突入せよ!「あさま山荘」事件のレビュー・感想・評価
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映画作りが下手な原田監督
時代の狭間の事件簿
連合赤軍の立て籠もり事件を指揮することとなった、警視庁警視正の苦闘を描く物語。
昭和戦後時代の転換点ともなったあさま山荘事件。私はこの事件を日本現代史として興味深く感じていました。
複数の読み物やTVのドキュメンタリー、wiki・・・映画では「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」も鑑賞済みですが、どうしても赤軍側の動向にフューチャーされたものを読み、鑑賞してしまいます。
この作品は、まったく逆の立場。警察の陣頭指揮を担った佐々淳行氏のノンフィクション小説を原作としてた作品。その意味でも、とても興味深く鑑賞しました。
物語は、現場の混乱ぶりを余さず活写。合わせて、警察庁の目論見、警視庁と県警との主導権争い、機動隊員のプライド等を描き、物語に厚みをもたらせます。
佐々目線で描き切っているため、赤軍側の人間模様を一切描かれていないのも特徴。それにより過激派の不気味さと現場の緊張感をより強く感じることが出来ました。
ただ、上記は功罪裏腹。
県警との主導権争いについては、大袈裟過ぎます。wikiを確認したところ原作にはない要素だったようで、正直煩わしく感じます。あそこ迄の描き方をするのであれば、県警側の目線も加えないとバランスがとれません。
あさま山荘での混乱ぶりは、ハンディカメラを多用して混乱ぶりをより印象づけました。しかし、それは分かり難さもプラス。特に山荘内部の攻防では何が何やら・・・
レイアウト図や組織図を使って、どこの部隊がどこから進入しようとしているか・・・を明示していれば、より分かりやすくなったように思います。
私的評価は普通にしました。
なんとなく日本の警察という組織の皮相浅薄さが透けてみる。
歪み合いばかりで疲弊するエンタメ
二人の信頼関係がすばらしい一本
レビュアー諸氏がご指摘のとおり、この映画は実際に起きた事件と、当時の現場指揮官だった方の著作を底本として作品化されたものです。
それだけに、事件の処理をめぐる中央(警察庁)の介入と地方(長野県警)の意地。そして、やはりこれも官僚組織である警察組織を動かすことの困難―。
同じような組織で働く者の一員として、佐々警視正(警備局付監察官)の苦労が、評論子には忍ばれました。
その中でも、佐々監察官の能力を信じて、すべてを任せる後藤田・警察庁長官。
その二人の信頼関係が、よく描かれていて素晴らしいと思いました。
本作は「お宝DVD」のうちの一枚として収蔵し、それこそ盤面が擦り切れてしまうのではないかと思うほど、繰り返し、繰り返し、また繰り返し見た一本にもなります。
気持ちがくじけそうな時に、評論子には勇気をくれる作品のひとつでもあります。
評論子としては、秀作としての評価は、疑う余地すらないところです。
(追記)
<映画のことば>
「はい、こちらヘラクレス!」
わざわざ七難八苦の険しい道を選んで歩くー。
それを「ヘラクレスの選択」と言うんだそうですけれども。本作中での佐々警視正のセリフによると。
そんな思いをしながらも警察畑一筋に勤めて来られたのも、やはり後藤田長官との信頼関係があったればこそ。
本作の中では最後の最後に語られるものではありますけれども。
その意味では、本作ではいちばん重要な台詞(脚本)ではなかったかと思います。
(追記)
「災害は忘れた頃にやってくる」というのは、物理学者の寺田寅彦の言葉だそうですけれども。
しかし、お役所でも、大きな災害や事件・事故は滅多に経験しないので、そういう事象にぶち当たるのは、前回の事案を経験した職員が定期の人事異動で異動したり、退職したりして、いなくなってからということが少なからず起こります。
それで、未経験の職員たちが、自身の経験などを踏まえて対応することになるので、実は、お役所の危機対応は、常に素人対応を余儀なくされているのが実際です。
昭和57年(1982年)に、長崎地方が集中豪雨で大きな被害を受けたということがありました。映画の話ではないのですが、NHKが、その時の119番通報の録音を素材に、長崎市消防局の対応を検証するという番組を放送したことがあります。
そのときの録音の一節を、評論子は忘れることができません。
消防団員「…という状況で、現場は、どげんもならんとですよ。」
119番指令員「はぁ、それでも何とか、対策ば立てんと、いけんですよね。」
消防団員「対策って、どげんな対策ば立てると。未曽有の事態に。」
