コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第166回
2012年1月20日更新
第166回:第69回ゴールデン・グローブ賞、セレブが集う授賞式をレポート!
先日、第69回ゴールデン・グローブ賞授賞式が行われた。例年ならば、受賞結果や印象に残ったスピーチなどを書くところだけれど、今回は初めて会場に入ることができたので、体験レポートみたいなものをつづってみようと思う。
これまでアカデミー賞に1回、エミー賞には4回ほど参加させてもらっているのだけれど、そんな僕でもゴールデン・グローブ賞は打ちのめされるほどの素晴らしい経験となった。考えてみれば、これはおかしな話だ。ゴールデン・グローブ賞の会場にはオーケストラはおろか生バンドすらないし、歌やダンス、コントといった見世物もない。3年前からようやく司会者がついたけれど、プレゼンターが次々登場して、授賞者を発表していくという素っ気ないスタイルに変わりはない。会場にしても、アカデミー賞のような劇場ではなく、ビバリーヒルトン・ホテルの宴会場で行われるので、格式高い授賞式というよりも、結婚式の披露宴のようだ。
しかし、余計な演出がないからこそ、出席者の質と量が際立つのだ。ゴールデン・グローブ賞は映画だけでなくテレビもあり、しかも、それぞれドラマ部門とコメディ・ミュージカル部門があるため、俳優の出席者がものすごく多い。まさに今ハリウッドの第一線で活躍しているスターが勢ぞろいするのだ。
しかも、会場は1300名しか入れないから、セレブリティの人口密度がものすごく高い。会場を見回してもマドンナ、ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、マーティン・スコセッシ監督が同じ視界のなかに入るのだ。取材でこれほど多くのセレブと同時に会うことはないし、彼らにとってもそれは同じだから、会場は異様な高揚感で満ちている。「ファミリー・ツリー」で主演男優賞を受賞したジョージ・クルーニーが受賞スピーチでピットと再会できてうれしいと言っていたように、トップで活躍しているスターほど多忙なため、かつての共演者と会う機会が少なくなる。
だから、ゴールデン・グローブ賞は単なる授賞式ではなく、セレブリティにとっての同窓会のようなものなのだ。そして、彼らが旧交を温めたり、憧れの先輩に挨拶をする姿を眺めているだけで、こちらもその雰囲気に酔ってくる。おまけに、各テーブルにはシャンパンやらワインのビンが置いてあって、会場奥にはバーもあるのだから、不覚にも深酒をしてしまって、あいにく細部を覚えていない。
来年もまた参加できたら、もうちょっとましなレポートをしようと思う。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi