(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved. そんな宇宙を舞台にした冒険と成長を描く本作。メガホンを取るのはドミー・シー(「私ときどきレッサーパンダ」)とマデリーン・シャラフィアンだ。2人の女性監督とプロデューサーのメアリー・アリス・ドラムの3人に、ピクサー本社で本作の魅力をたっぷりと語ってもらった。(取材・文:小西未来)
——「宇宙人はいるのか?」という質問は何世紀にもわたって人類を魅了してきました。ピクサーと言えば徹底したリサーチで知られていますが、「
星つなぎのエリオ」の製作にあたり、この題材についても調べましたか?
(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.メアリー・アリス・ドラム:初期段階で、SETI研究所のジル・ターターやサイモン・スティールなど、地球外知的生命探査に携わっている研究者たちを取材しました。プラネタリウムや軍事基地も見学させてもらいました。
宇宙の広大さや、そこに存在する無数の系外惑星の数を理解し始めると、本当に圧倒されます。ジルがよく言うように、広大な宇宙を見上げると、自分がとても小さく無意味に感じることがある。でも同時に、この巨大で素晴らしい存在の一部であることや、私たちがみんな地球人であることにも気づかされます。
実際、そこにある惑星の数を考えると、地球外知的生命が存在する可能性はますます高く感じられます。実際どうなるかは分かりませんが、知的生命が存在する可能性について考える時間を過ごすのは、確実に興味深い体験でした。
(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.マデリーン・シャラフィアン:私たちは映画「
コンタクト」の大ファンで、あの作品もジル・ターターからインスピレーションを受けていました。宇宙を空っぽで恐ろしい虚無としてではなく、希望や繋がり、私たちのすべての疑問への答えの可能性を秘めた空間として捉えるという考え方です。
地球のどこにいても、夜空を見上げれば皆同じもの——少なくとも似たようなもの——つまり星と宇宙を見ているというのは、本当に美しいことだと思います。特に今の時代、私たちみんなが絆を結び、関係を築き、共に体験できる一つのものがあるというのは、本当に美しいことです。
——物語の核はエリオという少年とグロードンというエイリアンとの友情にあります。これはなぜですか?
(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.マデリーン:エリオが初めて彼に会った時、グロードンは恐ろしい存在でした。口には恐ろしい歯がびっしり生えていて、エリオが予想していたような声でもない。でもエリオが時間をかけて、地球で出会った子どもたちを突き放していたのとは違って、実際にグロードンとの繋がり方を学ぼうとした時、そこに美しい繋がりが生まれる。これが映画を通してエリオに学んでほしかった核心部分です。
最初、彼は自分と違う子どもたちに出会うと、すぐに「君は僕と違う。だから、僕を理解できるはずがない」と決めつけてしまう。叔母のオルガに対しても、「僕を理解できるはずがない」と思い込み、誰にもチャンスを与えることなく、手を伸ばそうともせずに壁を作ってしまう。でも、グロードンや、とても違っていながらすぐに彼を理解してくれる宇宙人たちのおかげで、彼は自分が求めている繋がりが身近にあることに気づき始めるんです。
(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.ドミー・シー:この映画で私がとても気に入っているのは、エイリアン種族のポジティブな描写と、自分と見た目の違う存在との繋がりを見つけるという希望に満ちた要素です。多くのSF映画では宇宙人をとてもネガティブに描きます。私たちと見た目が違って、私たちを傷つけたがり、拉致して実験したがる、といった具合に。
(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.でも私はこの映画が描くコミュニバースの素晴らしい世界——異なる背景や文化、形や大きさの種族が共に生活し、共に働けるような希望に満ちたユートピア——を愛しています。未来のとても美しいイメージだと思うし、私もそれを目指したいです。
実際、私もある意味ではエイリアンなんです。カナダ人ですが中国生まれなので。自分と必ずしも見た目の同じでない他者と繋がるという考えを広めるのは、とてもクールなメッセージだと思います。
——ドミーさんは、ピクサー初の女性監督です。しかも、あなた自身が仰ったように、中国生まれでカナダ育ちの「エイリアン」です。そんな特性を長所と捉えるようになったのは簡単でしたか?
