パプリカ : 映画評論・批評
2006年11月21日更新
2006年11月25日よりテアトル新宿ほかにてロードショー
大胆に「変身美少女ヒロインもの」として換骨奪胎
いやぁとにかく面白いのだ。
主題は「夢と現実」「妄想」、あるいは「映画愛」といった、くりかえし今敏が扱ってきたもの。とりわけ「千年女優」「妄想代理人」の二番煎じと断じられそうなものでもあるが、そんなの軽く吹き飛ばすほどのサービス精神。いっそ集大成と呼べと言わんばかりに、トレードマークの「徹底したリアリズム」を少し後退させてまで、ケレンだらけの圧倒的なスピード感で一気に観せる。いやはや、そのテクニックはたいしたものだ。
筒井康隆の原作にある「夢をモニターする」というアイデアは15年前の発表時こそ斬新であったが、今にしてみると少々使い古された感もある。元来ツツイスト=筒井信者であるという今敏は、有機物無機物ゴタマゼにパレードする祝祭的な悪夢の光景とか、ナンセンスな七五調の言葉遊びなど原作者へのオマージュをちりばめつつ、いっそ大胆に「変身美少女ヒロインもの」として換骨奪胎しきったのがいい。すべての登場人物を陰と陽、対になるように明確に関連づけながら、「女性的なるもの」の勝利へ収束する……という構成も明確。イメージ自体は制御不能な混沌にあふれていても、理知的かつシンプルな印象を与えるのはそのためだろう。
(ミルクマン斉藤)