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イッセー尾形、日本初の漫画家に「芸術家ではなく、大衆と共にあらんとしたした方」

2019年11月30日 07:00

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“近代漫画の始祖”と称された漫画家・北沢楽天を演じたイッセー尾形
“近代漫画の始祖”と称された漫画家・北沢楽天を演じたイッセー尾形

俳優のイッセー尾形が、“近代漫画の始祖”と称され、明治から昭和にわたって活躍した漫画家・北沢楽天(きたざわ・らくてん)を演じる映画「漫画誕生」が公開された。風刺画を“漫画”という一ジャンルとして確立させた功績を残すものの、時代と共に表現を変えたことがあだとなり、大衆にその存在を忘れられていった人物でもある。知られざる日本初の漫画家への思いや役作りについてイッセーが語った。(取材・文/編集部 撮影/松蔭浩之

新鋭、大木萠監督からの熱烈なオファーを受けた。「楽天さんの存在は知りませんでした。台本が送られてきたので、面白いところに目をつけるなあ、と思って。若い監督でしたが、これは映画にしなきゃいけないという熱意と信念を感じました。楽天という人物は、時代の寵児でもあり、俗物でもあり、複雑な時代の動きで視点が変わる人。一世風靡したものの、だんだん忘れられていく一人の男の人生と、彼が生きた時代を共に描き出すスケールのある作品ですし、自分と顔も似ているような気がして親近感が沸き、お受けしました」と出演のきっかけを明かす。

実在した人物を演じるにあたってのリサーチは、数枚の写真と、楽天が描いた絵を見て想像したという。「最初はイギリスなどの風刺画を模倣して、日本の政治家を揶揄したり、そこから自分のオリジナルを見つようともがいた時間が楽天さんにしっかりあるんだなと。模倣から入って、どうオリジナルに辿りつくか。達成できたかどうかはあやふやですよね、達成する前に戦争が終わったのかなと。ある意味、悲劇でもあるんです。時代のせいだと一言で言えなくて、楽天にも時代と懇ろになろうとする、俗物的なものがあったのかもしれない。そういうところもひっくるめて、わかるなあって」

画像2(C)漫画誕生製作委員会

そんな楽天の人間らしい一面に惹かれた。「そういう人の方が、頑として心が揺れない人より魅力を感じるんです。相手が時代だったり、大衆だったり、味方になったり敵になったりとダイナミックに揺れるところに惹かれます。彼は超芸術家ではなく、大衆と共にあらんとした方だと思うのです。楽天の作品は、ぱっと見て、大衆が喜ぶ実感を繰り出し、時代そのものを絵にしていく浮世絵みたいなもの。彼はそれを繰り返していくけれど、より斬新な発想で作る若い世代が出てきて、楽天は古い…ということなって。そして、戦争がきて、戦時下の大衆が喜ぶものを描く。その後は戦争をやったことを批判するようになる。そうすると、楽天は戦争に加担した漫画家となり、今度は大衆が楽天批判をするようになる。そこにはダイナミックな価値観の変貌があった。ドイツなどいろんなものが変わった国でも同じことがあったのではないでしょうか」と、敗戦による時代の変化が、楽天が大衆から見捨てられた理由ではと分析する。

本作の山場のひとつが、楽天が検閲官と対峙する白熱の尋問シーンだ。「役者とは創作者以外の何者でもありません。楽天さんのセリフも、模倣であり、誇張であり、デフォルメであり、機知である。でも、そこに言い足りないものがある、それはどうしても言葉にできないもの。肝心要のところは言葉にできないということを大切に思っているのではないでしょうか。検閲官は言葉だけで攻めてきますが、その一方で、そんなことを考えながら演じました」と振り返る。

楽天の存在が、手塚治虫ら日本を代表する漫画家や作品を生み出したといっても過言ではない。イッセー自身の漫画への思い入れも深い。「僕は漫画世代で、少年マガジンと少年サンデーが小学校3~4年の時に出て、ちばてつやさんの『ちかいの魔球』とか、横山光輝さんの『鉄人28号』などを模写していました。本格的な油絵とかそういうのじゃなくて、漫画家に憧れていた」と明かし、近年は、なんとその思いを演技に応用するという試みに挑んだ。「『アシガール』という漫画がドラマ化されて、それで戦国時代の爺の役をやりました。そのとき、紙のようにぺらぺらな漫画のように演じたいなと思ったんです。でもどうしたって、紙にはならない、漫画になれない身体がある。そういうことを楽しもうと思って。今、漫画原作の映像作品は、人間ぽく演じるでしょ、僕は反対に漫画っぽくやりたかったんです」と、楽天同様に創作者としての挑戦は尽きない。

さらに、「役者はある人物を演じますが、現在の自分しか演じられない。いつだって過去そのものを演じることはできない。でも、悔しいじゃない、過去を演じられないって。若い時を演じろといわれたら、それは若い時の今でしょ。これだけ過去があるのにもったいない」と、新しい表現を模索している。「役者には知らない可能性がまだまだあって、その可能性を信じています。信じるのが役者の仕事」と、自身の俳優哲学を語った。

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