ゴンドラ

劇場公開日:

ゴンドラ

解説・あらすじ

「ツバル TUVALU」「ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を」などで知られるドイツのファイト・ヘルマーが監督・脚本を手がけ、山の谷間を行き来する2台のゴンドラで働く2人の女性が織りなす物語をセリフなしで描いたドイツ・ジョージア合作映画。

コーカサス山脈の西に位置するジョージアの小さな村で、古いゴンドラの乗務員として働き始めたイヴァと、もう1台のゴンドラの乗務員を務めるニノ。威張り屋の駅長には腹が立つことばかりだが、2人も負けてはいない。すれ違うゴンドラでイヴァとニノが交わし合う奇想天外なやりとりは、いつしか地上の住民たちも巻き込んでいき……。

劇中に登場するゴンドラはジョージア南部の小さな村フロに実在し、「ジョージアで最も長い距離をつなぐゴンドラ」として知られている。2023年・第36回東京国際映画祭コンペティション部門出品。

2023年製作/85分/ドイツ・ジョージア合作
原題または英題:Gondola
配給:ムヴィオラ
劇場公開日:2024年11月1日

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(C)VEIT HELMER-FILMPRODUKTION,BERLIN AND NATURA FILM,TBILISI

映画レビュー

3.5優しさと心地よさでユニークに包み込んだ快作

2024年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ジョージアの山あいに伸びるロープウェイを舞台に、セリフ全くなしのミニマリスティックな物語が展開する可愛らしい一作だ。冒頭のシークエンスに触れただけで、このフォトジェニックな環境と人々の暮らしがナチュラルに胸中へと沁み渡っていく。そして何よりもロープウェイをゆく「上り」と「下り」のゴンドラが空中ですれ違う”一瞬”の連続によってユニークなドラマを紡ぎあげる手腕は見事。これを単調な繰り返しと見るか、尽きぬアイディアの宝庫と見るかで評価は変わるだろうが、私は後者となって終始笑顔で酔いしれた。ヘルマー監督といえば「ツバル」で知られる異才だが、私は本作を観ながら不意にフドイナザーロフ監督が遺した「コシュ・バ・コシュ」を懐かしく思い出したりもした。掛け替えない日常や瞬間をロープウェイという場に集約させるとは、なんてロマンティックなのだろう。限られた空間を巧みに活かし、優しさと心地よさで彩った快作である。

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牛津厚信

4.0幸せな気分になれる映画です

2025年2月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ゴンドラ(ロープウェイ)は普通は観光目的で世界各地にあるが、このジョージアの小さな村にある(実在する)ゴンドラは住民が交通手段で使用しているものだそうだ。しかもソビエト時代に作られたものなので古くて狭くドアは簡単に開くこのゴンドラに乗るのは、現代人の我々にはちょっと勇気が入りそうである。
セリフなし映画なので眠くなるのを心配していたが、主演の2人の女性乗務員のゴンドラがすれ違う度に繰り広げられるネタ振りの応酬が面白く大笑いしそうになる程痛快でしたし、2人ともとってもチャーミングだし、住民もおおらかだし、意地悪な駅長にだって親しみがもてたりします。なので睡魔など一瞬たりとも訪れませんでした。
セリフなしだからこそ雄大な景色に集中できるし、人々の動きや仕草にしっかり目が行くことができます。洋画では字幕を追いながら、邦画ではセリフを聞きながら物語を考えながら観る映画鑑賞スタイルから解放されるってのは、こういう事か!と思いました。
素敵な映画をありがとう!

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アベちゃん

5.0冒頭で惚れるほどの美しさ

2025年2月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

冒頭、ゴンドラの駅舎が映された瞬間に、惚れてしまった。
全編、どの瞬間、どの場面を切り取っても色合いと明暗の対比が完璧に美しく、いつまで眺めていたい気持ちになる。
はっきりと言葉として発せられるのは、途中に出てくる「OK!」だけ。あとは、当時人物たちの行動や表情から読み取るしかないが、無声映画と違うのは、背景音がとても自然で豊かなこと。古き良きゴンドラのある村の中に、自分が身を置いている気持ちになれる。

