リトル・ダンサー : 映画評論・批評
2001年1月15日更新
2024年10月4日より新宿ピカデリーほかにてロードショー
キュートな「ブリティッシュ・ドリーム」物語
1984年、炭坑ストライキに揺れる英国北部。「バレエを習いたい」と言い出した11歳の息子に「男がバレエなんて」と怒る炭坑夫の父。といっても、この映画は「ボーイズ・ドント・クライ」のような深刻なジェンダー論をテーマにしているわけではない。ちょっぴり風変わりな少年が周囲の援助で「ブリティッシュ・ドリーム」を果たす物語だ。
サッチャーが政権の座についた79年から、英国は音をたててアメリカ的消費社会に変貌していった。そのひずみはこの映画のような炭坑ストにも現れている。地の底で一生働くなんてまっぴらだ、ロイヤル・バレエ団で高く舞い上がりたい! この思いは、米映画「遠い空の向こうに」(原作は「ロケット・ボーイズ」) の主人公が、炭坑の町から宇宙に夢をはせ、NASAのエンジニアになる「アメリカン・ドリーム」とよく似ている。それだけに、少年の夢が飛翔するシーンは晴れ晴れとした解放感に包まれるのだ。
脇を固める俳優陣がすばらしい。ことに、無口で武骨な父親が少年の夢を叶えようとスト破りに出るシーン。アメリカっぽい演出だなとクールに見ていた当方も、あそこには健さんにも似た「男気」を感じました。
(田畑裕美)