コラム:細野真宏の試写室日記 - 第208回
2023年5月19日更新
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
試写室日記 第208回 「ワイルド・スピード」最終章「ファイヤーブースト」で注目すべきポイントと興収見通しは?
2001年から始まった「ワイルド・スピード」シリーズが5月19日公開の「ワイルド・スピード ファイヤーブースト」で遂に最終章を迎えます。
そこで本作の注目点を“ネタバレなし”で簡単に確認してみます。
まず、この「ワイルド・スピード」シリーズは、日本も含めて世界中で大ヒットをしていて、「ユニバーサル・ピクチャーズ作品で最も稼いでいるシリーズ」になっています。
これは、一言でいえば「継続は力なり」ということで、この22年間のうちに(スピンオフ作品を除いて)本作で第10作目となるくらい、かなりのスピードで作られ続けていることが背景にあります。
そして、「作れば世界中で大ヒットする」という珍しいシリーズであることも重要です。車を使った圧巻のアクションシーンが満載で、見れば自然と引き込まれる作品となっているのです。
とは言え、登場人物が回を追うごとに増え続けていたり、メインキャストのポール・ウォーカーがプライベートで事故死したりと、シリーズ作品を作り続けるハードルが上がっています。
「ドル箱シリーズ」になっている「ワイルド・スピード」シリーズですが、本作「ワイルド・スピード ファイヤーブースト」で最終章に突入し、次作で終結の予定となっています。(スピンオフ作品は除く)
ちなみに、これまでは次作が完結編のはずでしたが、ここにきて3部作構想が出ていたりして、最終章は、「前編」「後編」の2部作なのか、「前編」「中編」「後編」の3部作となるのかは、未定のようです。
いずれにしても、本作は、「最終章の前編」という位置付けなのです。
最終章のテーマは、「最狂」の敵・ダンテ・レイエス(ジェイソン・モモア)から、ドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)が「ファミリー」を守るということです。
この「最狂」の敵・ダンテというのは、2011年の第5作目「ワイルド・スピード MEGA MAX」で登場した「ブラジルの麻薬王エルナン・レイエス」の息子なのです。
本作でも「振り返り映像」として登場しますが、「ワイルド・スピード MEGA MAX」の「巨大金庫の強奪シーン」で思い出す人も多いでしょう。
車を使っての「巨大金庫の強奪シーン」では、リハーサルの段階で本物の車を190台規模で破壊していくという力の入れようで、あの大迫力アクションシーンにおける「敵役」がダンテの“ファミリー”だったわけです。
ここまでは公開前に解禁されている情報でしたが、私は「あれ、シャーリーズ・セロンが演じる“サイバー攻撃を仕掛ける頭脳派”のサイファーは?」という疑問が出てきました。
というのも、第8作目「ワイルド・スピード ICE BREAK」、第9作目「ワイルド・スピード ジェットブレイク」で“超強敵ぶり”を発揮していて、このまま「サイファーVSファミリー」という構図で終わると思っていたからです。
もちろん、本作でもサイファーは登場しますが、どのような感じで登場するのかは見どころの1つでしょう。
また、今回から「キャプテン・マーベル」などで有名なブリー・ラーソンが「ミスター・ノーバディの娘」という設定で、「秘密諜報機関の工作員」として登場します。
私が本作において気になっていたのは、「ワイルド・スピード」シリーズを牽引していたジャスティン・リン監督が途中降板し、「トランスポーター」シリーズのルイ・レテリエ監督に変わったことでした。
ただ、本作を見て確信したのは、良くも悪くも「ワイルド・スピード」シリーズは、登場人物などを覚えていなくても、基本、大迫力のカーアクションシーンが満載であればファンは満足なのだということ。
もはや「何でもアリ」レベルのアクションシーンが頻発していて、ストーリーに関しては、シンプルに「最狂の敵・ダンテVSファミリー」という軸だけ押さえておけばいいと思います。
さて、本作の興行収入ですが、前作の第9作目「ワイルド・スピード ジェットブレイク」では、2021年公開でコロナ禍の影響がありながらも興行収入36億6700万円となっています。
これまでのシリーズ最高は、最高傑作として名高い第7作目「ワイルド・スピード SKY MISSION」で火がつき、40億5000万円を記録した第8作目「ワイルド・スピード ICE BREAK」です。
そのため、最終章として有終の美を飾るべく、「興行収入40億円コンテンツ」にするためにも本作では興行収入40億円突破が大きなミッションでしょう。
この「ワイルド・スピード」シリーズは、地方は車社会ということもあり、通常の映画よりも「地方の映画館が元気になる作品」という特徴があります。
地方経済を盛り上げるためにも、最終章という「ブースト」効果に期待したいと思います!
筆者紹介
細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
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Twitter:@masahi_hosono