青春18×2 君へと続く道のレビュー・感想・評価
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台南の解放感
台南では街中でもドローン撮影できるんだなと羨ましい気持ちになった。それは枝葉の部分ではあるんだけど、この映画の台湾パートのどこか開放的な雰囲気にも通じるものかなとも思う。
カラオケ屋でのアルバイトを通じて主人公の二人は出会う。突然やってきた日本人の女性に青年は惹かれていく。しかし、その恋は成就せず時は流れて、青年はゲーム会社で成功するものの、会社を追い出されてしまう。失意の中、男はかつての女性の思い出を頼りに日本を旅する。現代の旅とかつての思い出が交互に描かれ、思い出と一緒に旅をするその構成は「おもひでぽろぽろ」のようでもある。
岩井俊二の映画『Love Letter』が作中で大きくフィーチャーされているのが、東アジア地域における岩井俊二の影響力の大きさを物語る。アジアの文化的差異と近さの両方が描かれている点も良いし、日本と台湾、ともに異国で暮らす人々が描かれている点も良い。日本と台湾の国際共同製作で、アジア全域でヒットしているようだし、邦画実写の新たなやり方としても注目の一作だと思う。
ラブストーリーを超えた、瑞々しく崇高な人生ドラマ
台湾と日本、現代と18年前、そして台湾人のジミーと日本人のアミという軸を交差させながら紡がれるこのラブストーリーは、観客を無理に泣かせようとする居心地の悪さは微塵もなく、全てが穏やかでノスタルジックで温かい。その上で、キャラクターが地にしっかりと両足で立ち、試行錯誤しながら懸命に生を刻みゆく姿を、思いを込めて丹念に描き出す。本作がシュー・グァンハンと清原果耶という言葉の壁を超えた光の筋のごとき二人によって、ナチュラルに成立しているのは言うまでもない。また、出会いやほのかな恋愛模様を短い感情のタームで描くのではなく、将来的にどのような記憶となって自分を潤し、なおかつ奮い立たせ続けるのかという人間ドラマの域にまで掘り下げていく展開に胸打たれる。人生は旅のようなもの。それが際立つ列車の横移動と、光がどこまでも空高く舞い上がる縦移動。えも言われぬ美しさと崇高さが観賞後もずっと軌跡を残す秀作である。
岩井俊二的抒情と台湾恋愛映画らしい甘酸っぱさの好配合
個人旅行で二度訪れた台湾が大好きだ。本作の台湾パートで舞台になった台南に行ったときは、駅の近くでスマホのマップを見ながらきょろきょろしていたら穏やかな青年が話しかけてきて、目指していた旧跡や夜市を案内してくれた(最初は親切なふりをして後でガイド料を要求してくるパターンかと警戒したが、純粋に善意の若者だった。疑ったことを恥じつつ、夜市の食事でささやかなお礼をした)。民泊のホストのおばちゃんが、近所の食堂で朝食を御馳走してくれ、それから原付バイクの二人乗りで駅まで送ってくれたこともあった。「青春18×2 君へと続く道」は18歳の台湾男子ジミー(シュー・グァンハン)と日本人旅行者のアミ(清原果耶)が出会う物語だが、そんな良い思い出もあってどちらかというとアミのほうにより強く感情移入して観た気がする。
台湾人作家による紀行エッセイ「青春18×2 日本漫車流浪記」を映画化する企画がまず台湾で立ち上がり、台湾人プロデューサーのロジャー・ファンから藤井道人監督に声がかかり、日本側からの出資も集まって日台合作の本作が実現したという。18歳のジミーのバイト先のカラオケボックス店でアミが住み込みで働くようになるパートは、2人が訪れる映画館でポスターが貼ってあったグイ・ルンメイのデビュー作「藍色夏恋」に通じる甘酸っぱい青春恋愛物。そしてそこで2人が観た「Love Letter」の監督である岩井俊二の代表的な諸作に共通する抒情性が、36歳のジミーが旅する日本パートで優勢になる。これらの2つの魅力がうまく配合されて相乗効果が生まれており、台湾と日本の合作映画の幸福な成功例と評価できるだろう。
清原果耶は同世代の女優の中で抜きん出た演技力があり、3度目のタッグとなる藤井監督も彼女の魅力を的確に引き出している。もう1人の主演シュー・グァンハンに比べると出番が少ないのが物足りないが、ストーリーの都合上しかたないか。清原の今年2本目の出演作「碁盤斬り」がイタリアの映画祭で批評家賞を受賞したというニュースも最近あった。彼女の海外での認知度が高まり、外国映画にも起用されるような国際派女優としてさらに飛躍してくれることを大いに期待する。
これまで日台合作などの映画は多くあれど、ここまで機能した作品は初めてか。これは「余命10年」の藤井道人監督の手腕によるものか?
