ホラー作品
ホラーというのは最も難しいジャンルになってしまったようだ。
怖さにもいろいろとあるが、自分が信じているもの、西洋であれば神や悪魔を象ったものが恐ろしさを演出する。
ただ、それも今は昔の話で、最近ではゾンビでないとヒットしないというようなことまで言われている。
その中でも「ミッドサマー」のようなサイコロジカルホラーというのが新しい面白さとしてクローズアップされた。
この作品は、日本人がその背景的に信じていることをモチーフにしている。
姥捨て山ではないが、鳥居や仏壇、骨壺、墓石、身内の遺品等々を捨てる場所(山)
「すずめの戸締り」の「後ろ戸」のような場所
たまたま遊びに来ていた兒玉ケイタと弟の日向
あるはずのない廃墟
神隠し
ホラーだが、画面上でビクッとするような演出を省いている。
ケイタと同居する天野司 霊能力者という設定
天野と雑誌記者の久住との出会い方は面白かった。
彼女の個人的問題が、過去ストーカーに付きまとわれたことだろう。
そのトラウマが防犯ブザーを手放せなくなっている。
廃墟で彼女の腕をつかんだのは、彼女が持ったトラウマで、ストーカーに腕を掴まれたという恐ろしい経験が現れたものだろう。
さて、
天野司
彼は突然ケイタの過去の世界に入ってしまった。
そこでケイタと一緒に当時の様子を見ることになる。
彼は、「最初にケイタを見た時からずっと、弟は隣にいる」と告白した。
それをケイタに伝えることはなかったのは、ケイタが弟の話をしなかったからだろう。
彼は同時に弟の事故死(多分)を見た。
踊り場から階下に落ちたのだろう。
ケイタは抜け殻のようになった弟の衣服だけを見つけた。
この瞬間、ようやくケイタは弟の死を実感したのだろう。
しかし、
天野はどうなったのだろう?
天野はビデオテープの中に入ってしまったのだろうか?
行方不明になってしまっているので、彼こそ神隠しにあったのだろう。
日向のようなケースで家族がいなくなってしまうということは、家族にとって最悪の状況で、家族そのものが崩壊していくのだろう。
父の死因は不明だが、母は家族が単に家族ゲームのようになってしまった現状から抜け出したくて離婚したのかなと思った。
ただし、日向がいたときからずっとケイタは家族に対して邪険だった。
ケイタは、特に父に対して嫌悪感を持っていた。
その要因は、完全な妄想だが、父の不倫だったのではないだろうか?
母もそれに気づきながらも、口には出せなかった。
この二人の歪んだ関係を、ケイタは一早くから察知していたのかもしれない。
だから、両親に騙されて無邪気に振舞う日向を、ケイタは一人の弟として好きになれなかったのかもしれない。
両親がケイタに向けた視線
実はケイタが日向を殺したのではないかという憶測
これをはっきりと感じていたケイタは、益々両親を好きになれなかったのだろう。
ケイタは最後に天野の気配を感じる。
そこにあった鏡
別の世界
従来必ずある手法を使わず、日本人が信じるポイントを明確にし、そしてケイタの家族や人間性を描いたことは素晴らしかった。
しかし、ホラーという概念 つまり、逆ファンタジーだけで収めてしまったのは少々物足りなかった。
パラレルワールドを絡めてもいいように思ったし、天野が行方不明にならなければならない理由を明確にしてほしかった。