タイムライン(2003) : 映画評論・批評
2004年1月7日更新
2007年1月17日より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー
クライトン原作を冒険アクションにした潔さがいい
マイクル・クライトンのベストセラー小説の映画化には、常に同じ問題がつきまとう。それは、原作の持つ膨大な情報量を、どうやって映像作品に移し換えるかということだ。
クライトンの小説は、文章ならではの利点を生かして、扱っている題材についての広範な知識を、初心者にもわかりやすいように優しくかみ砕きつつ、微に入り細をうがつように記述していく。それを読むことで、読者は知的な興奮を得ることができるのだが、映画はそうはいかない。約2時間という上映時間の制限の中では、観客に対して与えられる文字情報はそんなに多くないからだ。
しかし、今回の「タイムライン」は、原作に描かれていたSF的要素(量子物理における多元宇宙論に基づいた時間旅行)や歴史小説的要素(中世フランス社会の史実に基づいた正確な描写)などの細かい情報をすっぱりと斬りすて、中世にタイムスリップした主人公たちの冒険アクションとしてまとめ直してみせたところが潔くて良い。特に、クライマックスの攻城戦では、映像ならではの大迫力で中世の城攻めの様子を再現、手に汗握るアクションを展開している。
2時間何も考えずに映画を観て、スカッとしたい人にはお勧めの1作だ。
(堺三保)