これまで日台合作の映画は多く製作されていましたが、正直なところそれほど効果を感じなかったり、出来にも課題がありました。
ところが本作を見て驚いたのは、極めて自然かつバランス良く、合作映画の相乗効果を上げていたのです!
私の感覚では、何も「日台合作映画」に限らず、全ての合作映画でベスト級の相乗効果を発揮できていると思います。
これは、台湾の描写から始まり、日本の描写もバランスが良く、主人公の台湾人ジミーの描写、日本人のアミの描写など、無理なく自然に必然性を持ちながら構築できているからでしょう。
本作のメガホンをとったのは藤井道人監督。
文句なく名作だった「余命10年」を撮れた監督なので、やはりポテンシャルが高いのでしょう。
本作も名作と言っても問題はないでしょう。
実際に細かく分析しても、特に無駄なシーンも無ければ、約2時間の尺も問題ありません。
ただ、「余命10年」と比べてしまうと、「大きく心を揺さぶるパワー」のようなものが、やや欠けているのかもしれません。
展開等も含め、本来であれば、もっと「より心を掴むようなシーン」になっていてもよかったと感じるからです。
そういう意味では「楽曲などの使い方の工夫で、もっと高いクオリティーの作品になった可能性」は否めず、強いて言えばそこが減点要素でしょうか。
とは言え、一般の映画としては十分なクオリティーの作品で、見て損はない作品だと思います。
あのバイト先、仲良すぎ(笑)
主演2人が本当に素敵である。
台湾と日本の風景の切り取り方が記憶に残る。
「一人旅」についての良い台詞もある。
『スラムダンク』『Love Letter』と……ある年代以上をくすぐってくる。
いやほんとに主演の2人(シュー・グァンハンと清原果耶)がイイ。
個人的には36歳パートのシュー・グァンハンをもっと観たい。
眩しい青春にサヨナラを
忘れられない初恋の人を思い出し日本を旅する現在と、18年前の出会いから過ごした日々、それぞれを交互に映し出す本作。日本と台湾、それぞれの風景や暮らし、人との交流がとても優しく美しく、とても素敵でした。
旅は一期一会、二度と会うことはなくても、ずっと心に留まる。台湾でのバイトも、日本での道中も、人生の中ではとても短い時間だけれど、かけがえのない思い出になるんだなぁ。
眩しい青春にサヨナラを告げ、これからを生きるための旅。優しくて愛おしくて切なくて、ほろ苦い。
とっても素敵な作品でした。
短くコメント
藤井道人監督作が好きな人なら
予告編など見ないで鑑賞して、
鑑賞後◯◯◯◯のYouTube動画があるので、そちらもお勧め
「さけねこの映画チャンネル」とか
主演のシュー・グァンハンは知らなかった。
そういえば藤井道人と清原果耶は三度目のタッグ。
横浜流星との三度目のタッグの『正体』も2024年11月29日に公開予定。
圧倒的映像美
清原伽耶ちゃんをここまで美しく、綺麗に映し出した藤井監督にあっぱれを!
