神波史男 : ウィキペディア(Wikipedia)
神波 史男(こうなみ ふみお、1934年1月10日 - 2012年3月4日)は、日本の脚本家。深作欣二の信頼が厚かった脚本家として知られる。
来歴
東京市方南町生まれ。小学校の時、集団疎開で長野へ行き、終戦後、永田町小学校に転入。1952年に東京都立日比谷高等学校、1956年に東京大学仏文科卒業。同級生に佐藤純彌、降旗康男、中島貞夫らがいた。
1958年、東映へ入社。映画界を志したのは「チンピラ左翼崩れの愛情乞食。安酒くらいの告白屋。そういうみっともない自分を破壊するには、なぜか映画に入るのが一番と思った」からという。
入社後は企画本部脚本課配属となったものの、すぐ助監督部へ出向となる。しかし、基本給1万円で残業手当が3万円を超えるなど、過酷な労働環境に音を上げ、自ら脚本課への復帰を嘆願。これが認められ、以後、脚本家の道を歩む。
1960年、『おれたちの真昼』で脚本家デビュー(同期の小野竜之助との共作)。完成試写を見た企画本部長の坪井与から「松竹ヌーベルバーグに対して東映ヌーベルバーグだ」との評価を得る。以来、60作あまりの脚本を担当。またさまざまな理由で日の目を見なかった(流れた)脚本も30作を超えており(その中には同タイトルの別作品も作られるなど曰く付きの『いつかギラギラする日』もある)、その1作1作について思いの丈を綴った「流れモノ列伝 ぼうふら脚本家の映画私記」は映画関係者の回顧録としては希有な代物で、小野竜之助は「他にはめったに見ない自伝的奇書」と評している。また荒井晴彦は「脚本も脚本家も大事にされてこなかった」として「この本を脚本家志望の若者に読んで欲しい。読んで、まだ脚本家になろうという気持が失せないのなら、いい脚本家になるかもしれない」と逆説的な賛辞を捧げている。
1987年、『火宅の人』で第10回日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。
2012年3月4日、多臓器不全のため死去神波史男氏死去(脚本家) 時事通信 2012年3月8日閲覧。。。
人物
神波史男は自らを「ぼうふら」になぞらえていた。「流れモノ列伝 ぼうふら脚本家の映画私記」ではその心中をこう綴っている。
また岡野弘彦の短歌「胸底に澱のごとくに沈みくるこの悔しさに老いてゆくべし」の下の句を改変した「この悔しさに生きてゆくべし」を座右の銘としており、死後、追悼出版された本のタイトルにも使われた。
こうしたナイーブとも言える一面を有する一方、神波には空手道場「誠真会館」の名誉顧問という顔もあった。これは同道場の館長・井上誠吾との親交に基づくもので、神波の死後も同道場主催で「故神波史男先生を偲ぶ会」や一周忌墓参会などが催されている。
作品
映画
- おれたちの真昼 (1960年)※小野竜之助との共作
- 風来坊探偵シリーズ(1961年)※松原佳成との共作
- 風来坊探偵 赤い谷の惨劇
- 風来坊探偵 岬を渡る黒い風
- 荒原牧場の決闘 (1961年)※小野竜之助との共作
- 真田風雲録(1963年)※福田善之、小野竜之助との共作
- ジェリーの森の石松 (1963年)※小野竜之助との共作
- あばずれ (1966年)※渡辺祐介との共作
- 非行少女ヨーコ (1966年)※小野竜之助との共作
- 北海の暴れ竜(1966年)※佐治乾との共作
- 網走番外地 大雪原の対決 (1966年)※石井輝男、松田寛夫との共作
- 博徒解散式 (1968年)※長田紀生との共作
- 怪談 蛇女 (1968年)※中川信夫との共作
- 恐喝こそわが人生 (1968年)※長田紀生、松田寛夫との共作
- 日本暴力団シリーズ
- 昭和残侠伝 人斬り唐獅子 (1969年)※長田紀生との共作
- やくざ刑事シリーズ(東映)
- 博徒外人部隊 (1971年)※松田寛夫、深作欣二との共作
- 日本悪人伝 (1971年)
- 狼やくざ 殺しは俺がやる (1972年)
- ポルノギャンブル喜劇 大穴中穴へその穴 (1972年)※渡辺祐介との共作
- 女囚さそりシリーズ (東映)
- 人斬り与太 狂犬三兄弟 (1972年)※松田寛夫との共作
- 実録 私設銀座警察 (1973年)※松田寛夫との共作
- 前科おんな 殺し節 (1973年)※松田寛夫との共作
- 0課の女 赤い手錠 (1974年)※松田寛夫との共作
- ルバング島の奇跡 陸軍中野学校 (1974年)※高久進との共作
- あばよダチ公 (1974年)
- 新仁義なき戦い (1974年)※荒井美三雄との共作
- 仁義の墓場 (1975年)※鴨井達比古、松田寛夫との共作
- ウルフガイ 燃えろ狼男 (1975年)
- 新・実録おんな鑑別所 恋獄 (1976年)※松下幹男との共作
- 暴走パニック 大激突 (1976年)※田中陽造、深作欣二との共作
- 暴力教室 (1976年)※奥山貞行、岡本明久、福湯通夫との共作
- 沖縄やくざ戦争 (1976年)※高田宏治との共作
- 日本の仁義 (1977年)※松田寛夫、中島貞夫との共作
- カラテ大戦争 (1978年)※南部英夫との共作
