「エディントンへようこそ」あらすじ・概要・評論まとめ ~コロナ禍で味わった閉塞感と不安感が、この映画には充満している~【おすすめの注目映画】
2025年12月11日 08:30

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本記事では、「エディントンへようこそ」(2025年12月12日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.「ミッドサマー」のアリ・アスター監督が「ボーはおそれている」に続いてホアキン・フェニックスを主演に迎え、コロナ禍でロックダウンされた小さな町の選挙戦が全米を巻き込む大事件へと発展していく様子を描いたスリラー映画。
2020年、アメリカ・ニューメキシコ州の小さな町エディントン。コロナ禍のロックダウンにより息苦しい隔離生活を強いられ、住民たちの不満と不安は爆発寸前に陥っていた。そんな中、町の保安官ジョーは、IT企業誘致で町を救おうとする野心家の市長テッドとマスクの着用をめぐる小競り合いから対立し、突如として市長選に立候補する。ジョーとテッドの諍いの火は周囲へと燃え広がり、SNSはフェイクニュースと憎悪で大炎上する事態となる。一方、ジョーの妻ルイーズはカルト集団の教祖ヴァーノンの扇動動画に心を奪われ、陰謀論にのめりこむ。疑いと論争と憤怒が渦巻き、暴力が暴力を呼び、批判と陰謀が真実を覆い尽くすなか、エディントンの町は破滅の淵へと突き進んでいく。
保安官ジョーをホアキン・フェニックス、市長テッドをペドロ・パスカル、ジョーの妻ルイーズをエマ・ストーン、カルト集団の教祖ヴァーノンをオースティン・バトラーがそれぞれ演じた。2025年・第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。
「ヘレディタリー 継承」以来のアリ・アスター監督ファンは、とまどうかもしれない。というのも、長編第4作の「エディントンへようこそ」は、アレックス・ガーランド監督の「シビル・ウォー アメリカ最後の日」と同じくらい政治的な色彩が濃い映画だからだ。
舞台となるニューメキシコの架空の町エディントンは、分断国家アメリカの縮図だ。そこでは、コロナ禍のマスク着用をめぐり、データセンターの建設をめぐり、ブラック・ライブズ・マター運動をめぐり、意見をたがえる人々が分断されていく。その意見対立が議論の方向に向かわず分断に向かって突っ走るのは、両派の意見の根拠がネットのききかじり程度の曖昧なものにすぎず、議論が成り立たないからだ。反マスクを掲げて市長選に立候補する保安官(ホアキン・フェニックス)は、マスク着用の規則に従う市民に向かって「あなたは操られています」と呼びかける。ブラック・ライブズ・マター運動の闘士は「警察とKKKはグルだ」をスローガンに掲げ、それらしき動画をネットに拡散する。さらに、保安官の妻が信奉するカルト集団のリーダー(オースティン・バトラー)は、児童人身売買の陰謀論を垂れ流す。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.この映画が特徴的なのは、これらの登場人物が等しく嘲笑の対象として扱われていることだ。保守もリベラルも、陰謀論者も活動家も、真偽不明の情報や思想を拡散させるエゴイストとして描かれていて、誰ひとり共感を誘わない。現場取材を重んじるオールドメディアのジャーナリストに軸足を置き、彼らの視点でアメリカの分断を描いた「シビル・ウォー」とは、この点が大きく異なっている。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.もうひとつの特徴は、撮影監督にダリウス・コンジを迎えて西部劇スタイルで撮影された映像が、オールロケであるにもかかわらず閉塞感に満ちていることだ。コロナ禍で我々が味わった閉塞感と不安感が、この映画には充満している。ステイホームを強いられ、孤立し、自分の考えを正当化できる情報を探しまわってネットの大海にどっぷりと浸かった当時の空気が――。いま振り返れば、それが2020年という年だった。そして、アメリカでは、不安と恐怖をあおる情報の海の中から二期目のトランプ大統領が誕生していった。「エディントンへようこそ」は、そんな時代を物語る映画として歴史に名を遺すかもしれない。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.執筆者紹介
矢崎由紀子 (やざき・ゆきこ)
「自分が気に入った映画をひとりでも多くの人に見てもらうこと」を日々の目標に、ウン十年間地味に原稿を書き続けている映画評論家。趣味はネイサン・レインの舞台の追っかけ。ミュージカル「プロデューサーズ」の初演を十回観たバカは私です。
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