119番指令員「どげんも、こげんも。何とか対策ば立てんといけんでしょう。今までの経験ば活かして。」
消防団員「おおっと…。」
電線を切る…送電を切って、暗闇にして犯人グルーブの行動を制約するのか、それとも、鉄球スイングの支障になる電線を物理的に撤去するのか。
いわゆる「放水作戦」の水源(ひょうたん池)に配置になった部隊は、お腹がすいたのか、指揮無線の回線を使って、警備本部に弁当の催促をしたりもします。
現場のドタバタ、ゴタゴタは、際限なく続きます。
ましてや、せいぜいか投石か火炎ビンなどで、いかに警察組織といえども、銃撃の洗礼を受けることの経験のなかった当時としては。
(大盾を二枚にしたら、ライフルの銃撃でも大丈夫でない?―などなど)
本作での(いかにも官僚組織らしい?)地方・長野県警と中央・警察庁とのちぐはぐや、現場の混乱などは、その現れ―そして、製作陣の取材の肌理(きめ)細やかさと受け止めました。評論子は。
その一方で、それまでの経験を活かして何とか事態を打開しようとする現場警察官(機動隊員)たちの奮闘ぶりは、光っていたのではないかとも思います。
そういう意味でも「つくりの良い」作品であり、評論子としては好評価としているところです。
ヘラクレスの苦難は続く
Amazon Prime Videoで鑑賞(レンタル)。
原作(連合赤軍「あさま山荘」事件)は未読。
あさま山荘事件を警察の視点で捉えた本作は、事件の表裏の出来事をリアリティー溢れるタッチで描き、果たしてどこまでがフィクションなのだろうと思いながら観ました。
縄張り意識やメンツが現場を硬直させたり、指揮系統に混乱が生じたりと、警察組織の抱える矛盾が露呈していて、「敵は赤軍じゃないかも」的なセリフが印象的でした。
突入直前、鉄球をぶつけるのに邪魔な電線が切断されていないことが発覚する場面では、前日に確認していたにも関わらずいい加減な対応がされていて絶句させられました。
佐々淳行氏に降り掛かる苦難を伴うミッションの数々。警視庁と長野県警の関係を調整し、上層部からの圧に抵抗し、前線に出て直接指揮を執るなど、八面六臂の活躍の果てに訪れたクライマックス、突入シーンの迫真性(任に当たる機動隊員たちの決死の戦い)に息を呑みつつ、佐々氏が切り拓いた道の果てに訪れた結末は人質無事救出、被疑者全員確保と云う華々しいものでした。しかし、尊い犠牲を伴ったことも事実。この事件を教訓にして、ヘラクレスの苦難は果てしなく、続く…
1970年代の「連合赤軍」の起こした一連の事件は、何だったのだろう!
前から観たいと思っていました。
録画してあったのを観ました。
この映画を観ただけでは、連合赤軍のことは殆ど分からないです。
事実に即している、
だから殆どドキュメンタリー映画です。
犯人の姿も肉声も全く聞けない。
犯人は、壁に開けた穴から機関銃の先っぽを出して、
時々発砲する。
殺された機動隊長さんは完璧に狙い撃ちされた。
あさま山荘事件は1972年2月29日から10日間犯人たちが山荘に
籠城して、警察もマスコミも国民も我慢の限界で、
10日後にようやく犯人逮捕され人質は無事生還する。
3名死亡(警官2名、民間人1名)
負傷者27名。
この映画は当時この事件を指揮した警視庁の佐々淳行さんの著書
『連合赤軍「あさま山荘事件」』を原作にして、それを忠実に
再現している。
映画はストーリーの進み具合が遅く、突入までが長くて、
かなりイライラする。
犯人側が、ときたま銃撃する以外に反応がなくて、描写が警察側だけ。
よって面白味にも欠けます。
連合赤軍は当時、警察に追い詰められて、山岳地帯で内ゲバに暮れて、
「総括」の名の下に12名を殺害、逃走した永田洋子他は東京で
逮捕されている。
残ったこの事件の主犯格・坂口弘他4名は、銀行強盗と銃砲店銃撃で、
資金と武器を確保。
逃走の途中道に迷い「あさま山荘」に籠城する。
《連合赤軍が起こした事件》
よど号ハイジャック事件
1970年3月31日~4月3日。
(犯人は北朝鮮に亡命)
岡本公三・テルアビブ空港(イスラエル)乱射事件。
1977年5月30日。
(死者26名)
この時代、テロ組織と言っても過言でない「連合赤軍」のテロ行為。
なぜ易々と成すことが可能だったのか。
政府の弱腰もあるが世界的な風潮でもあった。
国家に途轍もない損害を与え、最高幹部の重信房子は、逮捕服役して、
今は満期で自由の身となっている。
あさま山荘事件の犯人も死刑囚ながら生存している。
岡本公三でさえイスラエルで英雄扱いされており存命。
どのような組織・シンジケートでこのような事件が可能だったのか?