<ここから、自分が読み取った内容に触れながら話します>
※セリフでの説明がないため、盛大に誤読している可能性もありますが…

最初、ゴンドラに棺を載せて運ぶシーンがあるが、あれはおばあさんの連れ合いのご遺体かと思いきや、実は主人公のIVAの父のものだったということか。
棺を運ぶゴンドラに対して、仕事の手を止めて祈りを捧げる敬虔な村人たちが、埋葬の時に誰も手伝わないことに驚いたが、IVAは「父を見捨てて、死に目に間に合わなかった薄情な娘」として見られていたということなら、まぁ理解できる。おばあさんが、鍵を手渡さずに地面に落とすのも、IVAが添乗するゴンドラに乗るのを躊躇うのも、「今更、なんで戻ってきた」ということなのだろう。
だが、ゴンドラの乗務員としてIVAが働き続けるうちに、おばあさんや、冒頭でIVAが歩くと窓を閉めた村人たちとも、関係はだんだん修復していく。(おばあさんとIVAは、親戚の可能性もある)
※この部分については、解答がでました。追記、再追記をお読みください。

人と人との関係ということで言えば、女の子に、手製のゴンドラを使ってプレゼントしたケーキを、「不味っ!」という顔で拒否された男の子も、IVAの手引きで一緒にゴンドラに乗ったり、グラスハープを奏でたりしながら、関係を深めていく。

同じ乗務員のNINOとは、ゴンドラのすれ違いでの形式的なあいさつから始まり、往復ごとに一手ずつ進む山頂駅でのチェスや、ランチのオープンサンドのサプライズ差し入れ、乗客がいないのを良いことにゴンドラのすれ違い時に、趣向を凝らして相手を喜ばせようとするやり取りなどを通して、恋愛関係に…。

やがて、ゴンドラは、IVAとNINOの2人によって、村人を巻き込んだ、壮大な合奏のコンダクターへとなっていく。

つまり、ゴンドラは人と人とを繋ぐ象徴であり、ゴンドラのすれ違いは、人と人との出会いや待ち合わせの象徴でもあった。

その中でただ一人、ゴンドラが関係の修復や改善に繋がらなかったのが駅長。

制服を基準にした乗務員選びなどに見える、あからさまな下心。障がい者への徹底した差別。チェス相手のNINOも、コンコンと音を鳴らすことで呼びつけるなどのマチズモ体質が、IVAとNINOの2人によって見事に拒否されていくのは、見ていて爽快。
挙げ句の果てには、逆ギレして、あろうことか彼自身の生業であるはずのゴンドラのロープを叩き切って、そのおかげでゴンドラの直撃を受け、あえなく退場していった。
優位性にあぐらをかいたり、怒りに身を任せた行為は、必ずしっぺ返しがくることを自戒させられる。

映画のラスト、ゴンドラに2人のすがたはなかったが、車椅子の彼が新たな駅長となり、男の子と女の子が海賊に扮して、ゴンドラのすれ違いを利用した遊びに励んでいるのは微笑ましかった。
きっと2人は、NINOの就職した航空会社の近くで一緒に暮らし始めたのだろうな。

出てくるモノは、みんなアナログなのだが、それが温かく、ゴンドラ自体も、手仕事でさまざまなカスタマイズができるところが、とてもほっこりする。

何回でも見返したい映画にまた一つ出会えました。

<追記>
フロワァーさんが、「棺の方は乗務員か」と書かれていて、そういえば、棺の上に乗っていたのは畳んだ制服か…とか、だから乗務員を募集していたのか…とか、スッキリしてきましたが、あのおばあさんの娘ってことでしょうか。だから、IVAにいじわるだったのかもしれません。でも、埋葬の場面は、まだちょっと疑問が残ります。

<再追記>
レビューを書く前には、色々影響を受けたくないので、他の方のレビューやパンフレットは読まずに書いているのですが、購入してあったパンフレットを先ほど読んだところ、IVAが村に帰ってきた理由について「父が亡くなったのだ」と書いてありました。また、あのおばあさんは、「父と暮らしていた女性」ということでした。IVAが戻ってきたので、家を明け渡すことになったために、あのような行動に出たということでしょう。
制服も、IVAと父が一緒に写っている写真には、ブレザーにネクタイの車掌姿の父が写っているので、棺に載せたのはそれで、下心がある駅長が、若い女性を選ぶために、別にスカートタイプのあの制服を用意したのだと結論が出ました。(とてもスッキリ!)

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sow_miya

4.0セリフがなくても楽しめる

2025年1月30日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

萌える

下北沢の「K2」で鑑賞。

鑑賞前は、セリフなしで約90分の映画を「耐えられるだろうか」(寝不足気味)と危惧していましたが、杞憂でした。

感情的な音楽、個性のあるキャストと豊かな表情、非現実的だけど、あってもおかしくないと思わせてくれるストーリー、それらがうまく絡みあっていて最後まで楽しむことが出来ました。

鑑賞後、西日に照らされた下北沢の街がいつもより色どり豊かで温かいような……そんな気持ちにさせてくれる映画でした。

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fish_words