ネタニヤフ調書 汚職と戦争

劇場公開日:2025年11月8日

解説・あらすじ

イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの汚職疑惑の実態に迫ったドキュメンタリー。

2023年10月7日、イスラム原理主義組織ハマスによるイスラエル攻撃への報復として、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザへの攻撃を開始して以降、終わりが見えずに多くの人命が失われているガザ・イスラエル紛争。この紛争のキーマンとされるのが、カリスマ的リーダーシップを持ちながらも、強硬的な政治姿勢で物議を醸すイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフだ。彼は在任中に刑事起訴された史上初のイスラエル首相でもある。2017年、汚職疑惑の捜査が進む中、ネタニヤフ本人や関係者への警察尋問記録の一部が、極秘裏に本作の制作チームへリークされた。そこには、財界やメディアとの癒着、贈収賄、利益供与などの実態が記録されていた。

本作では、イスラエルの元首相エフード・オルメルト、国内諜報機関シンベト(イスラエル保安庁)の元長官、ネタニヤフの元広報担当、著名な調査報道ジャーナリストらが証言。汚職がいかに国家の腐敗を招き、ネタニヤフが有罪を免れるため極右勢力と結託して長期政権を維持し、民主主義を危機に追いやっていったのかを暴いていく。

ネタニヤフ自らが公開中止を求めて訴訟を起こそうとした作品であり、イスラエル国内では上映禁止となった。「『闇』へ」「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」で知られるアレックス・ギブニーが製作総指揮を務め、「アニタ 反逆の女神」のアレクシス・ブルームが監督を務めた。

2024年製作/115分/G/イスラエル・アメリカ合作
原題または英題:The Bibi Files
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2025年11月8日

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映画レビュー

4.0 ネタニヤフの暗黒面に絶望しそうだが、本作の勇敢な告発が一筋の光

2025年11月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

知的

首相や大統領などの一国の運営を主導する立場の権力者が、実業家や資産家から賄賂をもらう見返りに便宜を図ることは、少なくとも民主主義国家において当然あってはならないこと。だが現実には古今東西そんな腐敗の事例があふれており、ネタニヤフが汚職疑惑をかけられていること自体にさして驚きはない。

しかし現職の首相が刑事起訴され、警察の取り調べに受け答えをする姿を収めた内部映像がリークされて、ドキュメンタリー映画として世に出るというのは異例中の異例。しかもいまだにネタニヤフが権勢を保つ中、イスラエルの法執行機関が政権からの圧力に屈することなく真っ当に仕事をしていること、警察内部の協力者から映像を入手したドキュメンタリー製作チームが本作を発信したことに驚かされつつも、彼らの正義感と勇気に希望をもらえる思いがする。

取り調べの映像が実に生々しく、不都合な過去の事実を指摘されると「覚えていない」、関係者からの不利な証言を聞かされても「嘘だ、偽証だ」と否定するネタニヤフの表情と身振り手振りに目が釘付けになる。劇映画「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」でメンターのロイ・コーンが若きトランプに授けた成功の3か条のひとつ「非を認めるな、全部否定しろ」を思い出す。ロイ・コーンもユダヤ系だった。長い迫害の歴史をサヴァイヴしてきたユダヤ系の人々の間で受け継がれる金言のようなものがあるのだろうか。

ネタニヤフの鉄面皮ぶりもすごいが、その妻と息子がおごり高ぶり威張り散らす姿も強烈だ。ネタニヤフが息子を後継者にしたがったという話も紹介されるが、もしネタニヤフが在任中に命を落とすようなことがあれば、あの妻が弔い合戦と称して息子を次期首相候補に立てるか、あるいは自分自身が首相の座を狙うのでは。なにしろ真っ当な政権になれば、彼ら一家の不正を暴く捜査が一気に進展する可能性が高いのだから。

ネタニヤフがカタールを経由してハマスに資金提供していたという事実も、70~80年代のアフガン紛争時に米国CIAがイスラム系反政府武装勢力「ムジャヒディン」を支援していた史実を否応なく想起させる。米国が間接的にアルカーイダとウサマ・ビン・ラディンを育て、9.11後の対テロ戦争で当時のブッシュ政権は支持率を上げた。

