箱男

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劇場公開日:

箱男

解説

作家・安部公房が1973年に発表した同名長編小説を、「狂い咲きサンダーロード」「蜜のあわれ」などの鬼才・石井岳龍監督が映画化。

ダンボールを頭からすっぽりと被った姿で都市をさまよい、覗き窓から世界を覗いて妄想をノートに記述する「箱男」。それは人間が望む最終形態であり、すべてから完全に解き放たれた存在だった。カメラマンの“わたし”は街で見かけた箱男に心を奪われ、自らもダンボールを被って箱男として生きることに。そんな彼に、数々の試練と危険が襲いかかる。

1997年に映画の製作が決定したもののクランクイン直前に撮影が頓挫してしまった幻の企画が、27年の時を経て実現に至った。27年前の企画でも主演予定だった永瀬正敏が“わたし”を演じ、“わたし”をつけ狙って箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ医者役で浅野忠信、箱男を完全犯罪に利用しようともくろむ軍医役で佐藤浩市、“わたし”を誘惑する謎の女・葉子役で白本彩奈が共演。

2024年製作/120分/PG12/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:2024年8月23日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

監督
原作
安部公房
脚本
いながききよたか
石井岳龍
プロデューサー
小西啓介
関友彦
ラインプロデューサー
稲垣隆治
撮影
浦田秀穂
照明
常谷良男
録音
古谷正志
美術
林田裕至
スタイリスト
小笠原吉恵
キャラクタースーパーバイザー(ヘアメイク)
橋本申二
VFX
井上浩正
山田彩友美
カラリスト
カロル・カチョロフスキ
音響効果
勝俣まさとし
編集
長瀬万里
音楽
勝本道哲
助監替
佐藤匡太郎
アシスタントプロデューサー
安斎みき子
制作担当
飯塚香織
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(C)2024 The Box Man Film Partners

映画レビュー

4.0《わたし》について

2024年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 2件)
共感した! 8件)
まぬままおま

3.5時を超えて人間を映し続ける前衛的な物語

2024年8月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 5件)
共感した! 27件)
ニコ

3.5どっぷり浸って、感じたい怪作

2024年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

段ボール箱に小さく空いた長方形の隙間。そこから世間を臨む二つの瞳。我々は果たしてこの不気味な物体を見つめている側なのか、それともじっと見られている側なのか---。安部公房が73年に著した奇妙すぎる小説が、50年経つ今なお、攻めの姿勢を忘れぬ衝撃作として存立し続けているのは驚きだ。この映画の制作過程では27年前にドイツでの撮影休止という予期せぬトラブルが生じたとか。その苦難を乗り越えていざ完成体に達した本作は、リアルな泥臭さと、観る者を煙に巻くトリッキーさ、差し込まれる緩急、そして我々が石井岳龍という名を聞くときにいつも体にほとばしる電流を併せ持った文字通りの怪作となった。永瀬と浅野による「ELECTRIC DRAGON」が進化を遂げたかのような宿命の対峙もシュールで味わい深い。観客を選ぶ作品ではあろうが、文学から受け継がれし魂を感覚的に昇華させた映像版として、どっぷり浸って感じたい一作だ。

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共感した! 6件)
牛津厚信

4.5安部公房の半世紀前の前衛小説を、石井岳龍監督が合理的に再構築しモダナイズした渾身の娯楽作

2024年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

興奮

知的

安部公房の1973年の小説「箱男」は代表作の1つとして知られるが、恥ずかしながら未読だったので本編鑑賞前にあわてて読んだ。登場人物は多くないにもかかわらず、視点が入れ替わったり、モノローグと手記が混在したり、誰による語りなのかが曖昧になっていったりと、一筋縄ではいかない相当に難解な小説だ。ノンリニアの語りというか、するすると読み進むことを敢えて拒み、読者に都度立ち止まって考えることを求めるかのような仕掛けとでも言えるだろうか。

さて石井岳龍監督は、作家本人から映画化の許諾を得て、1997年に日独合作としての製作決定を経てハンブルクで巨大セットを組むも、資金上の問題でクランクイン前日に中止に追い込まれたという。そこからさらに四半世紀を経て企画が再始動、現代日本の都会に舞台を移し、以前の企画でメインキャストだった永瀬正敏と佐藤浩市、さらに浅野忠信も加わり、ついに完成させた執念の作品だ。

「『箱男』は娯楽にしてほしい」との原作者の意向をくみ、永瀬が段ボール箱をかぶって扮する箱男がにわかに走り出したり、浅野が演じるニセ医者との格闘があったりと、共同脚本も担った石井監督はアクションシーンでストーリーを牽引するエンタテインメントへと昇華させた。原作小説が現代のネット社会を予見したとも評されるアイデンティティの喪失という問題提起を、映画ではアクションの主体としての身体性を強調することによって単にわかりやすくするだけでなく、失われゆくアイデンティティを取り戻す可能性と希望をも提示しているように感じた。

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高森 郁哉