コラム:上質映画館 諸国漫遊記 - 第8回

2025年12月24日更新

上質映画館 諸国漫遊記

映画を愛する人にとって、テレビやネット動画もいいけれど、やはり映画は映画館で観るものだと考える方は多いだろう。本コラムでは全国の映画館の中から「これは」と思う上質なスクリーンを訪問し、その魅力をお伝えしたい。(取材・撮影・文/ツジキヨシ)


姫路 アースシネマズ/客観と主観を音で切り替え、デリケートなタッチで「国宝」の音を鳴らすシステム「雷舞-LIVE-」

シアター内全景
シアター内全景

今回の「上質映画館 諸国漫遊記」の舞台は、兵庫県姫路市にある「アースシネマズ姫路」。2015年に開業された姫路駅直結のシネマコンプレックスだが、開業10年の今年(2025年)、大幅リニューアルが行われ、IMAX[H1.1]レーザースクリーンなどが導入された。中でもオリジナル音響システムである「Earth Cinemas Premium Sound System雷舞-LIVE-」(以下、「雷舞-LIVE-」システム)が導入されたスクリーン6を紹介したい。

映画館の設備改修では、本コラムで何度か紹介している「IMAX」や「ドルビーシネマ」、「ドルビーアトモス」など映画館の設備全体を「フォーマット」化して、ブランドが保証する技術や設備、設置規範などの裏付けを元に、その名称をスクリーンにつけた方法がよく取られている。ユーザーにクオリティというカタチでの付加価値をわかりやすく提示し、その対価として追加料金を支払ってもらうスタイルが典型だ。

ドルビーやIMAXのような「フォーマット」化された設備以外にも、劇場側が様々なカタチで付加価値を自ら構築する取り組みもある。TOHOシネマズの「TCX」や「轟音シアター」、イオンシネマの「ULTIRA」などがよく知られている。本連載の第3回で紹介したミッドランドスクエアシネマ「MIDLANDQUALITY SOUNDSYSTEM 粋」や、第4回の109シネマズプレミアム新宿「SAION -SR EDITON-」もそうしたパターンだ。フォーマットにとらわれず、独自の発想で上映品質を高める試みであり、映画ファンの端くれとしても非常に嬉しい動きとして捉えている。

新幹線停車駅「姫路駅」から直結のテラッソ姫路。東口すぐで非常に利便性に優れている
新幹線停車駅「姫路駅」から直結のテラッソ姫路。東口すぐで非常に利便性に優れている

■アースシネマズ姫路が導入した「雷舞-LIVE-」とは

今回ご紹介する、アースシネマズ姫路の「雷舞-LIVE-」も、その流れに位置する取り組みである。アースシネマズ姫路は、新幹線の停車駅である姫路駅直結の「テラッソ姫路」という複合商業施設に、2015年7月24日に開業したシネマコンプレックス。12スクリーン構成で合計1,904席[H2.1]という大規模劇場であり、日本で初めてドルビーアトモス対応スクリーンを複数導入するなど、クオリティ指向のシネマコンプレックスとして運営されてきた。思い返すと2015年は、ドルビーアトモス対応スクリーンが日本で続々と展開されていた時期であるが、その多くが既存スクリーンを改修したものであって、新規シネコンのドルビーアトモス対応スクリーンで、しかも複数対応ということで大いに注目を集めていた、そんな記憶がある。

劇場のホワイエ。日曜日ということもあって非常に多くのお客さんで賑わっていた
劇場のホワイエ。日曜日ということもあって非常に多くのお客さんで賑わっていた

特にアースシネマズ姫路のスクリーン9は、ドルビーアトモス&4Kプロジェクターを組み合わせたハイスペック仕様で「ウシオプレミアムシアター」と名付けられたことで話題となった。「ウシオ」というのは、ウシオ電機のネーミングライツによるものだ。ウシオ電機は、映画業界の中では知らぬものはいない超有名企業である。実はウシオ電機は「世界中の映画館を(中略)高輝度・高画質デジタルシネマプロジェクター、その中に組み込まれるクセノンランプ、映画館のオペレーションを支えるマネージドサービスといったトータルソリューションで支えて」いる会社であり、同社が姫路市に播磨事業所を構えていることからの権利獲得だったのだろう。ウシオ電機は、世界中の映画興行を言葉通り支えている存在として、映画ファンなら、ぜひ記憶しておくべき重要メーカーなのである。閑話休題。