ロシアの反体制派リーダーを追ったドキュメンタリー「ナワリヌイ」以来の、勇敢な力作に感銘を受けた。ナワリヌイは悲しいことにプーチンに消されてしまったが、「ネタニヤフ調書」製作に関わった勇気ある人たちはどうか無事でいてほしいし、本作がイスラエルの正常化の一助となることを切に願う。

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共感した! 7件)
高森郁哉

4.0 終わらない理由

2025年12月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

各地で続く戦争、深まる分断、壊れていく地球…今を生きる私たちの不安は募るばかりだ。
本作では、容赦ない現実を突きつけられ苦しくなるが、一方で、これが創られ公開されていることに励まされる。
このジェノサイドが終わらない理由がよくわかる。

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共感した! 1件)
Kei

5.0 戦争は資本が望んでいる

2025年12月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

私がイスラエルのことで知っていることと言えば、戦後ユダヤ人国家として建国されたこと、パレスチナに対してジェノサイドをしていることくらいです。歴史を含めて近隣国との関係性など、ほとんど知りません。

しかし、私の様な知識の乏しい人間でも本作はそれほど難しいとは感じませんでした。

なぜなら、ネタニヤフという一人の人間を通して「戦争がいかに作られたか」という原因に言及した普遍的な作品だからです。戦争は起こるのではなく作りだされる。だから、どの国でも起こり得る。

きっかけは、ネタニヤフが政権維持の為に、ハマスに資金を供与していたから。ハマスはその資金でテロを実行した。ネタニヤフはテロを口実にガザへ戦争を仕掛けたため、彼の裁判は中断。つまり、ネタニヤフは裁判を逃れるために、戦争を続けるしかない。

と同時に、戦争になれば多国籍企業が儲かるので、大悪党ネタニヤフと多国籍企業はwinwinの関係になります。

日本でも差別や戦争を煽って国民を分断させる政治家がいますが、実は敵対する国のトップ(資本)と繋がっていて、戦争の火種を作っているのかも?と疑ってしまいます。

①戦争の火種を作る
ネタニヤフがハマスに資金を提供し、その資金を元にハマスはテロを実行

②憎しみを作る
テロを口実に民衆の憎しみを煽り国内を分断する

③戦争勃発

④ネタニヤフの裁判中断

⑤戦争関連の多国籍企業が儲かる

⑥停戦

⑦インフラ関連の多国籍企業が儲かる
その国の資源を株式会社化して多国籍企業が買上げ乗っ取る

⑧多国籍企業は資本が増え続ける

だから、資本主義である限り、あるいは資本主義の仕組みを変えない限り、戦争はなくなりません。

資本主義に生きていれば、預金、年金、保険、株式などで、自分の資産が全世界の金融に組み込まれていきます。私達は資本主義の恩恵を受けつつ、金融システムを通して間接的に戦争に加担していて、そこから抜け出すことができません。この地獄のサイクルを終わらせる代わりの方法があるのか、私には全く分かりません。

何しろ、戦争は資本が望んでいますし、私もある意味で資本の一部ですから。

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ミカ

未評価 では、どうすればいいの

2025年12月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 パレスチナ人排撃を狙いガザへの無差別爆撃を続けるイスラエルのネタニヤフ首相の権力の裏側を追ったドキュメンタリーです。

 汚職の容疑で首相在任中に刑事訴追を受けた首相である事は日本でも報道されていましたが、その取り調べの模様を記録した生々しいビデオを見る事ができるのは驚きでした。そして、その権力を支える企みがここまで巧妙とは知りませんでした。特に、自身の地位を維持する為にカタールを通じてハマスに裏から資金供与していたというのには驚きです。彼はハマスに居て貰わねば困るのだという解釈にも説得力があります。

 でも、そんな政権をイスラエル国民は何故支持し続けるのでしょうか。そこへの斬り込みと分析がなければ問題の本質と解決の道は見えて来ないのではないでしょうか。

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La Strada