「居眠り磐音」。時代劇の難しさと面白さとポテンシャルは? 騒動で消えてしまうには惜しい名作! : 細野真宏の試写室日記

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コラム:細野真宏の試写室日記 - 第29回

2019年5月16日更新

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

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第29回 「居眠り磐音」。時代劇の難しさと面白さとポテンシャルは? 騒動で消えてしまうには惜しい名作!

2019年5月13日@松竹試写室

当初の予定通り今週の金曜日(5月17日)に公開される本作「居眠り磐音」は、本来は割と多めに試写会が行われていた作品でしたが、突然3月13日に「例の事件」のニュースが世の中を駆け巡り、その後に各社が苦渋の決断をしました。まさに、ちょうど私がそろそろ見てみようかと思っていたタイミングで、危惧していた「マスコミ試写会延期のご案内」というハガキが届く展開に…。

最悪、最終版の試写が回らないのかもと覚悟していましたが、制作陣がひたすら頑張り何とか再撮も編集もこなし「試写会再開」のお知らせがきましたが、回数はわずか4回だけ。マスコミ向けの資料もわざわざ作り直したりと苦労がうかがえます。

試写会冒頭に、宣伝の人が「この度はマスコミの皆様には大変ご迷惑をおかけしました」というお詫びの言葉もあり、「いや、松竹は悪くないと思うんだけど…」と少し複雑な気持ちになりましたが、とりあえず無事に試写は始まりました。

画像1

まず、最初に思ったのは「言葉の課題」でした。時代劇の難しさの一つには、言葉の壁があります。そのため近年では「ほぼ完全に当時の言葉」だけではなく、「部分的に当時の言葉」、さらには「あえての現代語」という作りに分けられます。この作品は、基本は「本格的な時代劇」を意識している分、意外と言葉は当時のものがあり(形式としては半々くらい?)、その時代の言葉の壁にやや馴染めなかったことに加え「序盤の怒涛の展開」もあり、出だしは少し戸惑ってしまいました。

結果、これから見る人は、最初の大まかな設定だけは知っておいたほうが良さそうなので、簡単な設定だけ解説しておきます。

あらすじには【主人公・坂崎磐音(松坂桃李)は、故郷・豊後関前藩で起きた、ある哀しい事件により、2人の幼馴染を失い、祝言を間近に控えた許嫁の奈緒(芳根京子)を残して脱藩。すべてを失い、浪人の身となった】とありますが、主人公の松坂桃李の幼馴染は、柄本佑杉野遥亮で、なんと(?)柄本佑には2人の美人姉妹がいて、1人はすでに杉野遥亮と結婚していて、もう1人は松坂桃李と婚約している状態です。(佐々木蔵之介が師範をしている)江戸の道場に修行に行っていた幼馴染の松坂桃李柄本佑杉野遥亮の3人が道場で最後のやり合うシーンから始まり、そして晴れて故郷に戻るところから物語が始まります。この修行で「3年も家族や恋人らに会えていない」という状況が、その後の大事な展開への理解度に関わるので押さえておきたいところです。

画像2

さて、だんだん作中の言葉に慣れてきて作品に入り込んでいけましたが、時代劇初主演とは思えない松坂桃李の演技も良かったですし脚本の出来も良く非常に味わい深い作品でした。

「時代劇」は日本の大事な文化で制作費はかかりそうですが、やはり消えて欲しくないジャンルです。でも、どこかパターンのようなものを感じたりもしていました。

ところが本作は良い意味で「特に奇をてらった作風でもない正統派な時代劇」でしたが、恋愛要素、本格殺陣によるアクション要素、そして頭脳戦などの様々な要素がバランスよく構成されていて全く飽きず、私の中では時代劇における数年に1本規模の当たり作品でした。

近年は「武士の家計簿」など、お金関連作品も増えているようですが、本作も意外なところで「お金の話」がかかわってきて、時代劇の別の意味での楽しさが上手く展開されています。

個人的には「空飛ぶタイヤ」では「あと一歩」と感じてしまった本木克英監督ですが、ようやく本作で力量を存分に発揮できたようでうれしい限りです。

日本テレビが主導した作品のようなので、テレビの宣伝効果を期待して興行収入は10億円突破が第1関門でしょうか。苦労した分、最終的には作品のクオリティーで平日も着実に伸ばして15億円規模まで行ってくれたらうれしいですね。

騒動で存在が消えてしまうには、あまりに惜しい名作です!

[筆者紹介]

細野真宏

細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

 発売以来9年連続完売となっている2019年版の「家計ノート 2019」(小学館)が発売中!

 首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

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