オーメン(2006) : インタビュー
いつか「ブルーマックス」をリメイクしたい。そんな夢を抱くハリウッドのヒコーキ野郎ジョン・ムーアが、ジャンル違いとも言えるオカルトホラー「オーメン」のリメイクを手掛けた。しかもほぼオリジナル通りに。今回はその心境と、恐怖(!)の舞台裏を聞いてみた。(聞き手:渡辺麻紀)
ジョン・ムーア監督インタビュー
「撮影したフィルムが、なぜかふたつに裂けてしまったんだ」
――ヒコーキ映画だけじゃなくホラーも好きだったんですか?
「いや、別にホラーファンってわけじゃない。最近はジャパニーズ・ホラーにハマってるけどね。ただ『オーメン』に関しては、時代によって表現や解釈が異なるという、大げさに言えばシェイクスピアみたいな映画という認識なんだ。そこが面白いと思ってね」
――バチカンが悪い予兆=オーメンに怯え、そこに9・11等のニュースフィルムが流れます。これは今回の特徴ですが。
「この映画をリアルに感じて欲しかった。われわれが生きている現代がいかに深刻な問題を抱えているか、それを認識してほしかった。もし本作を98年ぐらいにリメイクするならきっと、あんなシーンは入れなかったと思う。……撮影したフィルムが、なぜかふたつに裂けてしまったんだ」
――06年6月6日というまさに千載一遇のチャンスに公開します。その日付を意識しましたか。
「もちろんだ。そんな日に公開するなんて悪趣味だという人もいたけど、僕は気にならない。その日に公開することでみんなに注目され、今の世の中は病んでいるというメッセージが届けばいいと思っている。それにこの“666”の迷信というのは根強くって、絶対今年の6月6日には赤ちゃんを産みたくないという女性がたくさんいるらしいよ。それに街頭で“666”という数字を見せると、多くの人がいや~な顔をする。迷信の威力は相当なものだね」
――迷信といえば、日本でも怪談映画を作るときにはお祓いをします。この映画では?
「やったよ。神父さんに祈ってもらった。でもね、それでもイヤなことがたくさん起きたんだ。たとえば養父がダミアンの頭のなかに“666”の印を見つけるシーン。その撮影したフィルムがなぜか完全にふたつに裂けてしまったんだ。あのシーンだけだよ! もうひとつは、手のアップで起用したおばあさん。彼女が撮影の次の日、急死したんだ。前日はピンピンしていたのに! マジでイヤな気分になったよ。でも、偶然だと自分たちに言い聞かせて、どうにか最後まで撮影したんだ」
――あとミア・ファローの起用は? やっぱり「ローズマリーの赤ちゃん」?
「違うんだ。彼女のほうからあるとき電話がかかってきて、この映画に出たいという。僕は誰かのイタズラだろうと思っていたら何と本人でさ。当然僕は、ぜひお願いしますってね」
――じゃあ、最後に怖かったホラー映画3本をあげてください。
「やっぱりロバート・ワイズの『たたり』は外せない。そして今ハマってるといった日本製のホラーで『呪怨』、あ、最初のビデオ版のほうだよ。そしてやっぱり日本製の『オーディション』! もう想像を絶する怖さだったよ。実は最初、この『オーメン』も日本を舞台にしようかという話も出てね。日本のホラーをアメリカに持ってきてリメイクしているから、その反対をするってわけさ。でも、最終的にはグローバルなほうがいいといって今回のスタイルになったんだ」