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王谷晶氏がA24「愛はステロイド」の現代性を評価 「ババヤガの夜」映像化は「好きにやっていただきたい」

2025年8月22日 16:00

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作家の王谷晶氏
作家の王谷晶氏

スタジオA24のクィア・ロマンス・スリラー「愛はステロイド」のトークイベント付き試写会が8月21日、渋谷・ユーロライブで開催された。「ババヤガの夜」(河出書房新社)で、英国推理作家協会賞主催、世界最高峰のミステリー文学賞・ダガー賞を日本人作家として初めて受賞した作家の王谷晶氏がゲストとして登壇し、映画の見どころや自著について語った。

映画は、独創的なストーリーと映像表現、個性的な俳優陣が高く評価され、米映画批評サイトRotten Tomatoesで94%フレッシュ(8月1日時点)を獲得。ゴッサム・インディペンデント映画賞をはじめ世界各国の映画賞に44ノミネートを果たしている。ノワール、ラブストーリー、スリラー、ユーモア溢れるジャンルレスな味わいが特徴で、鬼才ジョン・ウォーターズが“2024年最高の映画”に挙げている。

画像2(C)2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED

1989年、トレーニングジムで働くルーは、コンテスト出場のためラスベガスに向かう野心家のボディビルダー、ジャッキーに夢中になる。しかし、凶悪な犯罪を繰り返す父や、夫からDVを受け続ける姉を家族に持つルーを庇おうとするジャッキーは、思いもよらない犯罪網に引きずりこまれてしまう……という物語。

「『テルマ&ルイーズ』から四半世紀以上経って、やっとこういう新たな作品が出てきてくれた、その驚きと喜び」と感想を述べた王谷氏。これまで、性的マイノリティの主人公が作品の多くは、その親が登場するとセクシュアリティを隠すことや親とのすれ違いの原因として描かれることが多いが、本作は「主人公のルーがレズビアンであるということが明確になっており、彼女と対抗する父親とのいさかいの中で、そのセクシュアリティは関係がないところが現代的」とその新しさを指摘する。

ルーをクリステン・スチュワート、流浪のボディビルダー・ジャッキーをケイティ・オブライアンが演じ、ふたりはともにクィアであることを公表している。劇中で鍛え上げられた肉体を見せるオブライアンに「主演級の作品を見たのは今回が初めてでしたが、その存在感、フィジカルの説得力がすごい。実際にボディビルダーや格闘家もやられていたという納得の経歴がありますが、あの体に仕上げるのは相当な苦労があったでしょう。でもあの肉体でないとこの映画にならない」と圧倒された。

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子役から活躍するクリステン・スチュワートは「何をしても寄る辺ない感じがする、繊細なところと同時にすごくふてぶてしいところがあるのが演技に出る俳優さんだと思っていた」と、過去作からの印象も述べ、「閉塞した田舎で暮らしている青年感というか、少年少女に近いような感じの佇まいがすごくよく出ていた。うらぶれた感じを出すのが上手く、暗い目がとても魅力的」と評する。

本作は英国出身のローズ・グラス監督の長編2作目となる。王谷氏は、劇中でとりわけ印象的だったシーンを挙げ、「胆力があるというか、勇気とガッツの監督だと思う。普通はためらってしまうような、あのめちゃくちゃなシーンがあるからこそ、ほかのどの映画とも違う、観た人の一生記憶に残る作品になったと思う」「あのテンションのままマジカルに突き抜けるのかと思ったら、ラストでいきなりアメリカン・ニューシネマみたいな感じになっていく。『スケアクロウ』のような」「(観る者に)百パーセント納得させないことは、どんなジャンルのアーティストにも大事なこと。真剣にやるとつい納得させる方に行きがちなんです。でも納得させないその勇気や発想が重要で、この映画はその納得を最後に放り投げたところが本当に素晴らしい」と、創作者の視点からも、グラス監督の手腕を称える。

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また、女性同士の関係のリアルな描き方にも触れ「ボディビル大会のバックヤードで、女たちがギスギスしないで、キャッキャしてる姿を差し挟む、そこにもメッセージ性を感じた」とも。そのほか、登場人物たちの暴力性、ニューメキシコ州のアルバカーキという地方都市が舞台であること、80年代米国の文化や雰囲気を再現したような映像表現や音楽など幅広く作品の見どころに言及した。

王谷氏の「ババヤガの夜」は、ヤクザの世界の中の女性二人を描く物語であり、暴力、女性同士の関係など「愛はステロイド」との共通点も多い。世界のどこでもリアルな暴力が溢れる現代において、バイオレンス作品を描くことについては「フィクションの暴力を書いて楽しむ行為自体が難しく、自分でもやっていいのかと思うところはすごくある。でも、暴力的な作品や倫理的によろしくない作品によって、特に若い頃には、自分の気持ちの闇のようなものを飼い慣らしていけたことがあるので、人間にはそういうものも必要だと思う。でもこの時代に、どれだけやれるのか、やっていいのか、やった上で責任を取れるのか、それをものすごく考えている」と吐露。

一方でフィクションの力で社会を変えられないか?という問いには「読んだ方に影響を与えることはあると思いますが、自分ではそれを大きく見積りすぎないようにしている。印税を寄付したり、デモに行ったり……今はそういう方面でしか考えられませんが、社会的なことに関心のある人たちと喋ったり、何とかしていきたいし、話すだけではなく、ちょっとでも行動していこう、そういう気持ちを忘れずに仕事をしていくのが今自分がやれること」と答えた。

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「ババヤガの夜」は、英国・ダガー賞の快挙のほか、10月に発表される、LGBTQをテーマとした文学の普及を目的に創設された米国のラムダ文学賞の最終候補作品に選出されている。王谷氏が作り上げた世界観に魅了された、国内外の数多くの読者から映像化を期待する声も多く上がっており、司会から「もし、ローズ・グラス監督に『ババヤガの夜』を映画化したいと言われたら?」と問われると、「それはめちゃくちゃうれしいです。映像化のお話が来たら、『全部お任せします』って言うと決めているので、もう、好きにやっていただきたい」。主人公の新道依子役は「書いている時は具体的な誰かはイメージしていなかったのですが、ケイティ・オブライアンのように、フィジカル的にあれくらい説得力のある役者さんにやってほしい」とも話した。

愛はステロイド」は、8月29日から全国公開。

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