アースシネマズ姫路で使われているデジタルプロジェクターは、全て「クセノンランプ」を使用している。そのランプを製造しているのが、「ウシオ電機」の姫路市別所町にある播磨事業所
アースシネマズ姫路で使われているデジタルプロジェクターは、全て「クセノンランプ」を使用している。そのランプを製造しているのが、「ウシオ電機」の姫路市別所町にある播磨事業所
ホワイエに飾られているクセノンランプ(キセノンランプと呼ばれることも多い)。太陽光に近い波長特性を備えた、優れた演色性と高輝度を両立している。「映画らしさ」を醸し出す色再現の原動力ともいえる
ホワイエに飾られているクセノンランプ(キセノンランプと呼ばれることも多い)。太陽光に近い波長特性を備えた、優れた演色性と高輝度を両立している。「映画らしさ」を醸し出す色再現の原動力ともいえる

そのアースシネマズ姫路が今年2025年7月に設備改修を行った。アースシネマズ姫路で支配人を務める坂田真人さんに多忙な中、話をうかがうことができたので紹介しておこう。

「開業10年を迎える2025年にIMAXレーザースクリーンの導入を行うことになりましたが、ただIMAXレーザーを導入するだけでなく、その改修に合わせて既存のスクリーン6に、われわれの想いを込めた音響システムを取り入れようということになりました。コンセプトは映画の肝であるダイヤローグを大切にしつつ、最新映画の特徴であるダイナミックな音響をとことんまで描き切ること。特に家庭では味わうことのできないような、迫力のある強烈な低音を、軽やかに美しく響かせる、そこもポイントになりました」

そんな劇場側の想いを受けて、今回の改修を実施したのは、映画館上映システム/業務用音響スタジオ向け設備サービスの設計・施工大手「株式会社ジーベックス」と、TOHOシネマズ日比谷のカスタムスピーカーや109シネマズプレミアム新宿「SAION -SR-」などのカスタムスピーカーで知られている「イースタンサウンドファクトリー」。その3社でコンセプトを具体化しつつ、試行錯誤を重ねて出来上がったのが「雷舞-LIVE-」だ。ちなみにジーベックスは、ウシオ電機のグループ会社である。

アースシネマズ姫路では、雷舞-LIVE-のほか、IMAXレーザーやULTRA 4DX、ドルビーアトモス、DTS:Xなど様々な上映フォーマットに対応している
アースシネマズ姫路では、雷舞-LIVE-のほか、IMAXレーザーやULTRA 4DX、ドルビーアトモス、DTS:Xなど様々な上映フォーマットに対応している

■「雷舞-LIVE-」に導入された「ベースラインアレー」システム

<雷が舞う>と名付けられている通り、そんな重低音の迫力を追求するために出来上がったのが、「ベースラインアレー」という極めてユニークな低音再生システムだ。劇場で配布されているフライヤーにはこういう説明があったので、引用してみよう。

「サブウーハーを10本同一ライン上に横方向に並べ、水平方向のベースラインアレーを構築
席による低音の聴こえ方の差を押え、劇場全体で均一かつ美しい低音を再生」

スクリーン6に入るとすぐ目に入るのが、「ベースラインアレー」。イエローでライティングされている
スクリーン6に入るとすぐ目に入るのが、「ベースラインアレー」。イエローでライティングされている

