サン・セバスチャンへ、ようこそ : インタビュー
「ロマンスは人生に喜びをもたらすもの」ウッディ・アレンが恋愛、結婚を描き続ける理由 正しい人生の選択とは?
ウッディ・アレン監督作「サン・セバスチャンへ、ようこそ」が公開された。
陽光溢れるスペイン・バスク地方のリゾート地、サン・セバスチャンの映画祭が舞台。小説執筆に取り組むニューヨーカーのモートと、映画業界のプレスエージェントの妻スー。モートは、妻とフランス人著名監督との浮気を疑い、ストレス過多で心療内科を受診、魅力的な医師ジョーに恋してしまう……ベルイマンの傑作群や、「8 1/2」「勝手にしやがれ」「突然炎のごとく」など往年のヨーロッパ映画へのオマージュをふんだんにちりばめながら、大人たちの恋を描くロマンティックコメディだ。
長年のキャリアにわたり、恋愛や結婚生活をテーマに描き続けるアレン監督が映画.comのメールインタビューに応じた。
――今作でも恋愛のままならさ、結婚生活の難しさ、偶然がもたらす運命などを取り上げています。日本では小津安二郎が家族を描き続けたように、(現在88歳という年齢は気になさらないとは思いますが…)アレン監督が長年恋愛を題材にする理由を教えてください。
ドラマの重要な部分を占めるものですね。結局、映画館に行って何をみんな見るかというと人間関係、男と女の恋愛関係がうまくいくもの、いかないもの、陰謀、野望、殺人、ずっとテーマとしてもう何百何千年もこれから先にも取り上げられるものです。
ですからギリシャ悲劇のように、それらはとてもドラマ的な効果があるわけです。ロマンスは人生に喜びをもたらすものです。ロマンティックな冒険は特に。うまくいけば、男と女における直感的な喜びに直結するし、複雑になると痛みも悲しみも伴います。
――小説を書く主人公も、あなたの作品のキャラクターとしておなじみで、アレン監督作品と文学は切っても切り離せないものですが、これまでご自身で映画化しようと考えた文学作品はありましたか?
私はそういったタイプの映画作家ではないんです。優れた映画作家でそれに長けた方はいますよね。私はやったことはありません。私はいつでも自分のストーリーを紡ぎたい、映像化したいと思っています。私自身のストーリーというのを自分で考えて、発案する。それが、私が映画を作る理由でもありますね。
――以前のように米国のスター俳優を起用しての製作が難しくなっているようですが、スペインで撮った今作、パリで撮った最新作「Coup de chance」とコンスタントに新作発表を続けています。近年の製作スタイルについては満足されていますか?
アメリカでのいい企画で、いい俳優であれば撮りたいと思います。キャスティングの問題というよりも、海外で撮りたいんです。それは、経験としてとても素敵だからです。既にニューヨークでは20数回も撮っています。ほかのアメリカの街でニューヨークより楽しく撮れるのであればそれもあり得ると思いますが、ヨーロッパに行くのが楽しいのです。
「Coup de chance」に関してはアメリカでは撮れなかったと思います。当初はアメリカの俳優でパリで撮る準備をしていたのですが、パリにいるのですから、英語ではなく全編フランス語で撮ったらどうかと閃いたのです。「マッチポイント」で初めてアメリカ以外の国で撮り始めましたが、ニューヨークとは全く違う雰囲気で本当にワクワクします。もちろん、今後もアイデアがニューヨークにぴったりならばニューヨークで撮りますよ。
――正しい人生の選択、も今作のテーマでもありました。監督ご自身は、長年のキャリアを振り返って、良い選択ができてきたとお考えですか?
皆さんと同じぐらい、いい選択だった時と悪い時ともちろんあります。人生というのは、毎日何らかの選択を1分ごとにしているようなものですよね。私は本当についていると思います。十分いい選択をしてきたので、いい人生とキャリアを築いてくることができました。素晴らしい家族もいます。もちろん悪い選択もしました、ただそれでも運が良かった。私にそれほど打撃を与えていないからです。ですので、幸運な一般的な決断を下す人間だと言えると思います。
――今回の舞台で、海外(スペイン)の映画祭という場所を選ばれました。カンヌなど、アレン監督も海外映画祭には参加されていますが、思い出に残ったエピソードを教えてください。
映画のためには素晴らしいですよね。ただ個人的には、特に映画祭というものは飛行機から降りた途端に、空港からすぐに会場に向かい、街を見たりすることなどもなく、1日中、次から次へと取材が入っています。ただ家族が同行した場合は、とても街を楽しんでいますね。ですから、それが私にとっての映画祭という感じですね。
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