「グラン・ブルー 完全版」あらすじ・概要・評論まとめ ~まさに波乱の日々。映画「グラン・ブルー」にまつわる数奇な出来事~【おすすめの注目映画】
2025年8月28日 09:30

近日公開または上映中の最新作の中から映画.com編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介!
本記事では、「グラン・ブルー 完全版」(2025年8月29日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。

「レオン」「フィフス・エレメント」のリュック・ベッソン監督の出世作で、素潜りの深度を競うフリーダイビングに情熱をささげる男たちの姿を描いた「グレート・ブルー」に、49分の未公開シーンを追加した完全版。

リュック・ベッソン3本目の長編にして、一躍その名を世界に広めた代表作。フリーダイビング競技に挑む男と、それを見守る女を描いたドラマで、日本では1988年に「グレート・ブルー」として上映、92年には36分長い本作が「グラン・ブルー グレート・ブルー完全版」として公開された。
すでに企画段階からベッソンはトラブルに見舞われていた。知人に紹介された俳優のウォーレン・ベイティに本作の構想を話したところ、プロデュースを買って出た彼は無断で20世紀フォックスに権利を売却、製作費の前払いとして50万ドルを受け取っていた。結局ベッソンはゴーモン社から50万ドルを前借りしフォックスから権利を買い戻したが、ベイティからは手付金として支払われた2万五千ドル以外は戻ってこなかった(実際はもう少し複雑だが結果は同じ)。

本作のモデルであるジャック・マイヨール本人にも面会し契約を結び、雑誌を見て一目で気に入ったロザンナ・アークエットの起用も決まったが、肝心のマイヨール役の俳優が見つからない。ロケハンにも同行したクリストファー・ランバートには土壇場で断られ、メル・ギブソンやミッキー・ロークなども候補に上がったが、使用言語がフランス語であることから見送られた。ベッソンは自分で演じることも考えたが(なお監督は競技会選手の1人としてカメオ出演)、最終オーディションでライフガード経験があり、仏語も堪能なジャン=マルク・バールと運命的な出会いを果たした。
撮影直前にジャン・レノが重圧から一時離脱したり、モニター無しの水中で上下のアングルが定まらず撮り直しが頻発(ベッソン作品は全てシネマスコープサイズ)、想定外の赤潮で撮影が中断するなど、トラブルは日々発生し予算は超過していった。さらに監督の第一子に重い心臓疾患が見つかり、その手術日程(計3回)とも重なった(ベッソン降板の場合、代役はジャン=ジャック・ベネックスだった)。

完成しカンヌ映画祭でお披露目となったが、メディアの評価は散々だった。だが一般公開が始まると、監督のファンと、その口コミに触発された若い観客(後に彼らは「グラン・ブルー世代」と呼ばれる)が劇場に詰めかけ、記録的な大ヒットとなった。だが問題はまだ続いた。マイヨールからの不当な追加ギャラ要求は序章に過ぎず(もちろん監督は却下、これにより2人の関係は崩れ、映画のイメージは生涯マイヨールを苦しめた)、もう1人のモデル、エンゾ・マイオルカからは上映の差し止め請求が入る。イタリア人の描き方が陳腐で、そもそも契約もしていない、というのが理由だった。この件は名誉毀損裁判にまで発展し、原告側が勝訴する。マイオルカは競技引退後、極右政党から立候補し国会議員になっていた。イタリアでの公開はいくつかのシーンを変更することで、製作から14年後の02年にようやく実現した。
後世に多大な影響を及ぼした本作、陸に上がらず海を選んだジャックの生き方は、当時のベッソンの夢そのものだ。その輝きは40年近く経った今も変わることなくスクリーンの中で生き続け、我々を魅了している。
「ジャック・マイヨール、イルカと海へ還る」(講談社)
「潜る人: ジャック・マイヨールと大崎映晋」(文藝春秋)
「海の人々からの遺産」(翔泳社)
「恐るべき子ども リュック・ベッソン『グラン・ブルー』までの物語」(辰巳出版)
「フィルムメーカーズ 1 リュック・ベッソン」(キネマ旬報社)
「イルカと、海へ還る日」 (講談社)
執筆者紹介
本田敬 (ほんだ・けい)
映画.com外部スタッフ。映像宣伝会社エクラン代表。監督は成瀬巳喜男とドゥニ、ビルヌーブ、女優は高峰秀子とブリット・マーリングが好み。落語好きで古典も新作も好きな爆笑派。
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