愛に乱暴

劇場公開日:

愛に乱暴

解説

「悪人」「怒り」などで知られる作家・吉田修一の同名小説を江口のりこ主演で映画化し、愛のいびつな衝動と暴走を緊迫感あふれるタッチで描いたヒューマンサスペンス。

初瀬桃子は夫・真守とともに、真守の実家の敷地内に建つ離れで暮らしている。桃子は義母・照子から受ける微量のストレスや夫の無関心を振り払うかのように、石鹸教室の講師やセンスある装い、手の込んだ献立といった“丁寧な暮らし”に勤しんで日々を充実させていた。そんな中、近隣のゴミ捨て場で不審火が相次いだり、愛猫が行方不明になったり、匿名の人物による不気味な不倫アカウントが表示されるようになったりと、桃子の日常が少しずつ乱れはじめる。

徐々に平穏を失っていく主人公・桃子を江口が演じ、夫・真守を小泉孝太郎、真守の母・照子を風吹ジュン、真守の不倫相手・奈央を馬場ふみかが演じた。監督は「おじいちゃん、死んじゃったって。」「さんかく窓の外側は夜」の森ガキ侑大。

2024年製作/105分/G/日本
配給:東京テアトル
劇場公開日:2024年8月30日

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(C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024 「愛に乱暴」製作委員会

映画レビュー

3.5巡る因果に走りだす狂気

2024年8月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 8件)
共感した! 57件)
ニコ

4.5小説と映画、それぞれに異なる魅力

2024年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

悲しい

原作は、2011年から12年にかけて新聞連載され13年に単行本化された吉田修一の同名長編小説。「おじいちゃん、死んじゃったって。」の森ガキ侑大監督と脚本・山﨑佐保子が再タッグで映画化した。この「愛に乱暴」をまず試写で鑑賞し、それから小説を読んだのだが、ストーリーと表現手法の両面で、小説と映画それぞれに異なる魅力を備えていることに感心させられる。

ストーリーに関して、340ページにも及ぶ原作を2時間弱にまとめるため登場人物と出来事の整理は当然ながら、映画版では主人公・桃子(江口のりこ)をより追い込んでいくエピソードがたたみかけるように続く(小説では実母などのわかりやすい支えがある)。大きな西瓜(桃子が腹に抱えた姿は妊婦のようにも見える)、義母から渡される大量の生魚などはヴィヴィッドなイメージを伴う映画オリジナルの小道具だ。桃子が購入するチェーンソーが、原作の電動式からエンジン駆動式に変更されたのも、爆音のインパクトを活かすための改変だろう。

小説から割愛された部分にももちろん面白い要素はたくさんあって、特筆したいのは離れの家にまつわる歴史。小説と映画のどちらでも非嫡出子(婚外子)が重要なポイントになっているが、小説では初瀬家の男に受け継がれた因縁として描かれ、それが離れの存在や、床下をめぐるエピソード、さらに不審火騒動にもつながってくる。未読の方のためここまでにとどめておくが、この物語のキャラクターたちをもっと知りたいと感じたなら、ぜひ小説も手に取っていただきたい。それぞれに異なる魅力があるという点に、きっと共感してもらえると思う。

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共感した! 15件)
高森 郁哉

4.0人間、そして夫婦というミステリーが際立つ

2024年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

この映画は初めから観客に包み隠さず全てを見せている様で、そうとは言えないところがあるので油断がならない。夫婦間に漂う不穏な空気。双方ともそれを幾らか感じているのだろうが、夫は話し合うどころか、妻と面と向かって言葉を交わすことも億劫と言わんばかり。その原因は何なのか。我々は二人を覆うモヤモヤの実態を突き止めることができないまま、幾重にも柱と梁が入り組んだ家庭生活という幻想を見つめ続ける。主演の江口のりこはこの曖昧で不可解な空気の中を、張り詰めた糸を途切れさせることなく泳ぐのが抜群にうまい。そして徐々に感情を露わにする領域でもなお、切実さと共になんとも言えないおかしみを醸し出す。対する夫役の小泉孝太郎の、外見からして従来のイメージとは全く違う、誰も見たことのない異様な存在感は何なのだろう。決して派手さはない作品ではあるが、そうであるがゆえに物語を貫く観察眼、ひいては人間という謎が力強く際立つ。

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共感した! 12件)
牛津厚信

4.5せつない

2024年10月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

桃子が相手を想い、大切に接しようとしても、舐められてぞんざいに扱われていく、、可哀想で、せつなくて、、自分に重ね合わせて涙が出ました。
そうしてどんどんあることに執着していく姿に共感してしまいました。幸せになってね、桃子。

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ささき