ゆれるのレビュー・感想・評価
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曖昧な記憶
山梨の田舎で保守的な父と共に家業のGSで働く真面目が取り柄の長男と、上京して好きな仕事をして気ままに暮らす次男。トラブルメーカーの弟の尻拭いは長男の役目。
その2人の関係が、吊り橋での事件を境に一変する。
幼なじみの智恵子はどうして吊り橋から落ちたのか。
心の中では兄を尊敬している弟は、兄に有利になるような証言をするが、智恵子の死体解剖の結果、殺人事件扱いとなって裁判にかけられる。
幸い父の弟が弁護士をしており弁護を依頼する。このおじもその年齢になっても兄弟関係に問題を抱えていた。何度も兄の面会に行く弟。昔のような温厚な兄は消え、本性とも取れるような性格に変わっていく。弟も目撃者として証言台に立つ日が来るが、その直前、面会室で椅子を投げ合うような兄弟げんかをする。
人間の記憶の曖昧さ、後継は長男という古い家制度の問題、正反対な性格の兄弟の愛憎。
オダギリジョーもだが、若き香川照之の快演も相俟って、面白かった。
ラストは、甲府駅行きのバスに乗ったのか?
橋がゆれる。ゆれる事実。 兄妹の関係がゆれる。 兄ちゃん、うちに帰...
橋がゆれる。ゆれる事実。
兄妹の関係がゆれる。
兄ちゃん、うちに帰ろう、と叫ぶ猛。
それを見つけて微笑む稔は、どんな感情だったのだろうか。
あの微笑みは、橋を踏み外した猛をつなぎとめたようにも思える。壊れかけていても、まだつながったままの橋が二人をむすぶ。
橋は二人の関係を象徴している。橋は対等である必要は無い。どちらに傾いていても、橋は谷をつなぐ。
稔の人生を奪い、七年を奪い、智恵子を奪った猛も、繋がっている。
私が一つ疑問なのは、事件の時、橋での会話が猛に聞こえていたのかどうかという点だ。「あなたやお母さんみたいに生きたくないのよ」と叫んだ智恵子は猛の妄想だったのだろうか。だとしたら恐ろしい。しかも、事件直後、猛は爪痕のついた稔の腕をシャツで覆っている。智恵子の腕を掴んだという事実を稔が認識しにくくするため? 意図的だったのだろうか、ただの考えすぎなのか。
音の工夫が面白かった。事件の時も沈黙で、こちらに想像させる作りだった。自然音もBGMも良い。家に帰ろうという言葉には感動した。
ゆれる。その中で
幼なじみ再び再会した事によって関係が生まれる猛と家の稼業を継いだ兄の稔。
その3人で吊り橋に行くと、幼なじみが橋から落ちてしまった。
それによって兄の裁判が始まった。
物語の冒頭は、コミカルなシーンも多いのに後半にかけて、シリアスのシーンに変わっていく展開が素晴らしきと思いました。
自分が知っている兄とは、別の人が姿を表し始める所に誰なんだ?これは?
弟が自分が知ってる兄ではない。
兄と弟の中で心理的な描写の心の微妙な移り変わりがここまで映し出さているも見応えがあります。
家族であろうと、どこまで信用する事が出来るのか、何が真実であるのか?
何を真実にしようとしているのか?
自分が見たものは、どっちなのか?
最後のシーンの笑ったシーンは、何を意味していたのか?
色々と考えさせられる作品でもう一度観たいと思いました!
複雑な人間心理
主人公が葬式で実家に帰る。そこには兄と幼馴染(昔の恋人?)がいた。
兄はこの幼馴染のことを人知れず愛していたと思われる。
この女の子が弟の所へ行こうと危険な橋を渡ろうとする。
危ないので止めようとする兄。女の子は突然激しく抵抗した。
とまどう兄・・・その結果、橋から落ちて死亡。
兄がわざと助けなかったという疑惑で裁判になる。
弟は最初は兄の味方だったが、突然法廷での証言の場で兄が意図的に女を助けなかったと言い、有罪となってしまう。
でもこの証言は嘘だった。7年間、罪の意識にさいなまれ、兄の出所の日に刑務所に向かい、再び対面して終了。
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カメラマンとして有能で都会で活躍する弟と平凡な兄。
兄は絵に描いたような善人だが常に弟に嫉妬心を持っていた。
それが原因で喧嘩になり、それを期に弟は態度を翻す。
でも、何故?と思ってしまう。そんなことで兄に不利な証言をするだろうか?
