綾野剛、“嘘をつかない”から“本物を隠す”芝居へ
2011年12月16日 17:30

[映画.com ニュース] 孤独な男女の恋愛模様を描いたラブストーリー「孤独な惑星」が、12月17日から全国で公開される。「オーバードライヴ」の筒井武文監督が、映画美学校の“フィクション高等科コラボレーション企画”に参加し、学生と共同で製作。もどかしい距離感で展開される三角関係を演じた俳優・綾野剛が、撮影が行われた2008年を振り返り、自らの成長を語った。
撮影から3年半を経ての公開は「映画って生き物ですから、1番良いタイミングを逃しているんじゃないのかっていう感覚がある。この3年半で得たものも失ったものもたくさんあります。あのときの僕はどこにもいないんです」と戸惑いも大きかった様子。それでも、完成した作品は「時代に左右されない。人の生き方、考え方はまったく変わらないんだなと思った」。
個性的な役どころを多く演じてきた綾野は、「Life ライフ」などは「芝居で嘘をつきたくないからとことん突っ込んで、自分のすべてを犠牲にしてでも役になりたいと思っていました。でも、真っ直ぐな半面、自己満足のナルシズムの独りよがりになってしまった」。現在でも「自分の記憶、考えが邪魔になる」という徹底ぶりを見せるが、「嘘をつきたくないという観点から、本物になりすぎることを隠したい」と姿勢が変わった。「人を殴るシーンの場合、本物を追求して実際に殴ってしまうと、お客さんは作品から離れてしまう。本物を見せすぎて引かれたら終わりだけれど、ギリギリまでは突き詰めてみたい。勘でやっていた芝居が徐々に実力に変わっているとは思います」と自信をのぞかせる。

身を削るような役作りを行ってきたなかで、本作はフラットな姿を見せている。「僕を見た彼女の感情をハガキが燃えることで表現したファンタジーなんです。外枠はファンタジーで、作品のなかで生きている人間はナチュラルにやっていました」。女性を翻ろうする役どころは、「僕自身が97%子どもで出来ている(笑)。ふたりの女性を通して、この男性像がどう見えてくるかが面白い。素直さって絶対的に持っていなきゃいけないけれど、人を壊したり、傷つけたりしてしまう」と分析した。
「GANTZ」「うさぎドロップ」など話題作への出演が続く綾野にとって、本作は「大作でもなく、実験的でもない映画らしい映画」だ。「1分で3万円投げて捨てるような価値のあるフィルムを使用したので、今の若い人たちが知らないような緊張感を経験できた。昔の役者たちが緊張感をたかぶらせ、その瞬間を激動に放ちながら作品のなかでどう生きていたのかを感じることができた」と次なるステップへとつながったようだ。
「孤独な惑星」は、12月17日から全国公開。
(C)映画美学校/筒井武文
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