25時のレビュー・感想・評価
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人は砂漠で生きられない
トイレの鏡に書き込まれた「FUCK YOU」の落書き。モンティはその中に自分自身の憤激を見出そうとする。
ろくに英語も喋れない果物屋の韓国人、バスケしか能がない黒人、ずる賢いユダヤ人、貧乏なラテンアメリカ系移民、エルメスのスカーフを棚引かせるいけ好かない金持ち、友人、父親、彼女、その他諸々。みんなまとめてFUCK YOU!彼は自分を構成している要素以外のすべてを憎むことで、なんとか敵を作ろうとした。
なぜかって、彼は数十時間後に7年間の禁錮刑を科されるのだ。それは途轍もない不条理である。しかもその不条理が他ならぬ自分自身の不道徳によって招かれたものであるという事実を受け入れるのはかなり辛い。だから人のせいにする。周囲の関係すべてを憎み、外部化し、仮想敵化する。
しかしそんな彼の企てを拒むように、ニューヨークの街は彼の心の中に不可逆的に染み込んでくる。金持ちでユダヤ人の親友、貧乏でオタクの親友、ラテンアメリカ系の彼女。みんな彼のことを心配している。残された最後の数十時間をできるだけ一緒に過ごそうとしてくれる。モンティが何より憎もうとしたはずのものたちだ。
アメリカには徹底的な外部というものが存在しないんじゃないかと思う。たとえば日本にいる私が「黒人は嫌いだ」と言ったところで、何が起きるかといえば、せいぜい知識人各位の顰蹙を買うくらいのことだ。「黒人」は我々にとってまだまだあまりにも遠い。
しかしアメリカでは同じことを言えば、たぶん、というか絶対、ぶん殴られる。「黒人」だけではない。「韓国人が嫌いだ」「金持ちが嫌いだ」「ラテンアメリカ系移民が嫌いだ」何でもいい。とにかくそういうことを言えば、実際に拳が飛んでくる。
なぜならアメリカという国がそれらの多様性をあまねく包括したうえで成り立っている共同体だから。つまりアメリカにおいて特定の何かを嫌ったり排除したりしようとすることは、無意味な自己否定とほとんど同義だと思う。アメリカには外側がない。あるいは外側だと思っていても、それはすでに内側として存在している。
徹底的な外部が存在しないことは絶望であると同時に希望でもある。モンティはどこにも敵を作ることができない。敵だと思っていたものは全て自分と繋がっているのだから。したがって麻薬密売という途方もない罪を、彼は自分一人の存在だけで引き受けなければならない。
しかし一方で、あらゆる関係が内部であったために、彼は仲間たちの好意や計らいに支えられ、自殺や逃亡といった悪手に手を染めることなく最後の数十時間を円満に過ごすことができた。
刑務所までの道のりを父親の車で過ごすモンティの頭の中にはとりとめもない幻想が浮かび上がる。自分たちの乗る車が進行方向を変え、そのまま遥か西に向かっていくという幻想だ。
モンティは西方の小さな街で車を降りる。父親は彼に「もう二度と俺たちに連絡してくるな」という餞別を残して走り去っていく。モンティはその小さな街で小さな生活を送る。数年後にはニューヨークから彼の彼女もやってくる。やがて子供が産まれる。
この幻想はとても滑稽だ。西方の小さな街という空間はまさに徹底的な外部のアレゴリーだ。それなのに、結局モンティはそこにおいて再び関係性のネットワークを構築してしまっている。またしても外部が内部になってしまっている。
つまりどこへ行っても変わらないのだ。たとえ地の果てまで逃げようと、アメリカという空間はあらゆるものを優しく、あるいは暴力的に包み込んでしまう。いや、何もこれは空間的な話ではないかもしれない。アメリカとはそこに住む人々の内面に抗い難く内面化されていくある種の気質のようなものなのではないか。
モンティの見た幻想の中に印象的なシーンがある。父親の車が西に向かう道中、ロングショットで砂漠が映し出されるシーンだ。
砂漠には何もない。動物も植物も人間もいない。おそらく、徹底的な外部が本当に可能になる場所があるとしたら、それはこの砂漠なのだと思う。
しかし人は砂漠で生きられない。そのような不毛地帯で人は生活を営んでいくことができない。モンティにもそれはよくわかっている。だから砂漠で車を降りずに、その先にある小さな街で車を降りた。
やがて幻想は終わる。結局のところ、逃げ場などどこにもないのだ。モンティは幻想を通じてその認識を完全に引き受けた。
彼は今まさに自分が刑務所行きの車に乗っていることを思い出すが、何も言わない。ただじっと目を閉じ、自分の運命を受け入れようとする。そうすべきだし、そうするしかないから。
久しぶりの鑑賞
以前も観たが再鑑賞
ヤクの売人の主人公の収監される前の25時間を描いている
自業自得じゃねーかと思いつつも話に引き込まれていく
週間を前に友達は元気づけようと飲みに誘ったり
彼女とは信頼関係が揺らぎ上手くいかなかったりする
結局、自分をタレ込んだ裏切り者もわかり
彼女とも和解するが時間切れ
収監の時となる
最後の父親が語る架空の世界、絵空事、しかし現実から逃避せずにはいられない
その言葉から愛情が感じられ、とても深く響く、もちろん収監から逃げる事はできない
犯罪に手を出す事の無意味さを感じさせてくれる
別の生き方を選べたのに失敗してしまったと
深く余韻を残すような映画だったな
救いのない内容
何が結末か、よくわからない。
彼女とのラブストーリーがオチならがっかりだ。恐らくはお父さんのあの長い語りだとは思うが、だからなんだよとしか思わなかった。
グッと来たのはフランク。彼が一人ただただ可哀想だった。良い人なのに余りに救いのない描かれ方をしている。
登場する人みんなすごい演技だった。特にフランク役の人は印象的。エドワードノートンは個人的ファンなので最高。
NYの空気感というか雰囲気みたいなものが、リアルを感じれて良かった。
瞬間的に同じシーンを繰り返す演出は集中を削がれるので嫌いでした。
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