真相は未だに闇の中。
そんな時代だった・・・
そういう言葉で片付けられない遺恨を残している。
他にも、
ダッカ日航機ハイジャック事件。
1977年9月28日。
(身代金600万ドルと日本赤軍メンバーの釈放)
この事件の余波として、バングラデシュ軍のクーデターが起きた。
佐々役の役所広司が格好いい、
こんな事件が1970年代に起こった記録として貴重な資料です。
立ち向かった者たちの等身大の姿
コメディタッチで描いているので見やすい作品。
加えて印象に残るのは犯人側の弾薬の多さ。なくなる様子がない。
基本にあるのは警視庁と長野県警の対立。最後まで一体になることはない。
それに指揮系統の混乱。
役所広司の役以外が有能にみえない…
あの有名な鉄球の案、突然出てきたけれどこのアイデアが出てくる過程などもう少し見たかったかも。
後藤田長官役の藤田まことがさすがの存在感で良かった。
トータルの評価が低いのには驚かされる。
本作と「実録連合赤軍、あさま山荘への道程」を是非ともセットでご覧下さい
今年2022年は、本作で描かれるあさま山荘事件からちょうど50年の節目に当たります
本作は2002年の公開
つまり事件から30年目の節目として撮られた作品というわけです
テロリストと警察との対決
その視点で描かれています
犯人達連合赤軍の考え、彼等の立場や状況などのことは本作ではどうでもよく、単に武装テロリストとの攻防戦のみを描いていますから、連合赤軍のことは切り放なされて、普遍性のある映画として成立しています
テロリストの連合赤軍の側の視点
彼等が何故あのような事件を起こしたのか?
何者だったのか?
それは若松孝二監督の2008年の映画「実録連合赤軍、あさま山荘への道程」をご覧いただければ良いでしょう
本作とその作品をセットでご覧になられることを強くお薦めします
まず本作より先にそちらご覧頂き、続けて本作を鑑賞される順番がよろしいかと思います
その方が当時の状況や背景をより深く理解できるので、より本作を楽しめると思います
そして「実録連合赤軍、あさま山荘への道程」での暗澹たる思いを、本作が与えてくれるカタルシスで断ち切ることができるとおもいます
監督は原田眞人
「ガンヘッド」のようなガッカリ映画ではありません
十分に楽しめ、見応えもある映画です
役者達も一流俳優で、演出も撮影も水準以上です
大満足です
原作は本作の主人公、佐々淳行警視正(事件当時)の著書「連合赤軍「あさま山荘」事件」
この人はその後、初代内閣安全保障室長にもなられた、本当に超がつく優秀な方です
そして人間的魅力のあった人でした
その彼を役所広司を演じます
その特に優秀な人材を、上手く使いこなす後藤田警察庁長官を藤田まことが演じます
あのカミソリ後藤田という渾名がなぜついたかがよくわかります
あのような切れる人に使われて、役職以上の権限を与えられて存分に働ける幸せ
有能な同僚と互いの能力を認めあい、困難に立ち向かう充実感
この特に難しい仕事を仕切れるのは、どれだけ他に沢山人間がいても自分しかいないという自負心と高揚感
そして一抹の不安
それらが見事に表現されています
大きな組織で、もみくちゃにされている人には、あるあるシーンの連続だとおもいます
佐々淳行氏は既に故人
2018年秋に87歳で永眠されています
あさま山荘事件の当時は42歳でした
ヘラクレスの選択
敢えて困難に立ち向かっていくこと
同じ様に困難に飛び込む
いや、上からの指名で否応なしに投げ込まれる世代にとっては、共感と教訓と参考になることばかりです
佐々淳行氏のベストセラーになった著書「危機管理のノウハウ I~III」は新入社員の頃からの愛読書です
これから大きい組織の上級幹部を目指す方、そのスタッフに就く方には、必読書と言えます
必ず役に立ちます
お薦め致します
事件そのものが映画的で面白く迫力も有りだが、物足りなさも
テレビに多くの人間が釘付けになっていたあの事件の背後で、県警と警視庁の主導権争いがあったことは知らなかった。米国映画でさんざん見た警察の縄張り争いが、国民性も違う日本でも同様に有るのは、どうしてなのか、不思議な気がした。
