コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第180回
2012年5月11日更新
![FROM HOLLYWOOD CAFE](https://eiga.k-img.com/images/extra/header/10/56f7ffca26c477cd.jpg?1587036236)
第180回:天賦の才能で世界を魅了するティム・バートン監督に迫る!
![ティム・バートン監督最新作「ダーク・シャドウ」](https://eiga.k-img.com/images/extra/1389/8024805576d5764a/640.jpg?1610966994)
(C)2012 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
最新作「ダーク・シャドウ」で、ティム・バートン監督の取材をした。バートン監督によるジョニー・デップ主演映画はこれで8作目になるわけだけれど、今回はとくにふたりが初めてタッグを組んだ「シザーハンズ」と共通点が多い。「ダーク・シャドウ」でデップが演じるのは200年の眠りから目覚めたバンパイアだ。すっかり落ちぶれてしまった自分の末えいとともに、一族の立て直しを図るというユニークな物語だ。バンパイアであるから生き血を吸う危険な存在なのだが、同時に家族思いの常識人というキャラクター設定で、無垢さと危険が同居している点や、社会に馴染むことができない点などは、人造人間エドワードと同じだ。
「ダーク・シャドウ」は、実は1966年から1971年までアメリカで放送されていた昼ドラが原作で、子供のころのバートン監督のお気に入りの番組で、学校が終わるとこのドラマを見るために走って帰宅していたという。
「当時の僕はいわゆる思春期に差しかかっているときで、周囲に馴染めず、ものすごく場違いな思いをしていた。だからこそ、主人公に共感したんだと思う」
テレビ版「ダーク・シャドウ」を見ていたときに、バートン監督はホラーやファンタジーなど独自の物語世界に夢中になっていた。そもそものきっかけはなんだったのだろうか?
「子供部屋には窓がふたつあったんだ。でも、うちの親は窓を塞いで、壁にしてしまった。どういう意図があってかわからないんだけれど、それから僕は窓のない部屋で過ごすことになった。その後、エドガー・アラン・ポーの短編小説に殺した妻を壁のなかに埋め込むという展開を見つけて、ものすごく引きこまれた。こういう小さな出来事の積み重ねが、自分の性格に影響を与えてきたんじゃないかな」
![親子のようなバートン監督とクロエ・モレッツ](https://eiga.k-img.com/images/extra/1389/0449e7929f100064/640.jpg?1610966994)
(C)HFPA
また、生まれ育ったバーバンクという街も、大きな影響を及ぼしているという。バーバンクはロサンゼルスの北にあり、ユニバーサルやディズニー、ワーナーなどがスタジオを構えるメディアの中心地であるが、どこまでも平屋が続く住宅街での生活は、バートン監督を滅入らせたという。
「ディスニーで働いているとき、窓から自分が生まれた病院と、家族が埋葬されている墓地が見えたんだ。僕は毎日、仕事にやってきては、外を眺める。そして、生まれた場所と、埋葬されることになる場所を見つめるんだ。いつかこのバミューダートライアングルから抜け出さなきゃと思っていたよ(笑)」
幸い、バートン監督はキャリアで大成功を収め、いまでは女優のヘレナ・ボナム・カーターとともにイギリスで暮らしている。「ダーク・シャドウ」に出演しているクロエ・モレッツによれば、子どもの父母会にもきちんと出席する良きパパである。
しかし、バートン監督によれば、孤独で友達のいなかった子ども時代と中身は変わっていないという。
「孤独で友だちのいない大人になっただけさ(笑)」
「ダーク・シャドウ」は、5月19日から全国で公開。
筆者紹介
![小西未来のコラム](https://eiga.k-img.com/images/writer/25/face.jpg?1580204321)
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi