「どこか遠くで戦争が起きているみたいです」紙屋悦子の青春 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
どこか遠くで戦争が起きているみたいです
総合:60点 ( ストーリー:60点|キャスト:65点|演出:50点|ビジュアル:65点|音楽:20点 )
平和な部屋の中で音楽もなくひたすら喋るだけの舞台劇のような展開が、良く言えば慎ましさの中に哀しさがあるが、悪く言えば退屈。のんびりと静かに台詞だけで進む物語は、戦時中をどうもあまり感じさせない。厳しい生活や爆撃の恐怖もなく、生活感の薄い綺麗な物語に収まってしまっている。
それと出演者の演技が悪かったわけではないが、いやむしろ個人の演技力はあったと思うが、出演者の役柄の年齢が合っていないのではないか。この時代に嫁に行ったり特攻隊に行くような者ならばまだ20代前半や半ば程度だろうが、出演者は30代ばかりで40近かったりもする。それだからなのか、みんなやけに状況を理解して落ち着いていて、それが当たり前のように見えてしまって、本来あるべき若々しさというか新鮮な戸惑いや恥じらいが見られない。戦争のもたらす心の中の葛藤や恐怖や、頭で抑えようとして理解しようとして、それでも態度に出てしまうようなものが少ない。当時の状況を監督が映画に翻訳する過程において、戦争がこんなにも平和にどこか遠くて哀しいだけに描かれるというのに素直に共感出来なかった。
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