台湾の情緒あふれる世界観を存分に映し出し
かつ、各キャストが完全に良いエッセンスを加えている
・黒木瞳さん
・黒木華さん
・松重豊さん
さすがすぎる
時代を行ったり来たりする構成も
なんの違和感もなく、没入できる
冒頭だけ、少しまったりしすぎるのが、唯一気になったところかな
わからない
男目線の物語には、しんどいほどの解像度が担保されていた。
単純に異国の不埒な彼女に一目惚れし、期待させられて、手を離されるあの感覚。すごく彼女は魅力的に映った。
綺麗であったし、思わせぶりな態度から実りそうで実らない恋のもどかしさを追体験できた。
憧れからの恋、成功と失敗、旅、匂いと追憶、再生。
一貫性の中で男の心情変化が細やかに描かれていた。
一方で彼女の行動はよくわからない。
本当に彼女は男へ恋愛感情を抱いていたのか?
旅の中の一時的な遊びではなかったのか?
彼女目線からの恋に関する情報、経緯説明があまりにも不足していたように感じる。
あぁいう外交的でモテる女性が何の前触れもなく、旅で出会っただけの男性に好意を持つものなのか?
彼女目線の描写であるように見せかけているだけで、それはただの男の願望であるように思えてしまった。
小悪魔的な態度、余裕を滲ませたからかいの笑顔。彼女の真の想いが物語からは全く見えてこない。目に映るどれもが嘘に思えてしまう。
彼女へ感情移入ができなかったのでこの点数。
5.0 人生観を変えられる名作、宝物のような映画
4.5 何十回と見返したい傑作、何年経っても思い出せるほどの感銘を受けた映画
4.0 複数回見返したい秀作、自信を持ってお勧めできる映画
3.5 見返すほどではないがとても面白い良作、観る価値がある映画
3.0 所々ツッコミどころはあるが面白い佳作、観ても時間の無駄にはならない映画
2.5 全体として面白くはないが最後まで観れる凡作、暇であれば観る価値のある映画
2.0 頑張ってなんとか最後まで観れる駄作、観ても時間の無駄となる映画
1.5 寝てしまうほどつまらない愚作、作り手を軽蔑する映画
1.0 論外、話すに値しない映画
夢中
なんて言えばいいんだろ、
バスケの夢を失って、夢なんて持つもんじゃないと思ってるジミーのもとに、
旅(自分を確かめる)を続けることが夢のアミが現れて、夢を叶えてから会おうと約束するんだけど、旅を続けるが夢だと、生きてれば、叶える(達成)がずっと続くことになりそうですよね。
そしてジミーは、ゲームの夢をまた持つのだけど、アミの死で夢が無くなってしまう、というかその文字の通り、仕事に夢中になってしまうのですよ。
ジミーはずっと夢の中にいるような感覚だと思うんですよね、そして、日本へ旅に出たことによって、自分を確かめる事(旅)ができて、アミと同じ夢を達成したことになり、
夢中から解放されたジミーが、アミの夢を自分の中で生きていく(達成した)から、最後また2人が出会えたんだと考えてます。
テレビドラマのような感じでもっと長く見たかったですね、役者さんが脚本に踊らされてるように都合のいいストーリーで進んで行くので、感情移入できませんでした!
岩井俊二ガチ勢には
個人評価:3.0
ラブレターを引用している部分も多く、タイトル通り青春がテーマなのだろうと思います。
しかしながら、岩井俊二黄金期を見てきた世代には残念ながら響かず、10代向けに作られた作風で少し残念。
お元気ですか?
