コラム:Celeb☆Graphy セレブ☆グラフィー - 第40回
2016年3月1日更新
【特大号】何がそんなにスゴいんだ!?「デッドプール」大旋風の秘密に迫る!
いま全米で爆発的に大ヒットしている異色のスーパーヒーロー映画「デッドプール」。日本上陸の6月まで待てない!ということで、デッドプールって何者?ってところから、映画のどこがスゴいのかまで、昨年のコミコンの模様も交えながら大旋風の秘密に迫ります。もちろん、ネタバレはなし!
●そもそも「デッドプール」って何者?マーベルコミック原作の「デッドプール」は、突然変異で特殊能力を身につけた人類“ミュータント”の戦いを描く「X-MEN」シリーズのスピンオフ。主人公のデッドプールことウェイド・ウィルソンは、「the Merc with a Mouth」というニックネームが示す通り“おしゃべりな傭兵”。元々は普通の人間でしたが、ガンを治療するためにある人体実験の被験者となり、驚異的な治癒能力を手に入れた後天的ミュータントです。映画では2009年の「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」に登場し、この時ウェイド役を演じたライアン・レイノルズが本作で主演と製作を務めています。レイノルズ自身も、「おしゃべりで、皮肉めいたことを言うのが大好き」なんだとか。
●コミコン熱狂!ファンのハートをわしづかみ2015年7月、世界最大のポップカルチャーの祭典「サンディエゴ・コミコン・インターナショナル」で「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に匹敵する熱狂ぶりだったのが、この「デッドプール」。キャラにもレイノルズにもさほど興味がなかった私は「やっぱ本場のファンはアツいな~」くらいにしか思っていなかったのですが、R指定版の予告編を現地で見てブッ飛び。やばっ、めっちゃ面白い!!! 「キック・アス」の痛快さ×「テッド」のエロばかばかしさにテンションがあがって、気づけば6500人のギークたちと一緒に大喝采していました。
そして驚いたのは、テストフッテージの流出騒動が引き金となって映画化が実現したってこと。レイノルズは開口一番、「1年前この会場にいたクソッタレが映像をネット上にリークしてくれたおかげで、俺たちはいまここに立っているんだ」と毒舌で感謝していました。この映像では、デッドプールが画面の向こうから視聴者に語りかけきて、ハードなアクションの間もペチャクチャとジョークを飛ばし続ける“おふざけ感”によって、キャラの神髄がばっちり描き出されています。
「デッドプール」の企画自体は09年に始動したのですが、レイノルズ主演のDC映画「グリーン・ランタン」(11)が大コケしたうえ、レット・リース&ポール・ワーニック(「ゾンビランド」)の脚本はエログロ満載でR指定が確実だったため、製作を手掛ける米20世紀フォックスは尻込み。それでも、VFX畑出身で長編初メガホンのティム・ミラー監督たちが諦めずに粘り続けた結果、リーク映像を見たファンたちが映画化実現を熱望し、スタジオはようやく重い腰を上げてゴーサインを出しました。苦難を乗り越えてきた本作は、コミコンでロイヤルファンの心をわしづかみにし、大成功へ向けスタートを切ったのです。
●型破りなプロモーションが面白すぎるコミコンの大熱狂から公開までの7カ月間のプロモーションも、とにかく型破りで笑えるものばかり! ハロウィンの時は、デッドプール(レイノルズ)が放送禁止用語を連発しながらX-MENのコスプレキッズたちに絡み、バレンタイン前にはテレフォンセックスのCMみたいな動画が公開。イギリスでは、「今夜、自分のアソコをさわろう」なんてドキッとするものまで。デッドプールが言うといやらしく聞こえるけど、実は「前立腺ガン/乳ガンの早期発見のためにセルフチェックをしましょう」って啓蒙キャンペーンだったんです。その他にも絵文字やラブストーリー風のビルボードなど遊び心たっぷりのPRを展開。ウィットに富んでいるから、オタクじゃない人だって「見たい!」って思いますよね。
●おちゃらけてるだけじゃない!キメる時はキメるおちゃらけてばかりかと思いきや、アンチヒーローもヒーローのうち、キメる時はビシッとキメるんです。全米公開の約2カ月前、誰よりも早く作品を鑑賞するチャンスに恵まれたのは、白血病と闘う13歳のカナダ人少年コナーくん。レイノルズはコナーくんとの2ショット写真をFacebookに投稿し、治療費の寄付を呼びかけました。やっぱりヒーローだもん、人々に夢と希望を与える存在じゃないとね。
●“アベンジャーズ”も夢中!満を持して2月12日(現地時間)に全米公開されると、あの「アベンジャーズ」のメンバーも夢中に! アイアンマンでおなじみロバート・ダウニー・Jr.と、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース役のクリス・エバンスがツイッター上でデッドプールの争奪戦を繰り広げたんです。まずエバンスが「デッドプール最高!」とつぶやいたところ、レイノルズは「#TeamCap(チーム・キャプ)」へ仲間入りを希望。これを見たダウニー・Jr.が「口汚いせいでロジャースにシメ出されたら、私に連絡してくれ」と横ヤリ。すると、エバンスは「何言ってんだよ、俺自身は口汚いの大好きなんだぞ!」と食ってかかりました。アベンジャーズを二分する大戦を描く「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」(4月29日公開)で対立する2人が、現実でも火花を散らすなんて事件でしょ?
●ハリウッドのR指定ブームの起爆剤にこうして全米で大旋風を巻き起こした「デッドプール」は、公開初日3日間で興行成績1億3200ドル(約150億円)をたたき出し、全米ランキングぶっちぎりの首位デビュー。17歳未満の鑑賞は保護者の同伴が必要なR指定映画のオープニング記録など数々の記録を更新しちゃいました。3週連続でトップを突っ走り、全米興収2億8500万(約325億円)を突破し、R指定の歴代ランキングでも「マトリックス リローデッド」を抜いて第3位まで浮上しています(Box Office Mojo調べ、2月29日時点)。
これまでのアメコミ映画ではPG-13指定(13歳未満の鑑賞には保護者の強い同意が必要)が常識でしたが、本作の大成功を受け、20世紀フォックスは「ウルヴァリン3(仮題)」をR指定にすることを検討中だとか。一方、マーベルコミックと双璧をなすDCコミックがワーナーとタッグを組んだ「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」(3月25日公開)では、DVD/Blu-RayにR指定の「アルティメット・エディション」を収録することが決定。その他にも、ハリウッド実写版「デスノート」やスティーブン・キング原作の「IT」もR指定になりそう。アメコミ映画に限らずハリウッド全体でR指定ブームの起爆剤になった「デッドプール」はどれほど過激なのか? これは絶対に映画館の大スクリーンで確かめないと。日本公開が待ち遠しい!!