劇場公開日 2006年7月8日

ゆれる : 映画評論・批評

2006年7月11日更新

2006年7月8日よりアミューズCQN、新宿武蔵野館ほかにてロードショー

吊り橋で“ゆれ”のダイナミズムを表現

西川美和監督は、デビュー作「蛇イチゴ」に引き続き“兄弟の映画”を撮った。もちろん前作は兄妹という設定で喜劇的要素が活用されたのに対し、今回は香川照之とオダギリジョー演じる兄弟がシリアスに対決することでギリシャ悲劇的な荘厳さを帯びる……という点では、両作の間に違いはある。だけどそれでも“兄弟”という関係性への固執が、西川作品を活気づけることに変わりない。

“兄弟”とは、互いに最も身近な他者としてある関係性だ。近くて遠く似ているようで異なり、互いに影響を与えずにいられないライバル関係。そしてこれも重要だが、兄弟は互いに相手を切断できない宿命にある。最終的に「ゆれる」で弟は兄を裏切る。だけど、それで2人の関係が終わるわけではない。

本作での兄弟の対立は、家族=故郷から飛び出す弟とそれができない兄の間に生じる。あるいは、渓流にかかる吊り橋を渡る弟とそれができない兄……。といっても、弟が完全に自由なわけではない。その吊り橋ですばらしく唐突に起こる“殺人”を機に、弟は家族=故郷から離れようとする欲望の虜であることにおいて、むしろそこから自由になれずにいる自分に気づかされるだろう。そう、今も兄弟の間には吊り橋がかかる。この映画はその不安定で強力な“ゆれ”のダイナミズムを僕らに示して見せた。

(北小路隆志)

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