一期一会。
人との出会いは、本当に不思議だ。
あのとき、あの人と出会っていなければ、という人が誰しもいるだろう。自分の歩んできた人生を振り返ると、影響を受けた人と影響を受けた言葉が思い浮かぶ。
この映画は、「初恋」という人生一度の体験を軸に展開する。私は「初恋」がいつのどの恋だったか記憶がないくらいあっさりしたものだったので、この映画の主人公ジミー(シュー・グァンハン)のような初恋がうらやましくもある。
この作品は、青春ラブストーリーであり、ロードムービーであるが、私は、劇中でジミーがアミ(清原果耶)を誘って観る映画「Love Letter」のことをずっと思い出しながら観ていた。
「Love Letter」と違い、本作では、前半で2人が台南で過ごした日々を、まさに青春!という瑞々しさで描く。こんな初恋があったらなと思いながら和やかに話は進む。
そして後半からは、アミの視点も入れながら、2人それぞれの心情を解き明かすようにストーリーが進む。
ジミーの日本の旅で台湾で2人で観た映画の世界を見せてくれた日本の若者。故郷を思い出せてくれた松本の居酒屋店主。新潟でランタンを見せてくれたゲームファン(黒木華)。アミの実家へ導いてくれた酒屋店主(松重豊)。そしてアミの母(黒木瞳)。
アミを暖かく迎え入れた台湾の人々。ジミーを優しく導いた日本の人々。一期一会の出会いが国をまたいで2人を引き合わせる。この暖かさもこの作品に一環して流れる空気だ。
ストーリーは違えど、やはり、この作品は「Love Letter」の世界観やメッセージを強く意識した作品だと思う。届くかどうかわからない手紙のやりとり、届かないことが分かっていても書いてしまう最後の手紙、白銀の世界、恋人の死を受け入れて前に進む・・・
「お元気ですか?」この言葉に込められた意味。18年前、確かにあった2人の物語と、心の絆と、もう会えないという深い喪失感。そしてそれを昇華して前に進むジミーの決意。色々なものが込められている。
暖かく、切なく、そして旅情を誘う大人向けの名作。
清原果耶の存在感に幸あれ映画NO1
見る前は青春18切符の話かなと思った。青春18切符で広島まで行く話かなと思ったら違った
でも旅の話だった
今年見た恋愛映画では「猟奇的な彼女」に続いて第二位!!!おめでとう!!!
もう文句のつけようがないくらい青春
僕が付け入る隙が全くない美男美女の青春すぎて、ストーリーよりも虚しさで泣いた
泣いてる人多かったけどみんな虚しさで泣いてんだよね?
まずジミーがかっこいいんだこりゃ
18歳にも36歳にも見えるってそんなんアリかよ。ボニーやんけ
僕なんて今21だけどもう18歳には見えねえからな、泣かせろ
やたらオレンジのTシャツ着てたからジャイアンツファンかな?と思ったら台湾では青春を表現する色なんだってね
そんで清原果耶。顔が一番好きな俳優
彼女の持つ完膚なきまでのヒロインオーラに幸あれ
ロマンスの展開としては王道だけど、過去と現在や台湾と日本を行ったり来たりしていて、どちらも景色が綺麗で良かった
台南行ってみたいな、原付の後ろに女の子乗せたいな
何より松本と長岡が映ってて嬉しすぎる!
なんだ〜ジミー来てたんだ。ネカフェじゃなくて全然僕の実家泊めてあげたのに!
清原果耶がカラオケ働く時に、ビザ大丈夫かな?ってのと絵描いてばっかじゃん!って思った
ギュッと手を握って
大人になってから十代を振り返る青春物語に僕はとても弱く、その設定だけでまず合格点が付きます。それが淡いラブストーリーであったりしたら「優」で合格です。しかし、本作はそんな下駄をはかせる必要など全くありませんでした。台湾旅行中の女性と、大学入学を控えてカラオケ店でアルバイトの青年との恋ともよべぬほどの物語を36歳になった男が振り返ります。
王道とも言えるラブストーリーなのに、書くべき人が書き演じるべき人が演じ撮るべき人が撮れば、定番のタイムリープがなくとも、お馴染みの幼い頃のトラウマなどなくとも、チューのシーンすらなくとも、こんなにも心にしみてキュンキュンするんだなと唸ってしまいました。そして、映画の歴史が続く限り、ラブストーリーは決してなくならないと確信したのでした。
上映中、隣席に居た妻の手をギュッと握って、本作を真似て「僕と妻のおバカな旅もずっと続きます様に」と祈ってしまいました。
注)上の記述には一ヶ所ウソが混じっています。さて、どこでしょう?