私には理解できなかったが、きっとそういう複雑な人間心理を描いた映画なのだろう。
心ゆれる…ゆさぶられる
家の家業を継ぎ
まじめに生きている優しい兄
家を出て
好きなカメラマンの仕事して
自由な生き方をしている弟
そんな対称的なふたり
この兄弟に事件が起こる
事故なのか…
それとも…殺人なのか…
私たちもどっちなのか知りたくなる
ふたりの顔の表情や
心の描写が素晴らしい
兄は本当のことを言っているのか
ウソを言っているのか
…わからなくなってくる
ここの接見の場面は
三度目の殺人を思い起こす
兄は
お前は好きな仕事して
女にもモテてる
それに反して
俺は何もいいことない
同じ兄弟でもこんなにも違う人生
ある意味兄は弟の人生を羨んで
それに気づかない弟に嫌気がさし
…唾をはいた
(ここは兄の本音だったと思う)
建前で生きてきた兄の人生
おとうとの
しがらみのない自由な人生を…
・・・
拘置所で兄に俺を信じているのか
と言われ
…あたりまえだろう…と
いやいやお前はそうゆう奴じゃない
というやり取りで…
…弟は
兄が突き落としたと主張
(ある意味兄の操るままに)
兄の有罪が決まり兄は刑務所に。
そしてラスト
兄が出所しバス停のところまで
歩くシーン
弟が大声で叫んでも兄に声は届かず
バスを待つ
…兄の微笑む顔が印象的
泣いている
おとうとに対して
兄はやっと俺のことわかってくれたか
と微笑んでいる様に見えた
女優をまた見間違えていたアホがここにおります。
う~ん、エンタメ大作だったり、どーしよもないB級映画が好きな私が如きが観て、おこがましくも評価する類の作品じゃなかったかな。
私的には地味~いな作品でした。
かと言って、途中で観ることを止めたくなったかというと、それは違って。
兄弟が抱えるそれぞれの心の揺れ、相乗効果でのさらなる揺れ。それを観ているこちらまで、ゆらゆらと不安な気持ちの揺れを覚えた作品でした。
検事官を演じる木村祐一の憎ったらしいこと憎ったらしいこと。
一方の弁護士役の蟹江恵三は、台詞よりも表情で心情を演じきるベテランの妙味が素敵でした。
そう言えば、最近とんとお見かけしないなぁ、と思って調べてみると、ほぼ10年も前に鬼籍に入っていらっしゃったのですね。
とことん無知私。
この映画で印象的だったのは、猛と岡島がファミレスで話し合うシーンだったんですね。椅子にくくられた赤い風船の糸が、まさに兄弟を隔てたアクリル板に見えたです。
人なんか、薄い板一枚挟んでしまうと、そんなに簡単に心開いて解り合えるはずもない、という意味で。
きっと、そんなの私の通ぶったデタラメなこじつけだと思うけれど。
さぁ、定期の脱線話です。
猛が乗っていた白い車ってシートベルトが付いていなかったじゃないですか。
気になって調べてみたんですね。「違法とちやうんかい!」と思って。そうすると、着用が義務化されたのって1969年だったです。それ以前には、元々付いていない国産・輸入車があったので、その場合は着用義務が免除されていたんだって。
猛の車を調べてみると1964年型のフォードファルコンステーションワゴンっていう車らしいです。
フォードファルコンって言えばアメ車じゃなくて。オーストラリアの車なんですね。
あえてそういうレアな旧車に乗っている猛って、相当なナルシストなんじゃないのかな?って私には思えて。設定的には普通にレクサスとかBMWとかアウディとかでよくね?
なのに、最後はそれを乗り捨てて、軽トラで兄の出所に駆け付けたシーンは印象深かったです。
バス停に立つ稔に「兄ちゃーん!兄ちゃーん!」と叫ぶ姿は、やっと素をさらけ出した猛の魂の叫びだったのかなぁ…と思って。バス乗っちゃえば、またガラス越しで隔てられるところを、間に合ったのか間に合わなかったのかが大変興味深いラストシーンでした。
車とかをを調べることは好きなのに、演者さんについては、まるでチンプンカンプンなんですよね。
真木よう子を、最後まで吉高由里子って勘違いしていたです。エンドクレジットのキャスト見るまで。
アホか自分。
書記官は安藤玉恵
映画を本格的に観始めたか、未だそういう思いに抱かなかったのか、曖昧な時期の作品で、でもエヴァーグリーンな作品として一般的に評されている作品だから題名だけは記憶にあった オダギリジョー、香川照之、その他知らない人はいない程の名優ばかりが軒を連ねる、今から見れば百花繚乱な俳優のオンパレードな作品であり、今現在、この人達をキャスティングするとなったらどれだけのバジェット作品になるだろうと恐れ戦くラインナップである
ストーリーテリングも素晴らしく、吊り橋の如く揺れる不安定さをこれでもかと表現したシナリオにぐうの音も出ない出来映えである
長男として役割を演じ続ける事、次男だからと好き勝手に生きて、しかし才能に恵まれた事、そんな兄弟の愛憎が迸るシーンの連続にこれ以上のない"痺れ"を体験したのである 真木よう子の青さ故のエロティシズムをキチンと包摂するオダギリのレベチの官能美 それとは逆の香川の屈折した粘着性漂う演技 ドロドロとまるで魔女が調理する釜で煮染めた毒を醸成するが如く、法廷劇が延々と続いていく 蟹江敬三、木村祐一の芸達者振りはその毒に添加物をガンガン放り込む 尊敬と嫌悪をこれでもかとジャブジャブ投下する希有な内容に、逃げたくなる想いをグッと堪えての上映時間であった
同じ精子と卵子を一にしてもこれだけ人生に共通項が見付からない方向 それでもお互いが血を意識し続ける限りその繋がりは切断できない ラストのバス停の件は唯々二人に幸有れと願うばかりである
もやもや感の残る映画。
香川照之の幅の広い演技が光る。身勝手な弟役はオダギリジョーが適役。それが狙い通りなのだろうがもやもやした感じが残る映画ではある。やや冗長。100分くらいにまとめることが出来たのではないか?
