Emilia Perez

解説

2024年・第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。アドリアナ・パズ、ゾーイ・サルダナ、カーラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメスが女優賞を受賞。

2024年製作/130分/フランス
原題または英題:Emilia Perez

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映画レビュー

3.5分類不能の痛快エンターテイメント。

2024年10月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

メキシコの敏腕弁護士リタ(ゾーイ・サルダナ)は難事件をさばいて名声を獲得するが、その才能を利用しようと考えた麻薬カルテルに狙われてしまう。そして拉致され連れてゆかれたアジトで、組織の大物ボスと対面する。ごつい巨体に刺青だらけの身体、あらゆる悪事に手を染めてきた冷たい目。いったい何を要求されるのかと怯えるリタに、ボスは「性転換手術を受けて女として第二の人生を送りたい」と予想の斜め上をゆくことを言い出す。

そして組織の莫大な資金にささえられてリタは世界中をとびまわり、テルアビブでボスが望む手術を受けられるよう手配する。手術は成功し、ボスは「エミリア・ペレス」として生まれ変わり、妻(セレナ・ゴメス)と子供二人を棄てて新たな土地で行き始める。しかし数年たつと子供への思いが断ちきれず、かれらの「伯母」として共同生活を送りたいとまたリタに持ちかける…。

この予測不能の物語が、あざやかな踊りと耳に残るメキシカン・メロディー全開で進行する痛快活劇です。「法廷犯罪スリラーLGBTQコメディ風味のスペイン語ミュージカル」と、まあ気持ちよいくらい全部盛り。

カンヌでの批評はあんまり良くなかったようだけど、カメラも編集も美術も照明も、すべてがきわめて周到に設計されているし、音楽もよくできている。ミュージカル映画の難所である「日常の世界から歌・踊りの世界への移行」も上手に処理されている。ミュージカル映画に、それ以上何を望むのか?

そしてエンディングの余韻は、ロシアの長大な小説のように悲劇性と祝祭感をないまぜにした見事なもの。そう、これは存分に人を楽しませながら寂しさも消えていない、古典的な童話なのです。

ゾーイ・サルダナにこんな才能があったなんてねえ。彼女はアカデミー女優賞候補にあがるんじゃないかな?

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milou