日本ぶらり鈍行旅
ジミー役グレッグシュー/許光漢の起用は18歳と36歳ができるからだそうだ。w
映画が緊張をもたらす理由はたったひとつでアミ(清原果耶)がしにそうな病気を隠匿していること。
そのふたつで成立している映画だが岩井俊二のloveletterを表敬しつつノスタルジー&ロマンチックな絵を並べて尺をかせぐ。台詞に成熟がなく、長くだるい映画だった。
『『青春18×2 君へと続く道』は、賴吉米 (ジミー・ライ) が「藍狐」名義で書いた旅行エッセイ『青春18×2日本慢車流浪記』を基にしています。台湾人のゲーム開発者である賴吉米は、日本人バックパッカーとの恋愛を懐かしむため、青春18きっぷを使って日本縦断の旅に出ました。 2014年に台湾のブログ「Backpackers」で公開された旅行記が話題になると賴吉米には映画化権を購入したいという映画会社からのアプローチがありました。』
(wikipedia、18×2 Beyond Youthful Daysより)
wikiを見るともっともらしい由縁と多難の製作行程のある映画だったが、じっさい視聴上はあざとくてうんざり。
ジミーの行く先々で都合よく道連れができてしまう安易さに興醒め。
松本の居酒屋店主(張孝全)は偶然にも台湾人、飯山線で声をかけてきた若者(道枝駿佑)は語尾に「っす」を使うノリのいい若者(キャラクタの類型にうんざり)、長岡のネカフェには物分かりのいい金髪元ヤン風情の黒木華がいて、只見では松重豊が足になってくれた。できすぎの優しい世界に鼻白んだ。
あざと画に興醒め。スカイランタン、原付ふたりのり、夜景を見ながらの将来語り、雪国、カラオケ店「神戸KTV」の壁画。泣かす布石としてのシーンづくりなのがいやだった。
台湾を暖色にまとめて、日本を寒色にまとめた──と語っており、そのとおりのこだわり画になっている。でもだからなんなのよ。美しい画なんだから──を免罪符にするのやめてもらっていいですか。
お涙頂戴自体に罪はないがしぬしぬで泣かすにすぎない構造をあざと画できどってみせる感じが個人的にはいや。編集も冗長で短篇映画に縮められる壮大な中二ポエムだったと(個人的には)思う。
個人的にとても大事にしたい作品
自分の知っている風景や思い入れの強い場所が出てくると、それだけで作品がグッと近づいてくる。しかも、実際と作品の空間や時間に齟齬がなければ、なおさらだ。
だから、ジミーがわざわざ松本を経由して、長野駅から飯山線に乗り、長岡から福島の只見に入るルートを選んだのも、ガムシャラに最短でゴールを目指すビジネスの世界から身を引き、あみとの過去を振り返る旅に出た彼にとっては、必然なのだろうなと納得できた。
とにかく、美しく清らかな映画だった。
18×3以上になってしまった自分も、18歳の頃(自分は台湾ではなく松本市で暮らしていた)のあれこれを思い出して、浸ることができた。
それも、脚本やロケーションの力だけでなく、未来へと向かうときには画面の左から右へ、過去へと戻る時には右から左へといったことなどをはじめとして、映画内の文法をしっかりと意識して丁寧につくられた作品であることが、観る者の主人公への共感を高めているのではないか。素直に監督の力量の高さを感じた。
加えて、この作品、劇場での鑑賞を楽しみにしていたのだが、自分は突然の3ヶ月に及ぶ入院でその機会を逃していた。なので、病院のシーン、とりわけベッドで花をスケッチする所や酸素吸入やサチュレーションモニターは、他人事と思えない親近感がわいた。
そうした意味での思い入れにも突き刺さったし、個人的にとても大事にしたい作品になった。
