「【”世界の終わりと始まり。そして並行世界の入り口と出口。”今作は80年代ロックの名曲に彩られた、哀しくも切なきSFタイムトラベル青春恋愛映画の、脳内フル回転で観る逸品である。】」ドニー・ダーコ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”世界の終わりと始まり。そして並行世界の入り口と出口。”今作は80年代ロックの名曲に彩られた、哀しくも切なきSFタイムトラベル青春恋愛映画の、脳内フル回転で観る逸品である。】
■ドニー・ダーコ(ジェイク・ギレンホール)は夢遊病のため、ゴルフ場で寝る夢の中で巨大な銀色のウサギ、フランクと出会い、「世界の終わりまであと28日と6時間と42分12秒」と告げられる。そして、目覚めると彼の腕には”28:06:42:12”と記されているのである。
家に帰ると、空から飛行機のエンジンが落ちてきて、ドニーの部屋の天井に穴を空けていた。そして、ある日グレッチェン・ロス(ジェナ・マローン)という”義理の父に母が刺された”美少女が転校してくるのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。&NOBU解釈が多数あります。>
・劈頭、”エコー&ザ・バニーメン”の超名曲”キリング・ムーン”が轟く。今作の内容を考えると、抜群の選曲である。
ー 今作は随所で80年代ロックの名曲が、実に効果的な使われ方をしているのである。ー
・ドニー・ダーコは、カウンセリングに通っている高校生。過去に数々の問題行動を起こしているが、実はそれは彼がタイムトラベラー&並行世界を無自覚に行き来する資質を持っているからだろうと、徐々に推測出来るのである。
・彼は過去に名作と言われているSF小説を書いた老婆ロバート・スパロウを良く見ている。彼女はいつもフラフラと道を行き来し、郵便箱を頻繁に開けている。彼女も又、タイムトラベラーであり、並行世界を行き来する中で、精神を病んだのだろうか。
■1998年10月2日 ドニー・ダーコが夢遊病でゴルフ場で寝ていて、居なかった部屋に、ジェット機のエンジンが落ちて来ている。
・ドニー・ダーコは、心に傷を持つグレッチェン・ロスに惹かれ、彼女も謎めいた雰囲気を持つドニー・ダーコに惹かれて行く。
今作は、青春恋愛映画でもあるのである。
そして、二人がデートで”死霊の館”を映画館で見ている時に彼女は寝てしまうが、そこにフランクが現れて、ウサギの着ぐるみを脱ぐ。その片目は潰れている。
ー このシーンは、最後半のシーンを暗喩している。-
・ドニー・ダーコが、学校で生徒達に人生について講演する男に対し、”講演料は幾らですか?”などと揶揄した問いをするシーンも、彼が問題児であるように見えるが、彼はその男の真実の姿”児童ポルノ”と関わっている事を”知っており”彼の部屋を放火し、捜査した警察により男の所業が露わになるシーンも、ドニー・ダーコが無自覚なる並行世界移動者である事を示唆しているのである。
・ドニーの姉エリザベス(マギー・ギレンホール)が大学に受かり、皆でパーティーをしている最中、グレッチェン・ロスが泣きながら現れ、彼の手を取って部屋で”お母さんが、又義父に・・。”と泣き崩れる。
ー このシーンで流れるのは、”ジョイ・ディヴィジョン”の縊死したボーカル、イアン・カーティスの陰鬱な歌声が印象的なコレマタ名曲”ラブ・ウィル・ティア・アス・アパート”である。この曲もこのシーンに合っているし、最後半の余りにも切ないシーンにも合っているのである。
更に、このシーンでは”ザ・チャーチ”のコレマタ名曲”アンダー・ザ・ミルキー・ウェイ”も流れるのである。何と言う選曲の良さであろうか。-
・そして、ドニーとグレッチェン・ロスは、愚かしきセス等、同級生達にパーティーの夜に首を絞められ、道に逃げたグレッチェン・ロスは、ウサギに仮装したフランクが運転する車に撥ねられてしまうのである。
そして、ドニーはフランクに向けて銃を発砲するのである。
更に、ドニー・ダーコは決意をし、笑顔を浮かべて自宅のベッドに入るのである。そこに”彼の予想通りに”落ちて来たジェット機のエンジン。
彼は、並行世界で死んでしまったグレッチェン・ロスを助けるために、自らジェット機のエンジンが落ちて来る事を知りながら、自らの身を捧げたのである。
<そして、悲しみに暮れるドニー・ダーコの母の姿をグレッチェン・ロスが見ているシーン。彼女は当然、ドニー・ダーコの事は知らない。
だが、彼女はドニー・ダーコの母に、僅かに手を振るのである。
このシーンで流れるのが、”ティアーズ・フォー・フィアーズ”の”狂気の世界”というマイナートーンのコレマタ、名曲なのである。
今作は、80年代ロックの名曲に彩られた、哀しくも切なきSFタイムトラベル青春恋愛映画の脳内フル回転で観る逸品なのである。>