この「ベースラインアレー」システムは、やや概念が難しく、専門用語を使わないと正確には説明できないが、筆者の理解はこうだ。シアター前方、スクリーン下に配置された10本の18インチ(約46cm)ユニットを横方向に同一ライン上に並べて、低音を再生する。10本のサブウーファーは全く同一のタイミングではなく、中央の2本を基準に、少しずつ音をわずかに遅らせるようにディレイ設定を施して鳴らす。中央を起点にわずかではあるが、少しずつ左右のサブウーファーの音を遅らせる理由は、音の指向性(向き)を制御するためだ。一般的な配置でサブウーファーを鳴らすと同心円状に低音が広がっていく特性を備えているが、サブウーファー10基を水平に並べて、中央を起点にディレイを加えつつ鳴らすと、同心円状ではなく直線的、ビーム状に低音が放射されることになるのである。

ウーファーサイズは18インチ(約46cm)。いかにも強固なキャビネットにマウントされ、それが10本横並びで配置している
ウーファーサイズは18インチ(約46cm)。いかにも強固なキャビネットにマウントされ、それが10本横並びで配置している

コンサート会場では、垂直方向に多数のスピーカーボックスが、弧を描くように積み重ねて吊り下げられていることがよくあるが、それは「アレー」方式のサウンドシステムと呼ばれているもので、ライヴ会場の幅広いエリアに対して、同じような音のバランスで演奏を届けるために考案されたシステムだ。「ベースラインアレー」は、映画館での重低音に対して動作するように工夫された、水平方向にユニットを並べた「アレー」方式のシステムと考えていいだろう。池に石を落とすと同心円状に波が立つが、「波のプール」のように壁面全体で面として水を動かすと、直線的に波ができる。「アレー」や「ベースラインアレー」は、これと同じ仕組みで音を制御しているとも理解すれば、わかりやすいかもしれない。

中央付近の座席からスクリーン側を撮影した。サブウーファーの存在感が圧巻だ。スクリーンサイズは幅12mくらいで、アスペクトはビスタのようだ
中央付近の座席からスクリーン側を撮影した。サブウーファーの存在感が圧巻だ。スクリーンサイズは幅12mくらいで、アスペクトはビスタのようだ

「ベースラインアレー」を使うことで、スクリーン側から後方へ直線的に低音が向かっていくので、シアター内のどの席でも低音の均一に届けることができ、しかも直線的、ビーム状に低音が進むため、壁面での反射による低音の打ち消し合い効果も減らせる。結果的にシアター内の低音の音圧(=音量)が低下せず、しかも帯域ごとの暴れを抑える利点もある。低音が野放図に盛り上がると低音以外の帯域へ干渉し、声の帯域をマスキングしてしまう悪さが出てしまうことがあるが、それを防ぐことができるのだ。最近の映画館でたまにあるのが、あまりにも低音に過剰に出そうとしているケース。最悪の場合、気持ち悪くなるようなことすらあるが、それは低音をしっかり制御していない結果である。10本のユニットを使って低音の制御を行う「雷舞-LIVE-」の「ベースラインアレー」システムでは、劇場内のどの席であっても、上映側が意図する低音を過不足なく、正確に届けられる可能性を限りなく高めるために作られたのである。

■18インチウーファー10本による強力サブウーファーに注目

「雷舞-LIVE-」システムで使われているサブウーファーはスクリーン下に露出しており、上映前はライティングされ、存在感を大きく観客にアピールしている。一見して、今から観る映画のサウンドは果たしてどのように聴こえるのだろうか、そんなワクワク感を与えてくれる、そんな存在である。ユニットサイズは18インチ(45.7cm)サイズと非常に大きい。振動板の前に8本のフレームが露出している外観が特徴的なユニットだが、それはハイパワー駆動中の効率的な冷却を行う構造で、「ラジアルテクノロジー」と呼ばれている。

サウンドスピーカー。12インチ(約30cm)ウーファーを上方に、下方に同軸型ユニットを配置した3ウェイ構成となっている
サウンドスピーカー。12インチ(約30cm)ウーファーを上方に、下方に同軸型ユニットを配置した3ウェイ構成となっている