- 高校大パニック (1978年)
- 総長の首 (1979年)※中島貞夫との共作
- 白昼の死角(1979年)
- その後の仁義なき戦い (1979年)※松田寛夫との共作
- 濡れた週末 (1979年)
- 団鬼六 少女縛り絵図 (1980年)
- 忍者武芸帖 百地三太夫 (1980年)※石川孝人、大津一郎との共作
- 狂った果実 (1981年)
- 未完の対局 (1982年)※大野靖子、安倍徹郎、李洪洲、葛康同との共作
- 野獣刑事 (1982年)
- 東方見聞録 (1982年)※高橋洋、井筒和幸との共作
- 海燕ジョーの奇跡 (1984年)※内田栄一、藤田敏八との共作
- 逆噴射家族 (1984年)※小林よしのり、石井聰互との共作
- 火宅の人 (1986年)※深作欣二との共作
- メイク・アップ (1987年)
- ウェルター (1987年)※橋本以蔵、桑田健司、村上修との共作
- 華の乱 (1988年)※深作欣二、筒井ともみとの共作
- ふうせん (1990年)※井上眞介、梶間俊一との共作
- タイガースメモリアルクラブバンド ぼくと、ぼくらの夏 (1990年)※前田順之介との共作
- おろしや国酔夢譚 (1992年)※野上龍雄、佐藤純彌との共作
- 渇きの街 (1997年)※南木顕生との共作
- ロマンティックマニア (1997年)※及川中との共作
- 歌舞伎町案内人 (2004年)※南木顕生との共作
※参考資料:神波史男全映画 自作を語る
Vシネマ
- 女囚さそり 殺人予告 (1991年)
- ビック・ボス (1992年)※三村渉との共作
- 追いつめる (1992年)※工藤栄一、奥山純平との共作
- 蕾のルチア (1992年)
- リックスティック 堕ちていく女 (1996年)※原田聡明、那須真知子との共作
- タブー 赫いためいき (1997年)※南木顕生との共作
テレビドラマ・アニメ
- 狼少年ケン 第6話 くたばれ! まだら族 (1963年)
- 宇宙パトロールホッパ 第3話 プー星人よ幸せに (1965年)
- 東京警備指令 ザ・ガードマン 担当話不明 (1969年)
- プレイガール 第15話 怪談・濡れた女に手を出すな (1963年)
- 火曜日の女シリーズ
- 美しき獲物 全話 (1970年)※佐藤純彌との共作
- 逃亡者 第3、7話 (1970年)
- 明日に喪服を 第3、4話 (1973年)
- 大江戸捜査網 第41話 帰ってきた花嫁 (1971年)
- ワイルド7
- 第3話 恐怖のブラック・スパイダー(1972年)※佐治乾との共作
- 第13話 両国死す‼ (1973年)
- 第18話 赤い星を狙え (1973年)※松下樹夫との共作
- 第20話 殺してやる (1973年)※松下樹夫との共作
- おこれ!男だ 第9話 海よ、激しくさわやかに (1973年)
- 白い牙 第3、8、24、25、26話 (1974年)
- ザ・ボディーガード 第5話 喪服の女に手を出すな (1974年)※増田博久との共作
- 影同心 第18話 濡れた女の殺し屋 (1975年)※鈴木兵吾との共作
- 二人の事件簿 第19話 暁の非常線 (1975年)※奥山貞行との共作
- 影同心II 第2話 つぼみで落ちた白い菊 (1975年)※松田寛夫との共作
- ベルサイユのトラック姐ちゃん 第19話 (1976年)※奥山貞行との共作
- 大都会 PARTII 第8話 眼には眼を (1977年)※松下幹夫との共作
- 松本清張のガラスの城 (1976年)
- 明日の刑事 第14話 娘を思う父の叫び! (1977年)
- 死者との結婚 (1978年)
- 必殺からくり人・富嶽百景殺し旅 第2話 隠田の水草 (1978年)
- キャプテン・フューチャー 第13、14、15、16話 (1979年)
- 新・七人の刑事 第67話 あばよ暴走族 (1979年)
- 土曜ワイド劇場
- 東京クーデター・Xデー日曜日 (1980年2月23日)※奥山貞行と共作
- 森村誠一の魔少年 (1980年)
- 特命刑事 第6話 黒い狼 (1980年)
- 姿三四郎 (1981年)※大原清秀との共作
- 警視庁殺人課 第14話 連続美女殺人事件・女を喰う虫 (1981年)※奥山貞行、石森史郎との共作
- 立花登 青春手控え 第3、13、21話 (1982年)
- 港町殺人ブルース (1982年)
- 壬生の恋歌 第7、8、12、13、18、20、21話 (1983年)
- 罠 (1986年)
- 青い髪の人魚 (1989年)
- 許せ妻たち (1990年)
受賞
最優秀脚本賞
- 第10回日本アカデミー賞『火宅の人』
優秀脚本賞
- 第12回日本アカデミー賞『華の乱』
外部リンク
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 | 最終更新:2024/05/22 01:51 UTC (変更履歴)
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