雨を告げる漂流団地のレビュー・感想・評価
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他のレビューさんが言いたいことは分かる。
他のレビューさんが言う通り、2時間10分とストーリーに対して話が長い印象があります。
先にマイナス点を上げれば、
小学生と言えば小学生。漂流団地というようにサバイバルシーンもある中で仲が良く一致団結して壁を乗り越えるかと思いきや、またすぐに仲間割れを起こす。もう少し一致団結してる姿を映して欲しかったです。一致団結、仲間割れの流れを2、3回は繰り返してるので視聴者も飽きてしまい「?」となる点かと思います。
さて、ここからは自分が言いたいことを言わせてもらいます。
自分も小学生まで団地民で、取り壊しにより転校しました。下の階には家族同然の幼馴染もいました。今は中々ないあの団地の人間関係や空気感。それが瓜二つに表現されており、映画を見ながら凄い感動し、当時の思い出が鮮明によみがえります。
夏芽がわかままとか往生際が悪いとかコメントありますが、それは違います。あそこが私の家だったんです。命に変えても守りたかった居場所なんです。自分も団地から引っ越しては取り壊しするまで何度も足を運びました。今でも正直あの団地が取り壊された事を寂しく思います。さて、漂流団地はそんな夏芽と航祐の2人がずっと居たかった居場所にお別れを言う映画です。
元団地民の皆さん。あの懐かしい頃に戻ってみませんか?
とても謎めいていて、感性で楽しむ映画です。
結論からいうと、観終わった後に、「???」となる映画です。
謎めいた感じのストーリー展開なので、一生懸命に謎を解き明かそうと頑張るんですが、どうしても理屈では理解ができなかったです。
おそらく、細かい理屈で考えずに、「直観」、「感性」で観る映画なのかなーと思います。
過去のしがらみに囚われた子供たちが、いろいろな経験を共に乗り越えていく中で、
信頼関係を回復、構築していく展開には、学びがあります。
映画の内容とは直接関係ないですが、気付きのシェアです。
子供って、ちょっとしたことで誤解し、それをずっと引きずり、回復させるタイミングを逃しがちです。
その辺を大人が察知し、臨機応変に対応していくことが大切だなと感じました。
面白いそうなのになにかが足りない
取り壊される予定の廃団地を探検しようとした小学生を乗せ、なぜか突然団地ごと海の上に…と言うストーリー。
①団地の雰囲気とかエモさもありつつなんだけど、なんかちょっと感情移入しきれず…小学生達が大人びたことを言い過ぎてる感じ。近頃の小学生はこんなこと言うのか?と思う反面、幼稚にバカバカ言い合う…高学年ならなくもないけど、なんか違和感。
②安じいのエピソードがいまいち弱い。団地の魂?はのっぽくんじゃなくて安じいの姿で出てくるぐらいでも良かったのでは。
③漂流してるけど団地内と言う限られた場所での話なので、同じところでグルグルしてる感じでちょっと中弛み。色んなことが起きると言えば起きるんだけど…
と言うことでつまらなくもないけどなんかイマイチで星3つ。
夢の中にいるみたい
↑息子に訊いた本作の感想です。
今回のレビューは私ではなく、息子の感想を書いています。Netflixで鑑賞、私は観れなかったのですが、子ども二人無我夢中で見ていました。
星5つのうち4つとのこと。満足度も高いみたいです。
小学生の子どもたちが「感動した!」と。人と人との助け合いや、温かさを感じたと息子は言っています。
作品全体を占める雰囲気が良い
ペンギンハイウェイと同じ柔らかい人物作画と明るく澄んだ夏の空気感を感じる背景が最高の作品。
他評価のレビューではすとーちー上の説明の少なさに難色を示されている人が多いようだけど個人的にはそれほど気になるレベルではなかったので楽しめた。ペンギンハイウェイでも結局のところお姉さんの正体がきちんと説明されずに終わった記憶があるがそういう点が気にならずにあの作品が楽しめた人なら今作も十分に楽しめると思う。
ペンギンハイウェイと同様作画のやわらかさや子供が主人公として活躍する点など、一見子供向け映画のようでかなり大人向けに作られた作品だと感じた。例えば今作の大きなテーマにはノスタルジーが挙げられる点。
