「ChaO」「無名の人生」「アラーの神にもいわれはない」監督が語る、海外映画祭の醍醐味と意義【第38回東京国際映画祭】
2025年11月1日 21:00

第38回東京国際映画祭のアニメーション部門で11月1日、シンポジウム「長編アニメーションと映画祭」が東京ミッドタウン日比谷 BASE Qで開催され、青木康浩監督(「ChaO」)、鈴木竜也監督(「無名の人生」)、ザヴェン・ナジャール監督(「アラーの神にもいわれはない」)が登壇。藤津亮太氏(プログラミング・アドバイザー)による司会のもと約1時間30分のトークを繰り広げた。
登壇した3人には、監督作品が今年の「アヌシー国際アニメーション映画祭」に出品された共通点がある。参加した感想を聞かれたナジャール監督は、「アヌシーはアニメに特化した映画祭という意味で最大級。いつもは孤独なことが多いがアヌシーでは一人ぼっちという感覚はなく、素晴らしい体験だった」と振り返る。
青木監督は、海外の映画祭は遠い存在で「実際に行くまで現実味がなかった」と話し、言葉が通じないなか、アヌシー城内で行われた監督だけが入れる懇親会で鈴木監督と会えて話せたことが心強かったと笑う。一方、付き添いなしで単独現地入りしたという鈴木監督は、「ChaO」が観客に受けているのを目の当たりにしたあと、自身の映画では後半の難解な展開に差しかかったところで途中退出者が続出したことに「(映画祭ならではの)洗礼をうけた思いだった」と苦笑する。それでも日本より反応が良く、笑っている観客も多かったことから、「自分の作品が海外で上映されるときは、絶対に見たほうがいいと思う」と力説した。
アヌシー映画祭で「ChaO」が1000人規模のスクリーンで上映されたことに青木監督は感謝しながら、「映画は見てもらって、お客さんの思いや感情によって最終的につくりあげられるもの。それを受け取って次の作品をつくることができます」としみじみと語った。「ChaO」はアヌシー映画祭の準グランプリにあたる長編コンペティション部門の審査員賞を受賞。その効果もあって10以上の海外映画祭でノミネートや上映が続いており、「何度も驚いている半年間」だったそうだ。
アヌシー以外の海外映画祭の話題もあがった。ナジャール監督は、出資社やコ・プロデューサーを探すためにべネチア国際映画祭の「ファイナルカット・イン・ベニス」などに参加し、自作以外は作品が完成しているなか、自分だけが絵コンテとアニマティクスの状態でプレゼンテーションをした経験を披露し、「予算を獲得するために重要で、これらに参加しなければ作品はつくれませんでした」と話した。
トークは、映画祭にとってのコンペティションの意義、アニメーションと実写の違いなど多方面に展開。最後に観客からの質疑応答の時間も設けられ、作品を制作するうえで個人的に大切にしていることを尋ねられた3氏は、「自分が楽しめること」(鈴木)、「スクリーンで観客にどう映るかを、スクリーンの外の世界と合わせて意識すること」(青木)、「リサーチと、スタッフ・キャストとのコラボレーション」(ナジャール)と答えた。
第38回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。
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