ドミー・シー(左)とマデリーン・シャラフィアン(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.ドミー:私もマデリーンも、この映画を通して絆を深めたんですが、その理由は、どちらも人生のある時点でエリオのように感じたことがあるからなんです。私は学校では変わり者でした。高校ではアニメクラブの副会長で、親友が会長でした。メンバーは私たち2人だけ(笑)
——(笑)
ドミー:だから毎日、自分が夢中になっているものや好きなものを理解してくれる場所に行けたらと夢見ていました。この映画でエリオがコミュニバースに到着する瞬間がありますが、あれは、私たちにとってアニメーション学校に行ったり、ピクサーにやってきた時と同じような感覚なんです。ゲートをくぐって周りを見回して、「あ、みんな私みたいに変わってる!」と気づく(笑)
——(笑)
ドミー:ピクサーにやってきて、自分を受け入れてくれる場所を見つけたんです。それが、エリオというキャラクターを開発する時の私たちのガイドとなりました。彼はただ一つの場所に到達することに夢中で、固執している少年。でも多分、無意識のうちに周りのすべての潜在的な繋がりを無視し、突き放してしまっている。それはとても私たちらしく感じられました。
(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.マデリーン:共通の理解があったからこそ、この映画作りは最高でした。2人とも愛している共通のものがあります。同じ種類のユーモアが好きだったり。グロードンとエリオのやり取りの多くは、私たち同士のやり取りのようなんです。
ドミー:コミュニバースもある意味でピクサーみたいです。ここにも国際的なスタッフがいて、みんなそれぞれ別の人生を歩んできて、それぞれ違った意味で変わり者で、全員がオタクです。そんな私たちが集まって、同じものを一緒に作ったんですから。
——本作は、プロデューサーと監督お2人のすべてが女性ですよね。以前は男性ばかりでしたから、アニメーション業界も変わりましたね。
(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.マデリーン:私個人としては、ドミーがいなかったら今のポジションにはいなかったと思います。「
私ときどきレッサーパンダ」を彼女が作っているのを見て——私はその映画でストーリー・リードを務めていたんですが——彼女が完全に自分らしく、見たい作品をそのまま作っている姿を見て、リーダーシップの役割でも自分らしくいていいんだという自信をもらいました。本当にドミーがいなかったら、ここにはいませんでした。
ドミー:私もこの場にいられることが本当に光栄です。メアリー・アリスやマデリーンのような素晴らしい女性と一緒に働けて。ピクサーがこういう機会を与えてくれて、私たちにこんなに信頼を寄せてストーリーを語らせてくれることに、本当に感謝しています。
私としては、次世代の女性映画監督たちのサポートシステムになりたいという気持ちもありますが、同時に、ここの男性リーダーたちからもらった素晴らしい信頼とサポートに恩返しもしたいんです。特に、
ピート・ドクター監督ですね。今回の映画のエグゼクティブ・プロデューサーを務めてくれています。私が最初の「
インサイド・ヘッド」で彼のストーリーアーティストをしていた頃から、ずっとメンターであり、応援してくれています。映画業界、アニメーション業界がこういう段階に来て、より多くの女性の声が聞こえるようになっているのは、本当にクールだと思います。
(C)2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.——ピクサーは最近続編が続いていましたが、本作はオリジナル作品ですね。
ドミー:ええ。ピクサーでは常にオリジナル映画を作ることを誇りにしています。オリジナルピクサー映画を作るとは何か、私たちは常に自問し、映画を進化させ、違ったものにしようとしていますが、みんなのための映画——それが私たちがよく言うことです。私たち自身のため、劇場で見たいと思う映画を作っています。
続編とオリジナルのバランスがあります。でも私たちにとって、本当にエキサイティングなのは、人々が劇場でオリジナルを見ることにとても興奮しているということです。「
インサイド・ヘッド2」は続編でしたが、人々が劇場に戻ってきているのを見るのは刺激的でした。私も「あー、続編ばかり!」と思うことがありますが、ピクサーが「インクレディブル・ファミリー3」を発表したら「何? 見たい!」となります。観客も両方を求めていることは理解しています。
マデリーン:ええ。続編はその前にオリジナルがあったから存在するんです。ピクサーはそれを理解していて、常に個人的なストーリーをみんなにとって普遍的なものにすることを誇りにしています。「
星つなぎのエリオ」では、それを達成できたと感じています。