子供のころに住んでいた団地、遊びに行った遊園地、プール施設など大人になった今施設自体が取り壊されて無くなってしまったり、もう行くことが無くなってしまったが、幼いころの自分を構成していたもの、それは多くの人が共通して持っているものだと思う。
今作はそういった思い出の詰まった建物が次々と登場し、描かれているキャラクターは少ないがそういったすべての建物に子供の姿をした付喪神が存在している。具体的に描写される付喪神は団地のノッポと遊園地(観覧車)の付喪神だけだが、プール施設で非常食をくれたのも付喪神だろうし、おそらく最初に流れ去っていった施設にも存在しているのだと思う。
そうして施設(建物)に人格を与えることでただの建物にしか過ぎないものを自分を作り育ててくれた一部なのだと認識し、感謝の念を抱かさてくれる付喪神という昔の人が作り出した概念を上手く使ったストーリーで、個人的には団地のノッポよりも終盤に登場する令依菜が幼いころに父親に連れて行ってもらっていた遊園地が一番感情移入できる施設で、幼いころに連れて行ってもらった自身の記憶を思い返すことが出来た。
そういった施設は自分の意志ではどうしようもなく無くなっていってしまう存在だが、形自体は消えてしまっても、そこで育まれた友情や愛情、思い出は消えることなく自分たちの中に残り続けている。ありきたりなテーマではあるが一つの個人が所有するモノではなく施設という日常風景の一部に焦点を当てた今作は昭和時代に作られた建物が次々と取り壊され新しい景色に代わっていく今の時代に過去を振り返り、温かい気持ちでノスタルジーに浸ることが出来るいい作品だと感じた。
「ひと夏の冒険と成長」を描いた傑作
子供たちの「ひと夏の冒険と成長」を描いた傑作です。いい年して泣いてしまいました。子供から大人までおすすめできる作品です。
ストーリーは十分わかりやすいです。最初は謎めいた要素が多いのですが、終盤にちゃんと種明かしがされます。『エヴァンゲリオン』や『バブル』のような、観終わったあとの「謎が残ったモヤモヤ感」「結局なんだったの感」がありません。
たとえば「ノッポ君」というあからさまに謎の少年が登場します。彼の正体は、最初のうちは謎のままで進行し、途中で「彼の腕に異変が起きる」という手がかりが出るけどまだ謎のまま、次に「彼の脚に鉄筋が見える」ことで正体が少しだけ見えて、そして後半に出てくる遊園地が大きなヒントになり(中学生ならここで正体に気づく)、ラストシーンで正体が明らかになります(ここで小学生でも正体がわかる)。なので小学生高学年くらいの読解力があれば十分に理解できるストーリーだし、それをわからせてくれる細かい演出が光りました。
(しかし昨今は『君の名は。』や『天気の子』ですら「ストーリーがわからなかった」という大人が多いので、そういった「SF要素(すこしふしぎ要素)を含んだ物語に不慣れな人たち」にとってはこの作品もわかりづらいのかなと思います。メジャーになる前の新海誠の作品がわかりづらいのは仕方ないにしても、『君の名は。』と『天気の子』は一般大衆向けに相当わかりやすく作られているので、さすがにこの2つのストーリーがわからないのは「SF要素のある物語に不慣れな人たち」なのでしょう。)
全体的には、「謎解きまたは回想シーン」と「ハラハラするアクションシーン」が交互に訪れるので、飽きが来ないように作られています。少し謎が解けたらハラハラするシーン、また少し謎が解けて回想が挟まってアクションシーン、という進行なので、だらけません。そんなに派手なアクションがあるわけではないのに、作画と音楽と声優の演技がすばらしいので、ハラハラして見入ってしまいました。子供どうしがケンカするシーンが多いのですが、主人公ではない男の子ふたりがコミカルな役目をするので、暗い感じがしません。
以降は細かい感想です。
まず、子供たちの描写がとてもうまかったです。「そうそう、子供ってこんな感じだよね」と思いながら観てました。特に、素直になれない男の子の声優(田村睦心)の演技がすばらしく、「これぞ男の子ーーーっ!」って感じでした。作画の良さと声優の演技のうまさが噛み合っているので、作品に没入できます。(最近の映画はジブリも新海誠も細田守も、声優ではなく役者を使うので、演技の不自然さや違和感を感じることが多く、気になって集中できないことがありませんか? やはり日本の声優は優秀だと再確認しました。)
