。だから人は誰しも魂の半身を探している」と問いた。

魂の実際はわからないが「元来、1つであったものが引き裂かれたならば、本来の姿への回帰を求めるであろう」という理屈はわかる気がする。
そんな話を、独特の感性で美しくもドロドログチャグチャに描いてくれるのがクローネンバーグだ。

今頃、この映画のレビューを書くのには理由がある。25年前に観たいと思いつつも劇場に足を運ぶのが憚られて断念した作品がある。「クラッシュ」だ。

クローネンバーグ監督は大好きである。しかし、実は観ていない作品もある。観たいけど観られない。観た作品も大好きだけどリピートはしたくないものが多い。(だってザワッ!とするんだもの)
だが、その感性と主題はたまらなく好きだ。
おそらくクロ師匠は、無意味に観客の恐怖を煽ったり気持ち悪がらせたりしたいわけではなく、己の描きたい主題を明確に堅持している。その為、作中人物達に対するどこか一線引いて突き放したような冷徹で客観的視線が、観客をあくまで「観客」の椅子に固定し、彼ら(作中人物達)の狂気に取り込まれる事のないように守ってくれるのだ。

「戦慄の絆」配信時は、まだ10代の小娘であった。こんな映画が観たいとは誰にも言えず、1人こっそり池袋の文芸坐2に足を運んだ。
だけどね。「クラッシュ」はハードル高すぎるでしょ?20代の乙女にとっては日活ロマンポルノの劇場に入るようなものですよ?泣く泣く鑑賞を断念しましたよ。
しかし、今、4k無修正版が来ている。これはどうしても劇場で観たい!という覚悟を決める為、戦慄の絆をおさらいする事にしたわけなのである。

一卵性双生児のエリオットとビヴァリー(ジェレミー・アイアンズ一人二役)は、正反対の性格であり、すべてを共有しながら相互に補完し合って生きてきた。
ところが1人の女性の出現により、兄弟の均衡はバランスを崩す。それによって2人は互いに精神的な一心同体であった事を深く自覚する。弟が陥った狂気を兄は受容し、共に1つに帰す悲劇的な結末を選択する。
しかし、他者のまなざしには悲劇と映ろうとも、彼らにとっては外部から引き裂かれる悪夢をおしまいにして「あるべき姿」に還るハッピーエンドなのだ。

そんなサイコスリラーも、クロ師匠の手にかかると、官能的で美しい芸術作品へと昇華する。何故か?
それは、クロ師匠が描きたいものの正体が、限りなくフロイトの感性に近いからだと思う。

エロス(生)とタナトス(死)の表裏一体性を、クロ師匠は「有機物と無機物の融合」で表現したいのではあるまいか?クロ師匠の感性においては「死」とは有機物(肉体)の崩壊による無機物への回帰なのだと思う。
ハワード・ショアの美しい音楽と深い赤の色彩をバックに描き出される奇妙にグロテスクな手術器具の数々。
バイオとメタリックの融合といえばギーガーもそうだが、メカやメタル感主体のギーガーに対し、クロ師匠はバイオ感満載だ。臓器への偏愛すら感じる。
そんなクロ師匠において、バイオへの深化よりも精神世界への深化を重視したターニングポイントとして、本作には貴重な価値があると思う。

その流れを受けて、クラッシュは誕生したのであろう。表層的な絵面に惑わされぬよう、フロイト論の小舟(いかだ?)をしっかり強化して劇場に足を運びたい。(上映館、50km先に1件きりだけど、、、。配信終了までに本当に行けるだろうか(笑))

(覚書:初回鑑賞記録、年は1989、場所は文芸坐2だが、選択不可の為、1番近い選択肢にしておく)

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pipi