第78回カンヌ国際映画祭、プレス評価が高かったコンペティション作品振り返り
2025年5月25日 13:00

第78回カンヌ映画祭、コンペティション作品でプレスの評価が高かったのは、フランス、スペイン合作、アフリカを舞台にした「Sirât」、ブラジルのクレベール・メンドンサ・フィリオのジャンルをミックスしたサスペンス「The Secret Agent」、相変わらず外れのないダルデンヌ兄弟の「Jeunes Mères」、イランのジャファル・パナヒ監督の「Un Simple Accident」あたり。特にパナヒ監督は今回、イラン当局より許可が出てカンヌ入りしていただけに、大きな注目を浴びていた。
イラン映画はコンペティションにもう一本、サイード・ルスタイ監督の「Woman and Child」があり、こちらはイラン政府公認による制作費を援助された作品。ゆえに女性の登場人物はヒジャーブを被るなど規律を守っているため、昨今の女性の自由を訴えるムーブメントと逆行するとして、映画の内容とは別のところでバッシングを受けていた。
他にはヨアキム・トリアーの「Sentimental Value」とオリバー・ハーマナスの「The History of Sound」も、それぞれ演出に監督の個性が刻印され印象的だった。

前者はトリアーの前作「わたしは最悪」(2021)でカンヌの女優賞を受賞したレナーテ・レインスベと、ステラン・スカルスガルド、エル・ファニングの共演による物語。自殺した母をめぐって父親と確執を持つ女優の娘が、父親が書いた自伝的な物語で娘役を演じるのを拒否するものの、アメリカの有名な女優が興味を示したことで変化が起きる。イングマール・ベルイマンの影響を彷彿させる心理的テンションに満ちた、濃密な人間ドラマだ。
後者は「生きる Living」(2022)で黒澤明監督作をリメイクしたのも記憶に新しいハーマナスの新作。1917年に出会い互いに惹かれながらも、戦争や時代的な壁によって引き離されていく男ふたりのドラマを、フォークロア音楽の伝承、保存というユニークなテーマを通して語る。メランコリーと静けさに満ち、行間に多くが刻まれた味わい深い作品であった。(佐藤久理子)
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