ストーリー上、子供がケンカしたりいがみ合うシーンが多いのですが、素直になれない様子をケンカすることで表現しているので、ケンカのシーンでも「素直になれない男の子ってこうだよね」と思って観ていました。あるいは別のシーンでは、主役のふたりがいがみ合いながら力を合わせて重いものを持ち上げており、「ケンカしているけど心の奥底では信頼しあっている」ことがうまく表現されていました。なのでケンカやいがみ合いのシーンが多くてもそんなに気になりません。しかしこういった表現から読み取るのが苦手な人にとっては、「ケンカばかりしている映画」という印象になったかもしれません。
またひとつの登場物(アイテム)が複数の役割を兼ねているので、少ない登場物で多くのものを表現できていることに感心しました(尺が限られる映画ならではかも)。たとえば後半に出てくる遊園地は、謎の解明の大きなヒントになっているだけでなく、わめいてばかりの女の子(実は遊園地好き)の心情が変化する役割を果たしており、思わず心の中で「うまいな」とつぶやきました。
このわめいてばかりいる女の子は、何でも他人のせいにして非難するばかり。まるでクレーマーやモンスターペアレントのようで、いい印象がありません。しかしある時、その子を別の女の子(メガネを掛けたおとなしい子)が一喝します。それをきっかけに、おとなしかったメガネの子が行動力を見せる成長をします(作中でいちばん成長したのはこの子かも)。まあ行動力を見せたせいで大きな怪我をしてしまうのですが、今度はそれをきっかけに、わめいてばかりいる女の子が友達思いの一面を見せます。つまり、あるきっかけで子供が成長し、それがまた別のきっかけを生み出すという連鎖が起こります。話の転がり方が自然です。
「団地」という舞台装置も、最初は「なんで団地が漂流するの?」という唐突感があるのですが、観終わってみれば「そういうことか」と納得します。オープニングの、過去に時間がさかのぼって団地が表現される演出が、実にいいものだったと気づきました。二回目をみたら、もうオープニングで泣いてしまいそう。
映画としてとても満足できる作品でした。近年のジブリ作品に満足できていない自分にとって、また新海誠の二番煎じのような作品(←『バブル』!お前のことだぞ!)が多い現状を嘆いている自分にとって、本当にすてきなオリジナルアニメーションでした。制作会社のスタジオコロリドと、石田祐康監督、関係者の方々、ありがとうございました。また今まで存じておらず、申し訳ありません。過去作も含めて、これから注目していきます。
あの子供たちがこれから幸せでありますように。
ふわっとしてる
序盤はフロリダに行く女の子があんたのせいでこんな目にあってんのよ!とのっぽ君やなつめにキレるみたいな展開が3回くらい序盤で行われます。中盤で親友が怪我した場面でもあんたのせいで!ってキレます。この女の子がワンパターンでキレているので成長を感じられずなんかなぁって感じでした。またこのフロリダの女の子の思い出の地であった観覧車の建物にいた女性の掘り下げが全くなかったし説明なしにいきなり出てくるのでお前誰やねん状態が長く続いたのもモヤモヤしました。フロリダの子の回想シーンでも流すなりしたらもう少し観覧車のキャラを出した意味が出るかなぁと…
なんで団地は漂流しているのか、昔壊された建物達もなぜ漂流しているのか、色々謎はありましたが全く説明なくフワッとしたまま終わってしまったのが1番残念です。
全体的に謎
なんとなく、少年たちの夏の終わりの冒険的な物を
想像していたのだけど、
漂流する所から謎が始まり、
観てる者を置き去りに話は漂流して行く。
そんな映画でした。
過去に団地で何があったろう事は仄めかしてはいるん
だけど、何があったかはしっかりは明かさず、
なんとなく気まずい関係なナツメとコウスケ。
不協和音のまま団地で漂流する仲間たち、と
全体的に重い空気を感じて、
少年たちだけで漂流すると言うアニメならではの
ワクワク感を感じられなかったのが、
僕的には残念でした。
漂流の理由やノッポくんもイマイチ説得力にかけるし
クライマックスも謎展開と言う感じで
ポカーンとなってしまいました。
過去を引きずったままではいけない。
過去を糧にして素晴らしい思い出として、
前に進んで行かないといけないな。
そんなところでしょうか?