大きな球による壁破壊、放水攻撃、突入、2名殉死、人質確保、犯人確保と忠実に事実をなぞる。国民を熱中させた様に事件そのものが映像的で、映画として面白かった。また突入後に指揮官が殺られ、機動隊が大混乱に陥った描写も、臨場感に基づく迫力が相当に有った。
ただ、見終わった後に物足りなさも感じてしまった。犯人側の描写が全くないのは、まあ一つの見識として理解もできるが、主役である役所広司による佐々淳行の使命感や気持ちの動きがあまり伝わってこなかった。一方、藤田まことが演じていた後藤田長官の、国家組織を守り犯人を英雄化しないための、人質の命最優先、犯人生捕等のリーダーとしての指示の的確さは、史実らしいが唸らされた。とは言うものの、この事件が日本及び日本人にとってどういうものであったのか、原作が悪いのかもしれないが、その考察が全くなされていない様に見えたことが物足りなさに繋がっている様に感じた。これだけ映画的に魅力的な素材であるだけに、残念に思ってしまった。
【”ヘラクレスの選択と、彼が信念を持って突き進んだ道”】
ーこの事件において、殉職されたお二人の警察官の方に、哀悼の意を表します。-
■今作の印象
・警視庁から浅間山荘人質事件を解決するために派遣された佐々(役所広司)達に対し、主導権を取られたくない長野県警との確執の描き方。
どこの組織にも、こういう事はあるのだろう。
第一は人質救出であり、面子は二の次だろう、と思いながら鑑賞・・。
・スクープを狙うために、集まる報道陣達の姿。立て籠もりがが長引く中、いら立ちを隠せない姿。
何時の時代でも、愚かしき一部のマスコミ・・。
・革命家を名乗る連合赤軍の姿と人質になった女性の姿を再後半まで、一切写さない手法。
- 銃口にフォーカスした映像。次々に凶弾に倒れる隊員たちの姿。緊張感が増す。ー
・最前線の佐々達と、東京警視庁本部との温度差の描き方。
- 篠井英介が演じる兵頭参事官の、愚かしき言動。-
・佐々と宇田川(宇崎竜童)との関係性を始めとした、男同士の絆。死を覚悟して、犯人たちと最前線で対峙する内田、高見隊長たちの姿・・。だが、・・。
- 東京の警視庁本部の、世間体を気にする輩の愚かしき姿との対比。近年、同じような映画を観たな‥。「Fukushima 50」ー
・どのような状況でも、ユーモアを忘れない佐々の姿。そして、決死隊結成の際に、率先して隊を率いる佐々を役所広司が、流石の演技で魅せる。
キツイ状況だからこそ、トップはユーモアと”無理した”余裕を部下に示す事が必要なのである事を、改めて学ぶ。
<愚かしき”自称革命家”と対峙する警察の姿を、上記の様々なシニカルな視点を織り込んで、原田眞人監督が描き出した作品。
オリジナル脚本で、骨太なテーマに取り組んでいる原田監督は、貴重な邦画監督である事を再認識した作品でもある。>
タイトルなし
警察内部での指揮争いや、作戦も長野県警の呑気さと相まって、うまく実行できないなど 実話っぽい。軽いタッチで描かれてる部分あり、スムーズに見れるが、内部突入シーンや、音響とセリフが重なってしまいました残念。
ヘラクレスの選択
そりゃ「ダーティハリー」観たいよ、生き残って「フレンチ・コネクション」も観たいよ!!
怒る側と怒られる側、普通に働き職に就く者ならば大小あれど誰もが経験する事柄である訳で、共感できる場面が大いに。
劇的にドラマティックに感動を炙り出す、そんな過剰な演出は皆無な、突入するまでの緊張感の無さ、物語の展開も一定に保ち、全体的にコミカルな印象が残るが、それこそがリアルで現実的なのだと。
役者もそれぞれに演じるワザとらしさを感じない、普通さに好感が持て、生と死の狭間と緊迫した現場に、より人間らしさが描けている原田眞人の巧さ。
長野県警の人達は本作を観て、あまり良い気分にはならないような?だからこそノンフィクションでありながらのフィクションってな、謳い文句なのだろうか?
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