「混ぜるなキケン」ブラック・ダリア 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
混ぜるなキケン
ジェームズ・エルロイ原作の「ブラックダリア」。
最初はフィンチャー監督で映画化の筈が、何年たっても出来上がらず、気付いたら監督がデパルマに。
こういうややこしい話はフィンチャーみたいな手際の良さが必要なのでは?そう思いつつ…
デパルマだって「アンタッチャブル」など優れたギャング映画あるわけだし。あの感じで撮ってくれたら格好良い作品になるのでは?と、原作ファンは期待していたのだが…。
デパルマは、そんな予想のはるか斜め上をいっていて。
過去の自作「アンタッチャブル」の模倣なんてする訳なくて。
ましてや他人の作品「L.A.コンフィデンシャル」を踏襲する気もさらさら無く。
原作者エルロイの思い入れ(実の母親がブラックダリアと近い殺され方をしてる)なんて、おかまい無しで。
いや、もうデパルマ・ワールド全開。
原作の雰囲気とは遠くかけ離れた『デパルマのブラックダリア』になってました。
個性の強いもの…エルロイ・ワールドとデパルマ・ワールド…は、掛け合わせちゃイカン、混ぜるなキケンってことか。
毒をもって毒を制す筈が、あらぬ方向へ行ってしまったような。
それでも腐っても鯛、さすがデパルマと思ったのは、劇中でてくるブルーフィルムのシーンだろうか。
エリザベス・ショート(後に惨殺される女優志望の女)が生前出演していたブルーフィルム。
いかがわしくて、切なくて。これぞまさにデパルマの真骨頂。
ポルノに出てまでも何とかチャンスを掴みたかった女の悲しさ。そしてそれが全部無駄になってしまう悲惨な未来への予感。一度見たら忘れない、何ともノアールなシーンでした。
「エルロイのブラックダリア」として観たら星0なんですが、歳をとっても独自のノアールを突き進むデパルマに敬意を表して星3.5!!