それから、あみの描いた絵は、ちょっと調べたところ、監督のお姉さんのよしだるみさんが手掛けられたようだが、これしかないというように作品にマッチしていて、本当に素晴らしかったことも指摘しておきたい。
初恋
ジミー役のシュー・グァンハンは、ほとんど芸能人には見えません。
シュー・グァンハンの新鮮な存在感。
それがこの映画を美しい青春映画にしていると思いました。
原作はジミー・ライの紀行エッセイ「青春18×2日本慢車流浪紀」
藤井道人に台湾側から合作のオファーがあったそうだ。
シュー・グァンハンの素人ぽい自然さ。
外国人が外国語(日本語などの、)を話すと、語彙の少なさからか、
幼く見える事が多い。
そんな点も長所を生み、この映画は切なくピュアで儚く美しい。
18年前(2006年)の台湾。
バックパッカーのアミ(清原伽耶)は財布を無くして、
カラオケ店「神戸」に働くようになる。
先輩のアルバイトがジミーで18歳。
教育係りをおおせつかり2人は互いの言葉を教え合って仲良くなる。
「カラオケ神戸」の店長も日本人。
スタッフもジミーとアミに好意的で、映画のチケットをくれたりする。
そして2人が観る映画がなんと岩井俊二監督の「Love Letter」
懐かしい。過去にみているけれど、中山美穂と豊川悦司が出ていたこと、
位しか覚えていなかった。
★★★
「Love L etter」
を観ました。
2年前に登山で死んだ恋人に、2年後に中学生頃住んでいた恋人の住所・小樽に
手紙を出す中山美穂。
取り壊されている筈なのに、なんと恋人の名前(藤井樹)の差し出し名の
返事が届く。
実は中学の同じクラスに同姓同名の男女がいて、彼女が返事を
くれるのです。
同姓同名の彼女に、恋人の思い出をおねだりする中山美穂。
その手紙の相手も中山美穂のふた役なのです。
そして小樽の藤井樹(いつき=美穂)が思い出のエピソードを手繰って行くと、
なんと樹(柏原崇)との、初恋のシュルエットが幻燈のように浮かんでくる。
☆☆☆
「Love Letter」
脚本が本当に素晴らしい!!
そりゃー、ミちゃん号泣しますね。
ジミーより4つ年上のアミは、どこかタカビーな言動をとります。
ジミーの告白にも、
「2人が今考えている夢が実現したら、会おうね」などと、
はぐらかすのです。
18年前の台湾での思い出と、会社の社長を追い出されて日本に来ている
18年後(2024年冬)のジミーの旅が交互に描かれます。
ジミーの18年前の心象風景に見えているアミ。
長岡から鈍行列車に旅で仲良くなる道枝駿佑と列車はトンネルを潜ります。
《トンネルを抜けるとそこは雪国だった》
川端康成の「雪国」の冒頭と同じ世界。
アミの生家のある福島の只見町は雪深い里でした。
松重豊のトラックでアミの家に送られて母親(黒木瞳)に会うジミー。
ジミーはもう既に知ってたのですね。
そこからはアミの言動の答え合わせ。
台湾の自室から漏れてきた激しい諍いの声。
「日本の恋人?」実は、
アミの病気を心配する母親の、
「帰って来なさい」の言葉への強い反発だった。
ジミーが台湾から電話して、「日本に行くよ」
と言うと、
アミの答えは「旅に出るの。地球の裏側へ、恋人と・・・」
実際のアミは入院中のベッドの上。
アミの強がりだった。
国境と時を超えて綴られる美しい叙事詩。
アミを愛した記憶、
初恋の美しい記憶は、
ジミーの生きていくこれからの原動力になる事でしょう。
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