大人になろうとするがやはり子供
長い。
伝えたい事をこっちで考えるんだが、なんかピンとこない。ピンとこないままハッピーエンド。なんとなくの解釈でそーゆう事なのかな?こーゆう事なのかな?と考えてみるが、やはり謎。
一つ一つ困難を乗り越えそうで、、、やはり子供。
大人向けに作ったのか?子供か?
んーーー
映像や声優さんは申し分ないのに、脚本が同じ波形を繰り返しているような作品でした。
現状今年で一番印象に残った映画
寿命を迎えた思い出の建物と、その建物に付いているいわゆる付喪神が、その役割を終え、此岸から彼岸に向かう際に子供達が巻き込まれてしまうという展開です。 広大な海にぽつんと団地が浮いているのが印象的ですが、その海はいわゆる三途の川ですね。 海の底には、沈みかけているものを喰らう何かが存在しているようで、海もずっと天候が良いわけではないので彼岸にたどり着ける建物は限られているようです。
食糧も限りがあり、そんな過酷な状況を子供達は生き抜きます。 子供向けな雰囲気の絵柄とは対照的に、ヘビーなシナリオになっており、劇伴も重厚感があり大人でも楽しめました。
主人公とヒロインの間にあるわだかまりを解消していく物語でもあるのですが、1段、2段と解消されていく(わかり合う)さまが見ていて気持ち良かったです。クライマックスで完全に解消されるシーンは本当に素晴らしいです。泣けます!
ツンツンな少年少女の話
取り壊し間近の自分達が元住んでいた団地。
団地に出るという幽霊を捕まえようと無断侵入するアホな少年達。
何故か取り壊し団地に住んでいる謎の少年、通称ノッポ。
突然の豪雨の後に少年少女のいた団地の一棟だけ大海原に放り出され…
いやシュールだ。何故団地の一棟だけ海の真ん中で進んでいる(流されている?)。
要するに漂流物の冒険譚だ。そこから彼らのサバイバル生活が始まるのだった。
メインの少年少女は小さい頃からご近所さんで近しい関係故にお互いの想いとは裏腹にツンツンだ。まあ小学生のガキだから仕方ない。
他の少年少女もお互い助け合いいがみ合いながらも生きていき成長する。
さて彼らの運命や如何に?
