同感 時が交差する初恋 : 映画評論・批評
2024年2月13日更新
2024年2月9日よりシネマート新宿ほかにてロードショー
時を超えた奇跡のような境遇の男女のときめきと痛みが心を打ち記憶を呼び覚ます
過去と未来、時を超えた出会いを描く映画やテレビドラマはこれまで数多く作られているが、「同感 時が交差する初恋」は韓国ラブストーリーの金字塔と言われる作品を時代設定を新たにしてリメイクしたもの。オリジナルは、ユ・ジテとキム・ハヌルの主演で2000年に製作された「リメンバー・ミー」。無線機を介して21年の時を隔てて知り合った男女が心を通わせていく姿を描き、同年の韓国で観客動員数第4位のヒットを記録したファンタジックラブストーリーだ。
「同感 時が交差する初恋」の舞台は1999年と2022年。1999年に生きる男子大学生ヨンと、2022年に同じ大学に通う女子大生ムニが、1台の古い無線機を通じて交信し、時代を超えて心を通わせていく。ヨンを演じるのは、子役時代から20年近くのキャリアを持ち、ドラマ「怪物」など様々なジャンルの作品で活躍するヨ・ジング。ムニを演じるのは、「賢い医師生活」「今、私たちの学校は...」などの大ヒットドラマで知られるチョ・イヒョン。他にナ・イヌ、キム・へユン、ペ・イニョクという若手俳優たちが共演している。
オリジナルから約20年の時を経て製作された本作では、99年の街並みが再現されているほか、有線イヤホン、ポケベル、プリクラ、公衆電話など90年代の懐かしいレトロなアイテムやファッションが続々と登場。劇中に流れる音楽も90年代後半から2000年の曲をリメイクし、N.Flyingやユンナ、Chuu(チュウ)、K-POPガールズグループVIVIZらの楽曲が物語を彩る。22年とのカルチャーギャップも見どころとなっており、幅広い世代が楽しめる作品となっている。メガホンをとったのは「告白」の女性監督ソ・ウニョン。
「リメンバー・ミー」は、2001年に日本でも吹石一恵と斎藤工の主演、山川直人監督のメガホンで「時の香り リメンバー・ミー」としてリメイクされており、時を超えたラブストーリーはいつの時代も人々の夢や願望をかき立て、記憶を呼び覚ますのかもしれない。時を超えた男女の交流と言えば、韓国で大ヒットを記録した「イルマーレ」(2000)もある。こちらは海辺に建つ家の郵便受けを通して時を超えたラブストーリーが描かれ、「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンと「イカゲーム」のイ・ジョンジェが主演した。そして2006年にはキアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックの共演でハリウッドリメイクされている。
生きる世界=時代が違うのに、なぜか心が通じ合う男女。純粋な絆にピュアな恋心が絡み合い、そんな奇跡のような境遇の男女のときめきと痛みが人々の心を打つ。現在の自分の恋人や人生の伴侶が、もしかしたら過去や未来と運命づけられた人なのかもしれない、自分の人生が過去や未来を知る誰かの支え(愛)によって成り立っているかもしれないと想像し、オリジナルとリメイクをあわせて見れば、より深く味わうことができるだろう。映画はそんな可能性や記憶を映像化して見せてくれる素敵な装置なのだ。
(和田隆)