少々専門的な話になるが、映画館(あるいはコンサート)など、ハイパワーで低音再生を行われる環境では、ボイスコイルというパーツの効率的な放熱が非常に重要で、その放熱に寄与するのがこの特徴的なフレームである。ユニットの詳細は明らかにされていないが、振動板はカーボンファイバー系の素材のようだ。このユニットを24mm厚ウッドで作られたキャビネットに収めている。キャビネットは幅90cm、高さ65cm。1台あたり約70~80kgの重量級筐体に収め、強烈な低音再生をしっかりと支えている。サブウーファーを含めて全スピーカーを駆動するパワーアンプ、さらに信号処理用プロセッサーは全て英国リニアリサーチ製という現代最高峰ブランドの製品が使われている。特にパワーアンプは高出力かつ低歪み性能を誇り、最近のハイグレードな劇場での採用例が多いことで知られている存在だ。

L/C/Rユニットは、コンプレッションドライバーを中心に据えた同軸2ウェイに軸に15インチ(38cm)ウーファーを加えた3ウェイ構成で、バスレフ型エンクロージャー(筐体)に格納している。サラウンド/サラウンドバックスピーカーも同軸ドライバーと12インチ(30cm)ドライバーを収めた3ウェイシステムとなる。サラウンドスピーカーは左右の壁面に7本ずつ、サラウンドバックスピーカーはプロジェクターからの上映窓を挟んで左右2本ずつを使用、サラウンド/サラウンドバックスピーカー合わせて18本を配置している。映画上映システムとしては、7.1ch構成となる。

サラウンドスピーカーは、左右の壁面に7本ずつ、後方にも上映窓を挟んで左右2本ずつがマウントされている
サラウンドスピーカーは、左右の壁面に7本ずつ、後方にも上映窓を挟んで左右2本ずつがマウントされている

■映画「国宝」の傑出した音響を緻密に表現する「雷舞-LIVE-」

実際のパフォーマンスはどうだろうか。まだ猛暑が続いていた9月、アースシネマズ姫路のスクリーン6の「雷舞-LIVE-」で映画「国宝」を観た。鑑賞したのは日曜日の午前9時からの回で、劇場には8時40分くらいに到着した。日曜日ということもあってか、早朝にも関わらず多数のお客さんが鈴なりでちょっと驚く。売店も混雑している。チケット発券を済ませ、スクリーン6に入る。

「雷舞-LIVE-」の特徴であるサブウーファーが落ち着いたイエローカラーでライティングされ、その存在を大きくアピールする。スクリーンのサイズは公表されていないが、目測で幅12メートル、高さは7メートルくらいだろうか。アスペクトはおそらくビスタ。座席は16列で各16〜22席用意され、合計254席+車椅子スペースが2つ。座席は後方に向かって傾斜がついており、映像の見やすさに非常に配慮された設計となっている。座席はK-11で、やや後方列であるが、スクリーンに対してはほぼ中央付近。ベストポジションからはわずかに外れているかもしれない。

スクリーン側から座席を撮影する。傾斜がつけられており、どの席からでもスクリーンが鑑賞しやすい
スクリーン側から座席を撮影する。傾斜がつけられており、どの席からでもスクリーンが鑑賞しやすい

邦画の実写映画として歴史に残る特大ヒットとなった「国宝」は、俳優陣の卓越した演技や素晴らしい映像美、セット/衣装などのプロダクションが絶妙にバランスした傑作であるが、実はサウンドデザインも日本映画として傑出している。サウンドデザインは白取貢さん(クレジットは「音響」となっている)。彼は、「国宝」の李相日監督作品の多く、たとえば「フラガール」「悪人」「怒り」「流浪の月」などのサウンドデザインを担当して、李監督映画に欠かせないスタッフといえよう。「国宝」での白取サウンドは実に巧みに場面に寄り添いつつ、映画のキャラクターの心情、心象を音として描くが、そうしたテクニックのキレ味が見事に「雷舞-LIVE-」システムで表現されていた。

