劇場公開日 2002年3月30日

ブラックホーク・ダウン : インタビュー

2002年3月19日更新

「ブラックホーク・ダウン」で本年度アカデミー賞の監督賞にノミネートされたリドリー・スコット。このノミネートは、戦争映画ばやりの昨今の米映画界でも、彼の映画が他とは一線を画すものである証拠のひとつ。その理由はなぜなのか、監督のファンである渡辺麻紀氏がインタビュー。彼の美学から今後の企画まで、おいしい話がいっぱいだ。

リドリー・スコット監督 インタビュー
「機能するものは美しい。武器は恐ろしいことにとても美しいんだよ」

聞き手:渡辺麻紀

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「彼がスゴいのは、映画をアートとして捉えているところなんだ」

「ブラックホーク・ダウン」の出演者ジョシュ・ハートネットはリドリー・スコットについてそう語ってくれた。確かにそうだろう。スコットほど美しい映画を撮る監督はいない。だが、彼がこの新作で描いたのは地獄絵だ。それも目を覆いたくなるような残酷で恐ろしい世界。

「これは現代史だ。私にとっては初めてのテーマだったので、とても興味深かった。それでやろうという気になったんだ。私のポリシーは自分の興味あること以外はやらない、だからね」

彼が現代史に挑戦するために選んだ手法はドキュメンタリー・タッチ。それも徹底して現実を映し出すクールな映像だ。

「ハリウッドのノンフィクションは必ずフィクションを入れる。しかし、私たちは事実だけで作ることにした。そのため、私のいつものタッチを出さないようにしたんだがね」

いつものタッチとは、あの美しさ。酸性雨が降りしきる猥雑な未来の街さえ美しく変えてしまった、あのスコットならではのビジュアル。しかし、だからといって、この映画が美しくないわけではない。やはり、どこを見てもスコットなのだ。

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「うーん、努力したんだがね(笑)。まあ、確かにヘリのシーンはつい、クセが出てしまったことは認めるよ(笑)。私はかねがね、機能するものは美しいと思っているんだが、兵器や武器は機能そのものだろ。だから恐ろしいことに、とても美しいんだよ」

「美術学校に7年も通ったから、自ずと美意識が身についてしまい、どんなところにも<美>を見つけてしまう」という。そして、それを「頭にノートして、あとから小出しにする」とも。たとえば「ブレードランナー」の冒頭の煙りを吐く工場地帯。あれは彼が生まれ育ったイギリスの工業地帯の風景に重なるのだ。

「私はビジュアリストと言われるが、それはときにネガティブな批判としても使われるんだ。あまりに美しすぎると言うわけだ。そんなとき私はこう答えることにしている。何を言っているんだ、これはサウンドではなくピクチャーなんだ、とね」

前作「ハンニバル」もかなり残酷だったが、そういうのが好きなのかと尋ねてみると「『ハンニバル』が残酷? いや、あれは愉快な映画だったと思うがね」とサラリ。さすが英国人といったところか。

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「私はさまざまなジャンルに挑戦してみたいんだ。現代史は楽しかったので、もう一度トライしてみたいし、あとはウエスタンとパイレーツものかな。私の言うウエスタンは、あくまでメタファーとしてだ。『デュエリスト/決闘者』もウエスタンのつもりで作ったんだ(笑)」

「デュエリスト」こそアートそのもの。やはり徹底しているのだ。

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