ゴーストバスターズ(1984) : 映画評論・批評
2020年6月23日更新
1984年12月2日よりロードショー
※「新作映画評論」のページでは、毎週火曜日更新の新作の評論に加え、不定期で「映画.com ALLTIME BEST」に選ばれた旧作の映画評論を掲載しています。
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マシュマロマンの登場シーンに改めて痺れる。これ考えた人は、本当の天才
「ゴーストバスターズ」には、忘れられない、ちょっと苦い思い出があります。
1984年のある日、大学生だった私たちは友人宅に集結していました。「レンタルビデオ屋で『ゴーストバスターズ』を借りてきた。上映会やるぞ!」と連絡が来たからです。それは、日本での「ゴーストバスターズ」劇場公開前のことでした。公開前にビデオで新作映画が見られるなんて、ちょっと信じられないでしょ?
一同ワクワクのなか、上映が始まりました。しかしそのVHSは、観客の頭が映り込み、客席の声も入っている海賊版。アメリカのどこかの劇場で、三脚を立てて盗撮した、今で言うところの「映画泥棒案件」だったのです。そんな代物が、普通にレンタルビデオ屋で流通していた80年代……。
クライマックス、例のアイツが登場すると、ビデオ画面からは手を叩いて大爆笑する観客の声が。しかし、我々が見ている盗撮の画面は暗すぎて、何か大きなものがNYの街を闊歩しているのは分かるが、姿がよく見えない……。一同顔を見合わせて「何なんだこれ?」。
後に映画館へ、マシュマロマンの勇姿を確認しに行きましたよ。ああ、こんな姿だったのかって。新作映画は、ちゃんと映画館で見ようって固く誓いました。
さて、2020年5月に改めてこの映画を見ましたが、「ゴーストバスターズ」の存在意義は、やはりマシュマロマンに尽きると再確認しました。これは、映画史に燦然と輝くキャラクターです。
正直、その登場シーンまではかなり冗長で、ご都合主義な展開を見せていますが、マシュマロマンが登場する一連のシークエンスは、「映画のマジック」を存分に我々に提示します。
まず、破壊神が、人々を破壊する主体を人々に選ばせるというコンセプトが秀逸。それを「選択」したのは、主人公たちの中でもっとも真面目な男(ダン・エイクロイド)です。結果、「もっとも無害な姿をした」巨大なマシュマロマンが、ゴジラのように町を破壊していく。
まるでシュールな悪夢です。しかし観客は大爆笑。ニューヨークの町が、人類が、滅ぼされようとするその場面で会心の笑いを取れるなんて、このシーン思いついた人は本当の天才だと改めて思います。
いやあ、マシュマロマン最高。
自分の学生の頃の思い出で、未だに滅びていないキャラクターの代表格です。
(駒井尚文)