具体的に説明しよう。映画冒頭、九州長崎での立花組の新年会シーン。雪が深々と降る料亭に現れる歌舞伎役者、花井半二郎。騒々しい宴会の場で、半二郎が立花組の親分、立花権五郎と盃を交わしながら挨拶する。その喧騒のさなか、主人公・立花喜久雄とその友人・徳次が余興歌舞伎「関の扉」が始まり、それが一段落したのち突如、襲撃を受ける。状況の説明を映像と会話、そして巧みな編集で観客に提示しつつ、任侠の血を受け継ぐ喜久雄が歌舞伎への道を辿る因果を明確に示す、巧みな幕開きだ。

「関の扉」での喜久雄と徳次の響き合う声。時折、徳次が激しく床を打ち鳴らすが、その鋭くシャープな音。襲撃シーンでのサラウンド空間を大きく活用した音の広がり。このシーンでは、映画を見る観客は、少年歌舞伎を宴席の一人として見て、抗争の苛烈さもまた体験することになる。分析的にいえば、映画内の出来事を客観的に観客に説明する描写である。そこでは様々な音を巧妙に使って、観客を長崎の宴会場に誘導し、場面の出来事へのリアリティを徐々に高めていく。

だが、権五郎が銃で打たれ、止めをさされた刹那、場面の印象/タッチがガラリと変わる。その場面では、じわりとシアター内に染み渡るように低音が浸透する。そう、権五郎の大往生の姿とリンクして立ち上がる低音をきっかけとして、喜久雄の心象表現、主観的な場面へと鮮やかに切り替わるのである。

座席は座面が大きめで硬さも適切。3時間の「国宝」鑑賞でもほとんど疲れ知らずでした
座席は座面が大きめで硬さも適切。3時間の「国宝」鑑賞でもほとんど疲れ知らずでした

■客観と主観を行き来する映画「国宝」の世界を巧みサポートする

このように「国宝」は客観と主観を、幾度も行き来し、原作に描かれた膨大なストーリーと、登場人物たちの繊細な心象を絶妙なバランスで描写し、観客の心を掴む、という構造の映画である。「雷舞-LIVE-」システムでは、「国宝」の客観と主観のバトンタッチを、音としてクリアーに形作る。

国宝」は、ハリウッド映画のような強烈な低音が矢継ぎ早に続いたり、効果音がエフェクティブに四方八方に移動したりはしない。そもそもそんなことは全く目的にしていない映画であるが、音響デザインはときに繊細に、ときに大胆に使われて、フィクションたる映画世界のリアリティを大いに高める原動力になっている。

画像16

筆者は「国宝」を初めて観たとき、吉沢亮演じる喜久雄の、横浜流星扮する俊介の、言葉としては発せられない心の動きがありありと掴めたことに驚いたが、なぜそう感じたのか、その仕掛けがよくわからなかった。だが「雷舞-LIVE-」システムで観て、客観と主観の行き来を映像だけでなく、サウンドデザインでメリハリをつけて表現したことがその秘密だと腑に落ちた。

「雷舞-LIVE-」システムの本領は、マーベル映画や「スター・ウォーズ」シリーズ、ノーラン監督の諸作品、トム・クルーズ主演のアクション映画など、豪快に重低音が鳴り響き、サラウンドサウンドを派手に使った作品で発揮されるだろう。「国宝」を観て、正直にいえばそう思った。しかしながら「国宝」という作品で「雷舞-LIVE-」システムの意味がないかといえば全くそんなことはない。「国宝」のサウンドデザインは、ある意味で壊れやすそうな微妙なバランスで出来ていると感じたが、その緻密さをクリアーに描くという能力が「雷舞-LIVE-」システムでは傑出していた。「国宝」は都合4回観ているが、そんなデリケートなタッチで「国宝」の音を鳴らしたのは「雷舞-LIVE-」システムだけだった。

