RHEINGOLD ラインゴールド

劇場公開日:

RHEINGOLD ラインゴールド

解説

「女は二度決断する」「ソウル・キッチン」などで知られるドイツのファティ・アキン監督が、実在するラッパーで音楽プロデューサーのカターの破天荒な半生を描き、本国ドイツで大ヒットを記録した伝記映画。

クルド系音楽家のもとに生まれたジワ・ハジャビは、亡命先のパリで音楽教育を受けた後にドイツのボンに移り住むが、両親の離婚により貧しい生活を余儀なくされる。ある日、街の不良たちに叩きのめされた彼は復讐のためにボクシングを覚え、「カター(危険なヤツ)」となってドラッグの売人や用心棒をするように。さらに金塊強盗にまで手を染めて指名手配された彼は、逃亡先のシリアで拘束されてドイツに送還され、刑務所内でレコーディングした曲でデビューを果たす。

「悪魔は私の大親友」のエミリオ・サクラヤが主演を務め、カター本人がセリフ監修を担当。

2022年製作/140分/PG12/ドイツ・オランダ・モロッコ・メキシコ合作
原題または英題:Rheingold
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2024年3月29日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10
  • 画像11

(C)2022 bombero international GmbH & Co. KG / Palosanto Films Srl / Rai Cinema S.p.A / Lemming Film / corazon international GmbH & Co. KG / Warner Bros. Entertainment GmbH フォト(C) 2022 Bombero Int. _ Warner Bros. Ent. _ Gordon Timpen

映画レビュー

4.0無法者とヒップホップの危うい親和性

2024年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

興奮

本作については当サイトの新作評論枠に寄稿したので、ここでは補足的なトピックを書き残しておきたい。

この伝記映画で描かれるカター(本名ジワ・ハジャビ)は、日本では知名度が低かったものの、本国ドイツでは知らない人がいないスーパースターだそうで、ラッパーとしての活動にとどまらず、他のアーティストのプロデュースのほか、ファッションブランドや飲食店などを経営する実業家としても成功しているようだ。そうしたカターの絶大な知名度もあってか、ドイツ国内で興行成績1000万ドル超え、ファティ・アキン監督の長編映画として最大のヒットを記録。次いで2番目の自国ヒット作「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ」(2019)が約45万ドルなので、文字通り桁違いの成功を収めたことになる。

本作は2015年に出版されたカターの自伝に基づくが、劇的効果を狙って脚色した部分も当然ある。たとえば映画では、金塊強盗の罪で収監された刑務所でひそかに録音機材を入手し、そこでレコーディングしたアルバムでデビューした流れで描かれる。だが実際には、カターの最初のアルバムは2008年にリリースされ、金塊輸送トラックを襲った事件は2009年。囚人番号を題名にした「415」はセカンドアルバムだった。

EU加盟国の中でも移民の受け入れに積極的なドイツでさえ、少数民族が直面する差別や格差が根強く、だからこそカターたちクルド系のラッパーたちが結束して起こしたヒップホップムーブメントが、同国におけるメインストリームへの対抗文化として支持された側面もあるのだろう。それはヒップホップの本場アメリカで1980年代後半から90年代に黒人たちによるギャングスタ・ラップが興隆した社会背景に通じるものがありそうだ。

ギャングスタ・ラップと犯罪に関連する映画としては、トゥパックとノートリアス・B.I.G.が殺害された未解決事件を題材にした「L.A.コールドケース」(2018年米公開)が思い出されるが、同作の製作後に新展開があった。元ギャングリーダーのドゥエイン・デイビスが2018年にトゥパック殺害事件への関与を告白、2023年9月に殺人容疑で逮捕、起訴されたのだ。裁判は今年6月に予定されており、まだ刑は確定していない。

カターと仲間たちが起こした強盗事件では、奪われた金塊の相当部分が行方不明になったままだという。評論でも触れたように、映画では金塊が隠されていると解釈することもできるファンタジックなラストシーンが描かれる。こちらの事件もいつの日か、あっと驚く新展開があれば面白いのだが。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
高森 郁哉

4.0軽快、大胆、破天荒に走り抜く

2024年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ドイツの名匠ファティ・アキンの映画といえば、『そして私たちは愛に帰る』のように静謐な映像の中で切ない心情を謳うこともあれば、『愛より強く』のように凄まじく振り切れたパンキッシュさで魂を燃え上がらせるものもある。ならば新作『ラインゴールド』はどうかというと、これまた主人公の人生を軽快、大胆、破天荒に走り抜いたノンストップな痛快劇だ。原作はラッパーの自伝だというから、本国ドイツの観客はこの大河の流れ着く先をある程度知った上で臨んでいるのだろうが、何も知らない自分としては、国や善悪の境界線をいくつも越えていく運命のうねりにことごとく翻弄された。ラッパー映画といえば50セント、エミネム、N.W.Aを描いた米作品が思い出されるけれど、そこはアキン。中東から西欧を股にかけた国際色豊かな語り口を持ちつつ、ここぞというところでドイツならではの落とし所をしっかり用意しているあたり、なんとも心憎い限りである。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
牛津厚信

musician の映画ならば

2024年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ドラッグ・ディーラーや金塊強盗などの犯罪を繰り返しながらもラッパーとして名を成し、ドイツでは知らぬ人が居ないらしいカタ-の実話に基づく物語です。そんな人が居る事を僕は今回初めて知りました。

 ラッパーとしての彼を知る人は「彼はこんな人生を送って来たのか」と興味を持てるのでしょうが、音楽が出て来るのは物語の始めと終わりだけで、中盤はほとんどが単なる犯罪映画でした。そんな暮らしの間も彼の中で蠢めいていた音楽衝動を描いていてこそ物語が成立するのではないかなぁ。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
La Strada

3.5波瀾万丈、現在進行形の人生

2024年6月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

萌える

クルド系ドイツ人ラッパー・カターの破天荒な半生を描いた伝記映画。
イランでホメイニーによるイラン革命、そしてクルド人弾圧が続き、クルド系音楽家の父のもとに生まれたジワ・ハジャビは、イラク経由でパリに亡命し音楽教育を受けた後にドイツのボンに移ったが、両親の離婚により貧しい生活となった。ある日、街の不良たちに殴り倒された彼は復讐のためにボクシングジムで喧嘩の方法を習い、カター(危険なヤツ)となって報復後、ドラッグの売人や売春宿の用心棒をするようになった。さらに、水溶性コカインの運搬で瓶を割ってしまい、多額の借金を作り、金塊強盗に手を出し、国際指名手配となり、逃亡先のシリアで拘束され、ドイツに送還され、裁判の結果8年の実刑判決を受けた。ドイツの刑務所に収監されてる時、刑務所内で録音した曲でCDデビューを果たし・・・という、カターの壮絶な半生を描いた話。

こんな人生を送ると大体裏世界から抜けれなくなるんだが、そんなハチャメチャな半生をラップにして刑務所内で録音し、CDで出すという逆転の発想で成功したカターことジワ・ハシャビは凄いと思った。
やられたらやり返す、その不屈の精神は素晴らしかった。
ラストの川底の金塊とトップレスの人魚たちはなんだったんだろう?

コメントする (0件)
共感した! 6件)
りあの