「【”人は心一つで鬼にも仏にもなるモノなのだな・・。”平安京の人心の闇に潜む魔物に立ち向かう陰陽師の姿を描いた第一弾。狂言師、野村萬斎演じる安倍清明は正に嵌り役である作品でもある。】」陰陽師 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”人は心一つで鬼にも仏にもなるモノなのだな・・。”平安京の人心の闇に潜む魔物に立ち向かう陰陽師の姿を描いた第一弾。狂言師、野村萬斎演じる安倍清明は正に嵌り役である作品でもある。】
ー 狂言師の野村萬斎が、飄々として腹の底が読めない安倍晴明を演じている。正に的確なキャスティングである。-
■原因不明の病を患う幼き親王を救うため、右近衛府中将・源博雅(伊藤英明)は陰陽師・安倍晴明(野村萬斎)に助けを求め、彼の”呪”を取り除く手法によって親王は一命をとりとめる。
しかし、都転覆を企んで親王に呪いをかけた陰陽頭・道尊(真田広之)は、次の手を用意。
晴明と博雅はさらなる脅威に立ち向かう。
◆感想<・・にあまり、なってません。>
・私は京都が好きなために、夢枕獏の”陰陽師”シリーズはずっと愛読している。但し、初期はお金が無かったために文庫で鑑賞を始めた。
先ほど、書架から第一作を引っ張りだしてきたのだが、奥付(初版)を見るとナント1991年2月とある。ビックリである。
■物語は大体同じパターンで、土御門大路にある安倍清明の屋敷を訪れた源博雅が清明と二人で、清明の式神が提供する酒の肴(秋は、鮎が多い。)を突つきながら、酒を”ホロホロ”と呑んでいる。
そして、源博雅が抱える都で起こっている妖の話を清明にし、(逆パターンもあり。)二人は”呪”の話をしながら、”ゆこう””ゆこう・・。”と言って、そういうことになった・・。というパターンで進むのである。
所謂、起承転結が各短編でキッチリと描かれているのである。
・今作もほぼ同様で、且つて帝(岸部一徳)に寵愛されつつも、寵愛を失った祐姫(夏川結衣)が鬼になって、御門を鬼となって呪う。
そしてそれを陰ながら都転覆を図る事を最終目標にして支援する道尊(真田広之)<因みに原作では、芦屋道満である。>の姿が描かれている。
・そこに、且つて悲劇の王子である(史実である)早良親王(萩原聖人)を愛する故に人魚の肉を口にし、不老不死となった青音(小泉今日子)が絡んできて、物語の幅が広がるのである。
■夢枕獏氏の原作が、かくも長きに亘り愛されているのは、そこには人心の闇や哀しみがキチンと描かれている事と、当時の男尊女卑思想により(当時は、帝を始め、多くの貴族は側室を多数抱えていた。)主の寵愛を失った女性達の哀しみが、怒りに変わり果ては鬼になるというテーマを多く語っている事だと、個人的には思っている。
<20数年前の作品でもあり、VFXシーンなどは・・であるが、安倍晴明を演じた狂言師野村萬斎が、正に嵌り役である。
今作後も、野村萬斎氏主演の映画は全て劇場で鑑賞しているが、一芸に通じた方は、他の分野でも十二分に実力を発揮するのだな、と思った作品でもある。>