こちらの頭もゆれる…
ラストの兄の笑顔はどう解釈したら良いのか。反省した弟の泣き顔を見て、安堵したのか。兄は殺人を犯しておらず、腕の傷があるように事故だったと思う。それを弟は兄への疑いと自分の嘘がバレているという焦りから、意図的にではなく、兄が落とすのを見たと言ってしまったと解釈している。香川照之、オダギリジョーが対称的な兄弟を好演しており、目まぐるしい心情の変化が凄まじい。
ゆれる心
起こってしまった事件、猛は目撃していたから真実はわかっていたが、兄を助けるために叔父に弁護を頼む。助けたかったのは事実だろう。だが、面会したり、法廷での兄の態度などから気持ちは変わり、事実を話し、兄は有罪。
まさに心は兄ちゃんを助けたい信じたい。でも腹も立つ、真実を話すことが兄ちゃんの為だと揺れ動く。
7年後、出所する前日に観た過去のフィルムで、兄ちゃんはいつも僕を守ってくれていた事を思い出し、心が揺れる。
人の心理を描いた秀作。
見落としているのか、稔の右腕の大きな傷あとは何を意味していたのか?智恵子の母が返した制服の中の封筒は何?と気になった。
兄弟の良さと複雑さ
香川照之とオダギリジョーの演技が素晴らしかった。
全然違うタイプの兄弟だ。仲の良い兄弟に見えたが、田舎に帰って兄の意中の女性をあっという間にたらしこむ弟。ただ兄への面当てのような誘惑だった。この辺りも複雑な兄弟の心理が浮かんできている。
結局、殺人を犯した兄を救おうとして、反対の行動に出てしまうのだ。偽証という弟のしたことは許されない。
ところが、出所した兄は弟にかすかに笑って見せた。
この時の顔と裁判での弟の証言を聞いている時の顔は、なんとも言えない複雑な心理を表していて、香川照之の俳優としての凄さを感じた。
ただ、全体的に納得感にかけたと思う。なぜ、弟は偽証してしまったのか、父親とはいつからあんなに仲が悪くなったのかなど、この事件がおきてしまうほどの家族の背景がわからなかった。
人間の描き方は秀逸でした
幼なじみの女性が吊り橋から墜落死した事件を巡る、兄弟の軋轢と絆を描く物語。
オダギリジョーと香川照之が共演する「サスペンス」・・・ではなく「人間ドラマ」ですね。
父親の期待を背負い、真面目に生きてきた兄。
父親に反発し、東京でカメラマンとして自由奔放に生きている弟。
母親の葬儀の為に帰郷した弟が、兄が想いを寄せる幼馴染と関係を持ったことから、二人の関係もゆれていきます。
抑圧されてきた兄の不満が迸る様子は、迫力があり画面に引きつけられます。
ただ、もしこのストーリーを作るのであれば、「兄が想いを寄せる幼馴染」をもう少し見せた方が、より説得力を感じたのではないかとも思います。
ラストも少し辻褄があいません。豹変した兄に不利な証言をする弟。しかし、実は女性は自ら落ちたことを目撃していて・・・悔恨の念にかられます。しかし、この設定なら、そもそも最初から「自分で落ちた」「兄は助けようとした」と証言をするはずで、「観ていない」という証言は腑に落ちません。
人間の描き方としてはとても良く出来た映画だったので、少し残念に感じました。
ゆれるゆれる
事前情報なしで鑑賞。
全員がそれぞれの想いの中で揺れてる。吊り橋も揺れてる。
見始めたときは「香川照之にこんな良い人な役似合わないな〜」と思ったけど、やっぱり裏のある役だった(笑)
しっかしすごいな〜。
最後のあの笑顔は香川照之にしかできないな。
恨めしい笑いにも、含みのある笑いにも、純粋な喜びから来る笑いにも見える。あんな表情できないね。
兄弟であるが故の苦悩
家業(ガソリンスタンド経営)や両親、親戚付き合いなど全てを兄に任せ、独り東京で写真家として自由に生きる猛をオダギリジョーさんが、そんな弟を羨みながらも、ただ真面目に実家のガソリンスタンドで働く稔を香川照之さんが熱演。お二人の魅力溢れた演技に、ラスト迄引き込まれました。
幼馴染の智恵子を、真木よう子さんが初々しく演じていた。
