「生き残ってくれてありがとう」男たちの大和 YAMATO 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
生き残ってくれてありがとう
この映画が公開された2005年は終戦60年に当たり、多くの戦争を意識した映画が作られたが、いずれも変化球で単なる娯楽作でしかなかった。「ローレライ」「戦国自衛隊1549」「亡国のイージス」…。
真っ正面から描き、最も心に残ったのは、この「男たちの大和」だけだった。
プロデューサーは角川春樹なので、戦艦大和を題材にしたどんなにクサい内容で戦争美化の映画になるのかと思ったら、そうではなく、なかなか胸に迫る感動作だった事に正直驚いた。
大抵日本で戦争大作映画を作るとなると、ビッグスターが軍の上層部を演じ、当時の背景や戦略などを描く少々取っ付きにくいものが多いが、本作は少年兵の目線で描かれ、分かり易くすんなり作品に入って行けた。
史実に沿った実録戦争映画の場合は前者でイイが、戦争の虚しさや哀しさを描く場合だったら、後者。勿論本作は後者に当たる。
少年兵たちは国の為ではなく、家族や愛する者をただ守る為に戦った。そして散って行った。
少年たちにそんな重荷を背負わせ、明日の日本の芽となる彼らの命を無駄に散らせた戦争は、やはり大きな罪だ。
生きて帰って来た者には容赦ない言葉が浴びせられた。
「何故お前だけ生きて帰って来た?」
「国の為に死んだ者たちに対して恥とは思わないのか?」
しかし、今は違う言葉がはっきりと言える。
生き残ってくれてありがとう、と…。
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