「美しい彼 eternal」「夜が明けたら、いちばんに君に会いに行く」そして「恋を知らない僕たちは」とここ2年で大傑作を連発し続ける、恋愛映画の申し子こと突如現れし鬼才・酒井麻衣監督の最新作は、これまた密かに日本映画界を盛り上げる、ファッショナブルでありながらミステリアスな女優・伊藤万理華を主演に迎えた一風変わったラブストーリー。
予告、ポスター、何よりもその安心と信頼のキャストに大きな期待を寄せていたのだけど、ちょっとこれは...やりすぎじゃないのか??笑 いくらなんでも浮世離れしすぎじゃない??
マイペースでひとりよがり。ぶりっ子で不思議ちゃん。まるで野良猫のようなチャチャの頭の中をそのまんま映像化したような作品。こんなクセの塊のようなキャラクターを難なくこなせる伊藤万理華の演技力はやはり只者じゃないし、今回もまた惹き込まれ、見とれてしまった。「サマーフィルムにのって」で大好きになって早3年。彼女の躍進はまだまだ止まらない。来月公開の「オアシス」の期待がさらに高まった。
伊藤万理華の大好きなところが詰まった作品だけど、その一方で彼女に依存するがあまり、物語として成立していないのを随所に感じる。キャラクター性だけで押し切っているストーリーであるため、結構グチャグチャでまとまりが悪く、しかもそんなキャラにしてはそこまで意外性はなく、ガラリと物語の色が変わる後半も面白くなりきれていないように思えた。
ゆっくりと走っていたのに急にアクセルをベタ踏みして、そのまま加速し続けると思いきや、次は思いっきりブレーキを踏んでまたゆっくりと走る、そんな感じの展開。だから面白くなれなかったじまい、あと一歩のところで終わらせている感じがどうももどかしい。中川大志演じる樂もかなり面白い人物で、チャチャとの似ているようで全く違う、野良猫と野良犬のような関係性に見入ってしまったんだけど、彼もまた作品の色作りの犠牲になっているようで、一連の流れを通しての終着点を見失っていた。
色合い、雰囲気、空気感、音楽に絵にファッション。好きな要素は山ほどあるし、劇映画としてではなく、映像作品として見ればとてもよくできた作品。酒井監督のこれまでの作品は、本作同様どれも面白く見応えがあって、映像もとにかく綺麗だったのだけど、漫画や小説など原作があるものからの映画化であったため、良くも悪くも優等生的な作りだった。
だけど本作はオリジナル脚本ということで、監督の色がそのまんま反映されており、こんなにも不思議なことを考えている人なんだ!と驚きながら、唯一無二の非常に作家性のある人だと気づいたため、ストーリーとしてはそこまで好きになれなかったけど、酒井麻衣監督のことはまた一層好きになった。
頼りすぎている感じは否めないけど、この2人にしか出せない魅力と役柄だったし、野良猫が野良犬を愛し、愛されたいと思うその感情はとっても可愛らしくて面白かった。もう1回この感じで映画撮って欲しい。と、思えるくらい好きな2人と好きな雰囲気。だからより、ハマれなかったことが悔しい。
NHKぽさと勘違い、気に入ったことは分かるけどさすがにやり過ぎかな...。凛さんの見せ方と、凛さんの見る光景の見せ方が下手...。別に興味無いんだけど、と思わせちゃったらおしまいだよね。
人の目を気にしない生き方。言い換えれば協調性がないということかもしれないけど、自分のしたいことを真っ直ぐ突き進んで行う姿は、やっぱりどんな形であれかっこいいと思うし憧れる。「リトル・ダンサー」「HAPPY END」に続き、心がとても豊かになった気がします。
すごく良かった伊藤万理華と中川大志ですけど、差し押さえて一際輝いていたのは藤井隆。いるだけで面白い人ってやっぱりずるい。