少年文学作品みたいなアニメ。
話のテンポも良く作画も良い。悪くは無いがよくも無い。
なんだか同じ様なシーンや印象のあるシーンがあるしくどく感じた。もっと色々削って良かった。有っても無くても映画自体や主人公達が受ける印象は何も変わらない。もっと整理して良かった。無駄に細かく作りすぎた。
なのでテンポが良くても無駄に上映時間が長いと感じる。
ネタバレにならない程度に、団地や他の漂流物や海は意味があり謎の少年ノッポも含めて見ていけばああそう言う事かと分かる作りは良いのだが、
壮大なスケールの割になんか内容がこじんまりしている。少年少女が冒険で成長しました、それだけ。それが悪いとは言わないが構成的に物足りなさを感じてしまう。何というかちょっと残念。
のっぽくんから主人公へ引き渡されるものが欲しかった
話の展開を、のっぽくんに頼りすぎたのでは、と思います。
「のっぽくん」が活躍すること自体は良いと思いますが、
そもそも超常的存在なので、彼の制約がどこにあるかわからないので、
「なんでもあり」にも感じてしまいます。
それと、何もかも、のっぽくんが抱えたまま、消えていった感が否めなかった。
何を抱えていたのか、想像をめぐらすことも難しく、
置いてきぼりにされた感がありました。
どこかで主人公たちに何かを引き渡す必要があった気がします。
そうすれば、前向きに主人公たちが物語をドライブする感じが出たのでは、と思います
主人公が苦手
小学生の夏芽は取り壊しの決まった団地内で同級生と共に一面が海の世界を漂流することになり…。
スタジオコロリド制作の長編アニメ映画。小学生と言う設定にしては全体的に大人びている風に感じるが、すぐに開き直る夏芽の性格が苦手で主題に集中出来ませんでした。
突き放されてモヤる
子どもたちの感情の起伏、その絵と声の演技など、実に豊かな表現はさすがの石田監督作品。
『ペンギン・ハイウェイ』の海の中や水だらけの街を進むシーンを120分みたいな異次元迷い込み冒険系で、世界はファンタジーなのに、子どもが次々と傷ついていき、生死ギリギリの冒険になっていくのが、『メイド・イン・アビス』にも似た残酷なリアリティを伴うものでした。
ただ、子どもを描いているから仕方ない部分もあるけれども、意地の張り合いや、気まずさからの逃避が長すぎる。
対して、団地が漂流した理由や、のっぽの正体などを説明せずに、「感じてね」と突き放したところが、「わからない」「モヤっとする」みたいな感覚を生んでしまう。
主題は、子ども同士がちょっとした言葉の行き違いで、お互い謝れずに気まずくなることと、それを突破して分かり合えることにあり、漂流の理由は明確じゃなくとも快感ポイントはあり、映画として成り立ってはいますが……
脚本の拙さ、刈り込みの甘さが際立ち、後半がダレてつまらなく感じてしましました。
感情のやりとり部分の段階を区別し、漂流の理由をきっちり描き(例えば「落下して死にかけた女の子を助けたいと願った『付喪神』の神通力とかでもいいんだ)、85〜90分に収めたら、多分名作になっていたと思う。
それだけに、もったいなかった。
このままだと配信で倍速再生向き。
かつて無いクラスの駄作
🎥ペンギンハイウェイを作った人間と同じ人間の作った映画とは思えない❗こんなもの世に出してはいけない。怒りすら覚える。映画館で見たらどこかに八つ当たりをしていたことだろう。解釈しようと思えばできなくはないが、それにしても支離滅裂。シナリオの回収はお粗末以外の何物でもない。絵コンテの段階で破棄すべき代物。日本アニメ史の栄光を汚したと言って良い。どうしてこれを発表したのか首をひねってしまう。猛省してほしい。
団地やジュブナイル・ファンタジーに乗ったのはいいが、漂流したまま…
『ペンギン・ハイウェイ』『泣きたい私は猫をかぶる』に続く、スタジオコロリドの長編最新作。
『ペンギン・ハイウェイ』は好きで、本作も魅力的な要素をたっぷり。何より気鋭のアニメスタジオの最新作。期待していたのだけれど…
タイトルからも分かる通り、団地が舞台。『ペンギン・ハイウェイ』に続いて監督した石田祐康が最もこだわった点だという。
確かに団地って、何か描ける。『団地』『海よりもまだ深く』『クロユリ団地』『中学生円山』などなど、団地を舞台にした作品は様々なジャンルを基に意外とある。
団地って、何か思い出が詰まってる。これは『海よりもまだ深く』のレビューに書いたと思うが…、私自身は団地に住んだ事無いが、その昔、祖父母が団地に住んでいて、日曜になると両親と共に会いに行っていた。近くに公園もあり、団地自体が格好の遊び場であり、団地は私の幼少期の思い出の一つになっている。
ノスタルジーを感じさせるだけなら、何も実写でいい。劇中でも触れられていた祖父との思い出とか、かつて住んでいたが今は取り壊しが決まった団地とか。
そこにアニメーションならではのファンタジーとジュブナイルを加味。
題材や設定だけなら、これはもう“当たり”!