大人になり兄弟で抱えるものが違ってくると、色々なわだかまりが生じ、互いに心を許し話す事が難しくなってしまうものかも知れません。
裁判が進むに連れ、互いが胸に秘めていた思いをぶつけ合い、感情を揺さぶられ苦悩する猛の姿が、重く印象的な作品でした。
30代でこのような深い苦しみを描いた作品を世に出された西川美和監督の才能に、改めて驚かされました。
劇場の2Fで西川美和監督が、並ぶファンの方々ににこやかな笑顔でサインをされている可憐なお姿を拝見出来た事、本当に幸運でした✨
映画館にて鑑賞
橋と兄弟
話は橋の上から兄の経営するガソリンスタンドの店員である女性が落ちてしまった。一緒にいた兄が突き落としたのか、それとも事故かというメイン。
兄はその女性が好きだけど、葬式で里帰りした弟とねんごろになった女性はその気はないし、兄の方もはっきりと告白したりしない。高い所が苦手な兄が、橋を先に渡っていった弟を追う女性を止めようと追いかけてその時落ちてしまった。
取り調べを受けて、最初は弟の方から事故という方向で人脈も使って押し出していくが、時間が経つにつれて素直で人の良い兄が事件のことは早く忘れたいという素振りを見せ始める。
女性が亡くなって間もないのに、出所してからの未来を語る兄が変貌したように見える弟は、裁判で一転し「兄が突き落とした」という証言をして、兄は刑務所行きというもの。
ラストは刑期を終えた兄に会いに行く決心をして、バスに乗ろうとする兄へ、幼い頃のように「兄ちゃん」と叫んで呼びかける。
そこで兄がバスに乗って行ってしまったか、待っていたかは観客に任せるという終わり。
見終わった感想としては役者演技が素晴らしい。特に兄役の香川照之の演技。正座して洗濯物をたたむ小さな背中だけでちょっとしたメッセージになる。
弟役のオダギリジョーの山での足運びも自信のある人間という感じでとても良かった。
繊細な演技だった。
映像にも静かで繊細な人々の暮らしが随所に盛り込まれていていい。
けれどガソリンスタンドの男性店員が、弟を責めたり激励するための配役でしかなく、これまで細やかに(これまで歩んできた背景がそれぞれあるような感じで)描写されてきた人間像が後半急に無くなる。
話の内容はもう少し踏み込んでほしかった。兄弟が相対したか、相対したとして何を話したか、二人はどんな気持ちで、これからどうなっていくのか、など観客への、想像していい展開のゆだね幅が大きすぎる。
一つの作品として作り手の答えをもう少し示してほしかった。
兄弟のすれ違い
公開当初見た時、この映画のテーマは弟の自由な生き方に対して兄の生まれながらの兄という生き方にスポットし好きな女性を取られた嫉妬だと思っていました。兄の人格に底知れなさがある、みたいなものかと。でも、何故こんな撮り方をするのか?今になり見直して、嫉妬と思いこんでいたけれど、弟の目線で描かれているので、騙されていました。
要はお兄さんは吊り橋が怖かったのだと思いました。怖かったのに、守ろうとし助けられなかった、突き飛ばしたせいで、自分から逃げようとしたせいで落ちた。けれど男だから、怖かったせいにしたくない。(弟との面会で吊り橋なんてちょちょいだ、みたいなこと言ったシーン)優しい人間だから弟の告発を受け入れた気がしました。まじめに生きてきた男だから、自分で責任を取ったということだと。最後のシーンは気がかりですが、兄として、変わらない弟に笑顔を向けたと思いました、ですが、兄は家には帰らないと思います。
ゆれる
ゆれる。
吊り橋、人の感情、相手への気持ち、兄弟の絆。
全体的に暗く重たい空気が充満していました。
狭い田舎で毎日同じような毎日を過ごすのは退屈だろうな。鬱屈した日々はいつの間にか狭い価値観を強いり、爆発してしまう。
相変わらず、香川照之はいい演技してるなぁ。
もう一度見たいとは思わないけど。
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