劇場公開日 2025年8月8日

ジュラシック・ワールド 復活の大地 : 映画評論・批評

2025年8月5日更新

2025年8月8日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

「怪獣映画」の本性を剥き出しにする、ミッション遂行型のシリーズ新章

心臓病の特効薬を開発するため、大手製薬会社が恐竜のDNAサンプルを必要としていた。スカーレット・ヨハンソン演じる特殊工作員ゾーラ・ベネットは、この危険な任務を負うリスクテイカーとして、凶暴に野生化した恐竜が群れるエリアへと潜入することになる―。

シリーズで初めて女性のメインキャラクターを配した今回の最新作は、併せて先述したようなミッション遂行型のストーリーを導入することで、「ジュラシック」フランチャイズの新生をはかっている。とはいえ、作品世界は過去6部作と地続きだ。本作はそれらが形成してきた遺産を受け継ぎ、医学や科学が企業独占によって公共性を失うことへの懸念や、利己主義がもたらす倫理観の欠如に触れ、内容をより奥行きの深いものにしている。特に遺伝子操作によって人為的に生み出された「変異恐竜」にズームすることで、パークの収益目的で創造された彼らが人間に忍び寄る、モンスタームービーの性質を剥き出しにしていく。たび重なる核兵器の実験が、悲劇の怪獣ゴジラを生み出したように。

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このことからも分かるとおり、今回の監督がギャレス・エドワーズというのも腑に落ちる人選だろう。未知の巨大生物をめぐる探究のロードムービー「モンスターズ 地球外生命体」(2010)で長編デビューを果たし、同作が認められてハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」(2014)の監督に抜擢された、同ジャンルの有望株として台頭してきた存在だ。本作はそんな監督の作家的特性が見事に活かされ、「恐竜映画」を越境した「怪獣映画」として機能する。生物科学をいたずらに扱うことへの自縄自縛として、その犠牲者である者たちの影に我々は怯えるのだ。

同時にエドワーズは、敬愛するスティーヴン・スピルバーグへのリスペクトをあらわにし、モササウルスと相利共生を結んだスピノサウルスが船を襲撃するさいの背びれ演出で「JAWS ジョーズ」(1975)を高らかに復唱する。スピルバーグに魅了された男が、スピルバーグの膝元にあるフランチャイズにたずさわることを、自ら祝福するかのごとく。

水中からボートを襲撃するティラノサウルスの特別出演的な登場も、マイケル・クライトンの原作で映像化できなかった場面を実現させたものだが、そこはシリーズの顔として、過去ゴジラやヴェイダー卿(2016年の「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」)を千両役者のように演出した、エドワーズらしいハッタリが利いている。そもそも彼はゴジラ、スター・ウォーズ、そしてジュラシック・パーク&ワールドの3大フランチャイズを制した、世界に二人といない監督だ。主演のヨハンソンよりも恐竜の存在感が明らかに引き立っていようが、そこは覇者の特権として温かい目で見ようではないか。

尾﨑一男

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