夏休み。小学生の男子女子6人が、とある事から“おばけ団地”と呼ばれる団地へ。すると不思議な現象が起こり、大海原の異世界へ。ここは一体…?
この団地は航祐と夏芽がかつて住んでいた思い出の“家”。かつては姉弟のように仲良かったのに、航祐の祖父の死をきっかけに関係がギクシャクし、団地からも引っ越し…。訳ありの仲。
そんな団地に乗って、大海原を行く。冒険というより確かに漂流という言葉の方が合っているが、その風変わりな設定に童心ワクワク。
この団地にずっと居るという謎の少年・のっぽ。異世界で出会った謎めいた同世代は、ジュブナイル・ファンタジーの王道。
少年少女たちが織り成す友情、喧嘩、協力、淡い関係。出会いと別れ…。
団地漂流は快調なものだけではない。食糧調達、漂流団地だけではなく、“漂流学校”や“漂流デパート”の近接でピンチ。行く手を阻む嵐…。漂流ジャンル必須のサバイバル。
不思議な体験や危機を乗り越えて、少年少女たちは元の世界に戻れるか…?
一つのジュブナイル・ファンタジーとして悪くはない。
アニメーションならではの世界観や表現も活かされている。
が、難を感じたのは演出や脚本、キャラ描写、今一つ釈然としない描写などなどなど。
キャラにどうも感情移入や共感出来ない。
特に、夏芽。「大丈夫」と顔で笑うが、実際は大丈夫じゃない事ばかり。航祐との関係、クラスメイトとの関係、母親との関係。何もかも過去の思い出の中に残ったまま。
それが原因で時折皆を危機にさらす。団地が沈み始め、当初はイカダに乗り換えて避難しようとするも、残ると言い出したのっぽを見捨てられず、土壇場になって自分も残る思わぬ行動に。出会った友達を見捨てられない純粋な気持ちからかもしれないけど、それが原因で皆を危機に。迷惑な自分勝手少女に感じた。
航祐のキャラも焦点が定まらない。クラスメイトもステレオタイプ。令依菜なんて夏芽を邪険にし、人一倍ギャーギャーうるさい。
お決まりのように喧嘩して、仲直りして、また険悪になって、絆を深めての繰り返し。イライラすらした。
何か、何も学んでないと言うか、それでご都合主義のように友情物語を見せられても…。要は、キャラ一人一人に魅力が薄いのだ。
最たるは、のっぽ。掴み所が無い。人間でない事は展開していくにつれ分かるが…、正体は謎のまま。
終盤に登場した遊園地の少女も、そもそも漂流団地や大海原異世界も、謎のまま。
青い光や辿り着いた地も、“?”。
一応何となく予想は付くが…、のっぽや遊園地の少女は子供たちを見守ってきた存在の具現化。異世界大海原は現実と虚構の境。漂流団地は過去にしがみつく思い出のメタファー。最後の地は、別れ。
見る人に解釈を委ねているのかもしれないが、そんな知的なものは感じられず、丸投げ状態。
もうちょっとこの部分、しっくり来る理由付けが欲しかった。
だって見た後も拭い切れないこの不完全燃焼感。
う~ん…。
題材や設定はいいだけに、何か非常に残念。惜しい。
作品自体が漂流し、見ているこちらも漂流してしまったような…。
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