機会があれば、先に挙げたような豪快なサウンドデザインが施された大作映画で、スクリーン6の「雷舞-LIVE-」システムのポテンシャルをフルに堪能したい。たとえば、2025年年末の最大の話題作「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」や、2026年公開予定の新作「ウォーフェア 戦地最前線」「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」「オデュッセイア」「Michael マイケル」などが観られたら最高だ。アースシネマズ姫路は、姫路や関西地方の方はもちろん、関西方面に出かける機会があれば、ぜひ積極的に訪ねてほしい上質な映画館であった。

IMAXレーザーやドルビーアトモススクリーンも併設しているので、最新フォーマットの映画鑑賞もバッチリだ
IMAXレーザーやドルビーアトモススクリーンも併設しているので、最新フォーマットの映画鑑賞もバッチリだ

採点
映像8.0/音声8.5/座席8.5/総合8.0
ハリウッド作品で再訪したいと心に決めました。

今回の鑑賞料金(※料金は、2025年9月取材時点での価格です)
2,000円 ※スクリーン6 雷舞-LIVE-は、追加料金なしで鑑賞可能

アースシネマズ姫路
兵庫県姫路市駅前町27 テラッソ姫路4F
電話番号 079-287-8800(24時間音声案内)
オペレーター受付9:30~20:30(営業時間に伴い変更の場合有)

参考サイト
アースシネマズ姫路
https://earthcinemas.co.jp/
劇場案内
https://earthcinemas.co.jp/theaters/

プレミアムサウンドシステム 雷舞-LIVE-
https://earthcinemas.co.jp/ecpss_live/

YouTube動画 プレミアムサウンドシステム 雷舞-LIVE-
https://www.youtube.com/watch?v=ZRv7iYaEphU&t=24s

映画.com 白取貢
https://eiga.com/person/200688/movie/

白取貢さん(映画録音技師)インタビュー イースタンサウンドファクトリー
https://esfactory.co.jp/works/454-ms-meg.html

音楽と音から「国宝」の魅力に迫る 李相日監督、音楽の原摩利彦、音響の白取貢が109シネマズプレミアム新宿でトーク
https://eiga.com/news/20250828/21/

IMAX®は、IMAX Corporationの登録商標です。[H4.1]

筆者紹介

ツジキヨシのコラム

ツジキヨシ。1969年千葉生まれ。オーディオ専門誌の編集部を経て、オーディオビジュアル専門誌の編集に携わって四半世紀。大型スピーカーと100インチスクリーンによるドルビーアトモス対応サラウンドシステムを構築。日夜、映画と音楽に込められたクリエイターの想いを、いかに再生していくか、試行錯誤中。

映画ニュースアクセスランキング

本日

  1. 「新年早々 不適切にもほどがある!真⾯⽬な話、しちゃダメですか?」会見 河合優実は「お父さんに会ったら純子に戻れた」

    1

    「新年早々 不適切にもほどがある!真⾯⽬な話、しちゃダメですか?」会見 河合優実は「お父さんに会ったら純子に戻れた」

    2025年12月23日 04:00
  2. 人手不足の病院で起こる緊迫の90分「ナースコール」日本公開決定

    2

    人手不足の病院で起こる緊迫の90分「ナースコール」日本公開決定

    2025年12月23日 12:00
  3. トム・クルーズらが激推しする「ランニング・マン」の新規場面写真7点一挙公開! 原作小説は20年ぶり復刊&重版決定

    3

    トム・クルーズらが激推しする「ランニング・マン」の新規場面写真7点一挙公開! 原作小説は20年ぶり復刊&重版決定

    2025年12月23日 13:00
  4. 映画公開後「見たことない綾野剛がいる」と話題!「星と月は天の穴」クランクアップ写真公開

    4

    映画公開後「見たことない綾野剛がいる」と話題!「星と月は天の穴」クランクアップ写真公開

    2025年12月23日 12:00
  5. ジェームズ・キャメロン監督「『アバター』にすべてを捧げた」 全世界興収543億円の大ヒットスタート【特別映像】

    5

    ジェームズ・キャメロン監督「『アバター』にすべてを捧げた」 全世界興収543億円の大ヒットスタート【特別映像】

    2025年12月23日 08:00

今週