アバウト・ア・ボーイ

劇場公開日:

解説

親の遺産で暮らす38歳無職の独身男ウィルの苦手なものは「責任」。が、情緒不安定の母親と2人暮らしのイジメられっ子、12歳のマーカスと出会い、人生観が変わっていく。「アメリカン・パイ」のポール&クリス・ワイツ監督が「ハイ・フィデリティ」のニック・ホーンビィの同名小説を映画化。「ブリジット・ジョーンズの日記」の製作プロ、ワーキング・タイトルとロバート・デ・ニーロの製作プロ、トライベッカが共同製作。

2002年製作/102分/アメリカ
原題または英題:About a Boy
配給:UIP
劇場公開日:2002年9月14日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第60回 ゴールデングローブ賞(2003年)

ノミネート

最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル)  
最優秀主演男優賞(コメディ/ミュージカル) ヒュー・グラント
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映画評論

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写真:Album/アフロ

映画レビュー

4.0原作とは随分とラストが異なることにビックリ!

2017年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

悲しい

楽しい

他人同士のオジさんと少年が固い絆で結ばれていく本作は、史上最低なお下劣コメディ「アメリカン・パイ」の米国人監督ワイツ兄弟による英国進出作でもあった。彼らは彼らなりに、「アメリカン・パイ」の二番煎じに甘んじることなく胸張って次ステージに進みたかったのだろうし、そこに従来と異なる役を望んだヒュー・グラントと、天才子役、そしてニック・ホーンビィの原作という要素が惑星直結のごとく綺麗に並んだことによって、この伝説的コメディが誕生したわけである。とはいえこの映画はクライマックスが原作と大きく異なる。「キリング・ミー・ソフトリー」など出てこないし、原作ではニルヴァーナのカート・コバーンの死がフィーチャーされていることはちょっとした驚きだ。90年代前半に限定されていた物語を、ワイツ兄弟は手際よく切り開き、いつの時代にも普遍的なコメディへと作り変えた。その大胆な決断もまた、二人の立派な功績と言えそうだ。

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牛津厚信

5.0良い子は分かるね♥シングルマザーはもっと狡猾だよ。

2024年10月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

4.0望むものを得ること、が幸せの唯一の道ではない

2024年3月13日
PCから投稿

数々のラブコメで軽薄なプレイボーイを演じてきたヒュー・グラント。
そろそろそういう役柄を演じるのはミスマッチな年齢になってるんじゃないの?って頃合いが秀逸に機能している。
それでもなおセクシーさは隠しきれていない。

もうとっくに子供がいてもおかしくない年齢にも関わらず、父の遺産管理でモラトリアムを突き進むウィル。
母親の趣味のヒッピースタイル故にいじめられているマーカス。
そんな変な組み合わせの2人がお互いに影響し合って何だかいい感じの巡り合わせになっていく様子は父と子のようであり、兄弟のようであり、友達のようであって何とも微笑ましい。

軽薄な男ではあるのだけど、時に道化に徹することができるウィルの優しさ。
色んなものに感化されながらも心根の部分で母への愛を示せるマーカスの優しさ。
それぞれの不器用な部分を持ちながらも、ドラマチックではない善性の発露が好ましい余韻に繋がる。

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昭和ヒヨコッコ砲

4.5ライト・コメディの傑作 「アバウト・ア・ボーイ」

2024年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

「アバウト・ア・ボーイ」は、人と人が接する時に感じる内心の不安や自分の弱い部分を見透かされないだろうかという不安を、等身大の人間の姿で描いたライト・コメディの傑作だと思います。

この映画の主人公の38歳の独身男ウィル(ヒュー・グラント)は、亡くなった父親が一発ヒットさせたクリスマス・ソングの印税で優雅に暮らすリッチな身分。
一度も働いた事がなく、TVのクイズ番組とネット・サーフインで暇をつぶし、適当に付き合える相手と恋愛を楽しむ、悠々自適の日々を送っています。

ところが、情緒不安定な母親と暮らすマーカス少年(ニコラス・ホルト)との出会いが、彼の生活をかき乱していく----という、非常に興味深い設定でのドラマが展開していきます。

まさに現代ならではのテーマをうまく消化して、ユーモラスで、なおかつ、ハートウォーミングにまとめ上げた脚本が本当にうまいなと唸らされます。

30代後半の独身男の本音と12歳の少年の本音を、それぞれ一人称で描きながら、それを巧みに交錯させていくという構成になっていて、それが、二人の男性、ウィルとマーカスがいかにして心を通わせていくのかが、このドラマに説得力を持たせる上で重要になってくるのです。
そして、これが実にうまくいっているから感心してしまいます。

表面を取り繕う事に長けたウィルは、今時の小学生が歓迎すると思われる、クールなスタイルを本能的に知っています。
マーカスはそんなウィルを慕っていきますが、それだけではなく、ウィルの人間的に未熟な部分が、結果として二人の年齢差を埋める事に繋がり、マーカスはウィルを自分の友達の延長戦上の存在として見る事が出来るようになるのです。

マーカスは彼の持つ性格的な強引さの甲斐もあって、ウィルという良き兄貴を得る事が出来、一方のウィルは、自分だけの時間にズケズケと土足で踏み込んで来たマーカスを、最初こそ煙たがっていましたが、彼と深く接していく中で、次第に"自分の人生に欠けていたもの"に気付かされていくのです。

この映画は、そんな二人の交流の進展に歩を合わせるように、"人間同士の絆や家族"といったテーマを浮き彫りにしていくのです。

日本でも最近は、"シングルライフ"というものが、新しいライフスタイルでもあるかのように市民権を得つつありますが、確かに、お金さえ払えば、ありとあらゆる娯楽やサービスが手に入る時代になって来ました。個人が個人だけで、あたかも生きていけるというような錯覚に陥ってしまいがちな現代。

もっとも、この映画はそんな現代人に偉そうにお説教を垂れているのではなく、むしろ、大半の人間はそんな現代というものに、"不安と寂しさ"を感じ始めているのではないかと問いかけているのです。
だからこそ、この映画は多くの人々が共感を覚え、ヒットしたのだと思います。

そこにきて、ウィルを飄々と自然体で演じたヒュー・グラントという俳優の存在です。
ウィルは、ある意味、"究極の軽薄な人間"として描かれていて、本来ならば、決して共感したくないようなキャラクターのはずなのですが、ヒュー・グラントが演じると、何の嫌悪感もなく見る事が出来るので、本当に不思議な気がします。

ヒュー・グラントは、このような毒気のあるライト・コメディを演じさせれば、本当に天下一品で、彼の右に出る者などいません。
余りにも自然で、演技をしているというのを忘れさせてしまう程の素晴らしさです。

そして、困った時に見せる微妙にゆがんだ何ともいえない表情といったら、他に比べる俳優がいないくらいに、まさしくヒュー・グラントの独壇場で、もう最高としか言いようがありません。

かつての"洗練された都会的なコメディ"の帝王と言われた、ケーリー・グラントの再来だと、ヒュー・グラントが騒がれた理由が良くわかります。

この映画は、そんなヒュー・グラントの持ち味を最大限に活かして、誰もが表だっては認めたくないような人間らしさに踏み込んでみせるのです。

そして、人と人が接する時に感じる内心の不安や自分の弱い部分を見透かされないだろうかという不安を、等身大の人間の姿を通して映し出す事に成功しているのだと思います。

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オーウェン