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【第50回トロント国際映画祭】広瀬すず、松下洸平、石川慶監督が「遠い山なみの光」北米プレミア参加 観客からの惜しみない拍手と熱心な質問浴びる

2025年9月14日 09:00

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広瀬すず、松下洸平、石川慶監督がトロントへ
広瀬すず、松下洸平、石川慶監督がトロントへ
©2025 A Pale View of Hills Film Partners

カナダ・トロントで開催中の第50回トロント国際映画祭で、9月13日(現地時間)、石川慶監督「遠い山なみの光」がScotiabank Torontoで上映された。上映前後には舞台挨拶とQ&Aが設けられ、広瀬すず(緒方悦子役)、松下洸平(緒方二郎役)、そして石川慶監督が登壇した。

まず上映前、石川監督が登場し観客に向けて簡単な挨拶を行った後、監督の呼び込みによってサプライズゲストとして広瀬と松下が登壇すると、場内の熱気は一気に高まった。両者はそれぞれ英語で挨拶を行い、来場した観客への感謝を伝えると、会場は温かい拍手に包まれた。

画像5©2025 A Pale View of Hills Film Partners

上映終了後、観客の惜しみない拍手が会場を満たし、広瀬、松下、石川が再び登壇して、Q&Aが行われた。まず石川慶監督には、本作の原作であるカズオ・イシグロ遠い山なみの光』(1982)が、なぜ40年を経た今になって映画化されるに至ったのかという質問が投げかけられ、これに対し監督は、イシグロの文学に敬意を抱いていた人間として、長らく映画化を望んでいたものの、イシグロが世界的に著名な作家であることもあり、自身にまだその準備が整っていなかったと述べた。そのうえで、第2次世界大戦から80年が経過し、戦争体験を直接語ることのできる人々が年々少なくなっている現状が、映画化を決断させた大きな理由であると語った。

また、広瀬と松下という二人の俳優との共同作業について、石川監督は、広瀬について是枝裕和監督の「海街diary」などで見せたニュアンス豊かな演技を評価し、本作でもそうした表現を求めていたと語った。一方で松下が演じた二郎は、原作ではそれほど深みのある人物ではなかったが、「時代背景を考えると、彼の年齢なら戦争に行き、帰ってきたときには長崎が壊滅的な被害を受けていたはず」と熟考したことで、キャラクターに厚みが加わったという。

画像2©2025 A Pale View of Hills Film Partners

続いて二人が監督の演出について問われると、広瀬は「台本はとても難しいものでしたが、現場では監督が穏やかで率直に言葉をかけてくださり、素直に演じることができた」と語った。松下は「演技や座る位置に至るまで非常に細かく明確な指示を受けた」としたうえで、二郎という人物を「戦争を経験し、それを忘れようとする青年」と捉え、大戦下における考え方に執着し続けている父・誠二(三浦友和)との対照性がテーマであったと述べた。

画像3©2025 A Pale View of Hills Film Partners

作品の豊饒さ、そして登壇した三者の発言に刺激されるかのように、会場からは数多くの質問やコメントが投げかけられた。まず、原作が一人称視点で語られることを踏まえ、映画においてナラティブの手法をどう選択したのかという問いに対し、石川は、原作の悦子が回想を語り始める形式には注意を払いつつも、40年前に出版された作品を現代の観客にどう届けるかを重視したと述べた。そのため映画では、物語をニキの視点から描く構成へと変更し、彼女が発見し、見届ける物語へと転換させたことで、母への許しをめぐる物語として結実したという。結末に関しても、その視点の変更により自ずと変化が生じたと説明した。さらに戦後の日米関係をめぐる問いでは、イシグロ『日の名残り』の主人公スティーブンスを引き合いに出し、日本が被害者であると同時に加害者でもあるという二重の感情を抱えざるを得なかったと語った。

キャラクター構築のための調査について問われると、広瀬は役を掴むのに苦労したことを明かしつつ、稽古や共演者とのリハーサルの中で得られる相互作用を大切にしたと述べた。松下は、過去に長崎を舞台とする劇に出演した経験があり、その際に現地訪問や被爆者の証言に触れたことが役作りの基盤となったと語り、二郎という人物を「特別ではなく、日常を生きる普通の人」として演じることを心がけたとまとめた。最後に、石川は「この映画は反核だけでなく、ジェンダーに関する取り組みや規制、多様性など私にとって非常に重要なテーマで、親や祖父母たちが本当に求めてきた新しい価値観についての話」とトークを締めくくり、会場は、登壇した三人に温かい拍手を送った。

画像4©2025 A Pale View of Hills Film Partners

また、Q&A終了後には会場を移して記者会見が行われた。三者にとって初めての参加となるトロント国際映画祭については、人々や会場の温かさが強調されるとともに、カンヌ国際映画祭との違いとして「祝祭的な高揚感」よりも映画への情熱が日常に溶け込み、「パブリック」な映画祭として根づいている点に深い感銘を受けたと語られた。さらに、本作が「原爆」や「戦争」を主題に扱う作品として、カンヌ、上海、トロント、ロンドンといった数多くの国際映画祭で上映されることに関連し、作品とそれをめぐる議論、そして舞台となった長崎という場が世界へと広がっていくことへの期待が口々に表明された。(小城大知

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