コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第10回
2008年8月18日更新
第10回:「ダークナイト」日本の興収は全米のたった3%か
「ダークナイト」が全米で大変なことになっている。先月18日に公開され、まずはオープニング3日間で1億5500万ドル(約170億円)という凄まじい興収を記録。「スパイダーマン3」(3日間で1億5100万ドル)を倒して歴代オープニング記録保持者となった。その後も、5日目で2億ドルに到達して「パイレーツ・オブ・カリビアン2」(8日目で2億ドル到達)を蹴散らした。3億ドル、4億ドル到達も歴代最速で、今や「スター・ウォーズ」の興収(約4億6100万ドル)に迫り、これを引きずり下ろして「タイタニック」(約6億ドル)に次ぐ史上第2位の地位を得ようとしているのである。
「ダークナイト」は、新生バットマンシリーズの2作目にあたる。1作目「バットマン・ビギンズ」(05年)に続いてメガホンを取ったクリストファー・ノーラン監督の確かな演出もさることながら、ジョーカー役のヒース・レジャーの伝説的な演技が語りぐさとなっている。レジャーは不幸にも今年の1月に急死したが、故人にしてアカデミー賞を受賞する可能性もかなり高いと予測されている。目下、全米興収ランキングでは4週連続の首位。毎週のように首位が入れ替わる全米映画市場において、4週に渡ってトップの座をキープしたのは「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」以来実に4年7カ月ぶりのことである。
さて、この「ダークナイト」だが、8月9日に日本でも公開された。国内の映画ファンの期待は高く、前売り券も良く売れていたが、オープニング2日間の成績は動員24万8167人、興収3億3318万4700円(先行上映の数字を含む)。実はこの成績、前作「バットマン・ビギンズ」(興収14.1億円)の114%にすぎない。「バットマン・ビギンズ」は渡辺謙が出演していたこともあって、興行では案外健闘した印象なのだが、「ダークナイト」の最終的な興収はこれを下回る可能性が高い。
全米では、最終的には5億ドル(550億円)近辺の興収が見込まれているから、何と日本ではそのたった3%以下しか稼げない計算になる。「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「スパイダーマン」「ハリー・ポッター」などのフランチャイズ映画が、日本市場で全米興収の20~30%に匹敵する成績を上げていることからすると、何とも寂しい数字である。
「バットマン」シリーズの通算6作目となる「ダークナイト」では、タイトルから「バットマン」の文字が消された。それでも日本では、相変わらず商売が難しいシリーズであることに変わりはない。ある意味「ダークナイト」は、「日本では当たらなかった」と言うよりは、「全米で異常なまでに当たってしまった」と言うべきなのかも知れない。(eiga.com編集長・駒井尚文)
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi