【第1回ANIAFF】「ひゃくえむ。」が観客賞&岩井澤健治監督に個人賞 グランプリ金鯱賞はカナダの先住民文化がテーマ「エンドレス・クッキー」
2025年12月17日 21:00

愛知県名古屋市で開催の「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」(ANIAFF)の授賞式が12月17日開催された。国際コンペティション部門では、カナダの「エンドレス・クッキー」がグランプリに当たる金鯱賞に輝いた。日本作品は3作品ノミネートされており、岩井澤健治監督の「ひゃくえむ。」が観客賞の赤鯱賞を獲得した。
地域の産業と文化のパワーを融合したグローバル、かつ世界有数の規模となる国際映画祭として、また世界中のクリエイターが集うクリエイションの場を目指し、ジャンルや表現方法を超えた最先端の優れたアニメーション作品やアニメーション界のゲストが国内外から集結した。国際コンペティション部門には世界29カ国から45作品のエントリーがあり、「ひゃくえむ。」「ホウセンカ」「無名の人生」など日本作品をはじめとした11作品が選出された。

実の兄弟であるセス&ピート・スクライバー監督による「エンドレス・クッキー」は、カナダの先住民族をルーツにもつ兄と、白人として育った弟を軸に描く家族の物語。両監督の来日はかなわなかったが、受賞を喜び、「賞金を使っていつか名古屋を訪問したい」とビデオメッセージで語った。
審査員の一人で、アニー賞を主催するASIFA-Hollywoodのエグゼクティブ・ディレクターのオーブリー・ミンツ氏は「個人的な物語と創作のプロセス、先住民文化への視点を巧みに織り交ぜることで、観る者を強く引き込みます。家族を中心に据えながら、映画がどのように生み出されていくのかという制作過程そのものも物語として提示しています。先住民文化がいかに断片化されてきたのかという重いテーマに向き合いながらも、不条理なユーモアや独創的なデザインによって、観客が受け取りやすいバランスを保っています。感情に訴えすぎることなく、社会問題を浮かび上がらせる独自のアプローチが際立っています。観客はまるで家族の一員になったかのように物語を体験し、家族の歴史が心に響くテーマとして立ち上がってきます」と評した。

審査員賞に当たる銀鯱賞は、中国のウェンユー・リー監督による「燃比娃(ランビーワ) -炎の物語-」。古代チャン族の神話に基づく物語をアニメーションで表現したリー監督はビデオメッセージを寄せ、審査員で、バンドデシネ作家のペネロープ・バジュー氏が、「映像と技術の完成度は圧倒的で、筆致や髪の質感、刺繍や石、影絵といった多様な素材表現から、観客は触覚的な質感を受け取ることができます。人や動物の動き、雪の表現に至るまで、アニメーション全体のクオリティは非常に高く、多彩な技法が見事に結実しています」とコメント、卓越した芸術性と深いテーマ性を備えた作品であると称えた。

観客からの投票により選出された赤鯱賞「ひゃくえむ。」の岩井澤監督は「こうした観客賞をいただけて、大変光栄に思います。この作品は、自分のスタジオを立ち上げて、チームで制作した作品です。スタジオのチーム全員で作り上げた結果が、このような賞につながったのだと思います。本日はありがとうございました」と感謝。ユニークなデザインのトロフィーを受け取り「赤鯱の赤も『ひゃくえむ。』のビジュアルとぴったり」と喜んだ。
最後に審査員を代表し、ポリゴン・ピクチュアズ代表の塩田周三氏が「記念すべき第1回は、確かな審美眼のもと、幅広く豊かな芸術表現と物語を披露する場となりました。芸術性を重視しながらも、多くの観客に開かれた親しみやすさを備えたラインナップでした。今年の作品には、家族の絆、文化的アイデンティティといった普遍的なテーマが多く見られました。先住民の問題など、これまであまり知られてこなかった社会課題にも光を当て、国際色豊かなプログラムとなりました。アニメーション表現の多様性と可能性を最大限に活かし、新鮮なビジュアルと伝統的技法の力強さを同時に示した作品群でした。この映画祭の第1回に関われたことを、大きな名誉に思っています」と総評した。

また、本フェスティバルではアニメーション文化の発展を願い、個人賞・スタジオ賞を創設。スタジオ賞【ハナノキ賞】(愛知県の県木に由来)を受賞した富山県南栃市の制作会社P.A.WORKSの堀川憲司社長は、ビデオメッセージで「設立から25年、地方で始めた制作会社として、長く人を育て、アニメーション業界を少しでも良くしようと努力してきました。また、オリジナル作品を数多く制作してきた点も評価いただけたのではないかと思います。今後もスタッフと語り合いながら、熱い作品を世界に向けて発信し続けていきたいと思います」とコメントを寄せた。

第1回の個人賞のひとつ【カキツバタ賞】(愛知県の県花に由来)は、岩井澤健治監督に贈られ、「私は15年ほど個人制作でアニメーションを作ってきました。数年前にスタジオを立ち上げ、現在はチームで制作しています。少し特殊な経歴ではありますが、こうして評価していただけたことを大変うれしく思います。この映画祭が今後も続き、受賞のバトンがつながっていけばいいなと思っています」と喜んだ。

同じく個人賞の【ユリ賞】(名古屋市の市花に由来) は、「ダンダダン」「ルックバック」「ジョジョの奇妙な冒険シリーズ」「BLUE GIANT」など数多くの作品の編集を担当してきた廣瀬清志氏。「最初に連絡をいただいた時は信じられませんでした。本日こうして賞を頂戴でき、大変光栄です。この賞は私個人だけでなく、日々課題に取り組み挑戦し続けてきたスタッフ全員の時間を評価していただいたものだと思っています。作品に関わってくださった監督、制作会社、スタッフの皆さまに感謝します」と感謝の言葉を述べた。

真木太郎ゼネラルプロデューサーは、「第1回ということで不安もありましたが、多くの関係者、スタッフ、ゲストの皆さまに支えられ、ここまで来ることができました。アニメーションが持つ力と、会期中に感じた熱意を、強く実感しています。今後も第2回、第3回と続けていけるよう、応援をお願いいたします」と振り返り、井上伸一郎フェスティバルディレクターは、受賞者へのお祝いと審査員への感謝を述べ、「特にコンペティション部門では、アニメーションの多様性と現代的なメッセージを強く感じました。どの作品がグランプリでもおかしくないと感じながら拝見していました。来年もこの名古屋の地でANIAFFを開催したいと考えております。皆さま、引き続きご支援をお願いいたします」と来年度の開催の意向と、フェスティバルの閉会を宣言した。

なお、クロージングセレモニーでは、大村秀章愛知県知事、広沢一郎名古屋市市長が出席し、受賞者と初開催を祝い、次回以降のフェスティバルのさらなる発展を期待していた。

会場には映像文化への期待と創造への意欲があふれ、映画祭を支えるスタッフや関係者の思いが重なり合いました。さらに、海外の映画関係者やクリエイターとの出会いも生まれ、会場は国際的な交流の場となりました。アニメーションという枠を超えた表現が持つ、人と人、文化と文化をつなぐ力を、改めて感じております。愛知県では、伝統文化を継承するとともに、新しい表現や創造活動の発展にも取り組んでおります。この映画祭が皆さまの新たな挑戦を後押しし、国際的な飛躍へとつながることを心から願っております。
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