メメント : 映画評論・批評
2001年11月1日更新
2001年11月3日よりシネクイントほかにてロードショー
記憶の宮殿が10分かそこらで更地になりつづけたら
ミステリー小説/映画の定番のひとつに目覚めたら隣りのベッドに女の死体が……というものがある。記憶がない、あるいはあいまいだ、オレが殺したのか、あるいは誰かがオレを陥れようとしたのか? ここからサスペンスが発生するわけだ。「記憶にございません」はこれまた一時期の国会答弁で言い逃れる最良の台詞だった。記憶ほど謎めいたものはない。
日々、「記憶を捨てる技術!」を鍛え、ボケのユートピアに移住しつつある小生にも、「メメント」の主人公は理想というより、恐怖だろう。なにものも継続しない世界に人は耐えられない。10分かそこらで記憶の宮殿が更地になりつづけたら、ハンニバル・レクター博士もお手上げにちがいない。
「L.A.コンフィデンシャル」のときよりも逞しさが増したガイ・ピアースが、ポラロイド・カメラという手段、タトゥ(入れ墨)という手段で更新されつづける記憶になんとか継続性をあたえ、妻殺しの犯人を追っていくわけだが、小生も、この映画を見て以来、今後、継続性に落ち度があってはいけないと、ポラロイドで女性を記録し名前を書くことにしている。
(滝本誠)